作物の持つポテンシャルを引き出す人と出せない人がいる

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佐藤善博さんのさくらんぼ。感動しました。
栄養週期をちゃんとお勉強しようかしらと思うほど。
果樹栽培って楽しそうだなー。つくるなら果樹がいいなー。



巨峰を育種した大井上康さんが提唱した栄養週期という技術がある。

作物の生育ステージで必要なものを提供し、そのことにより
作物の生育をコントロールするという技術である。
必要なものは単肥で与えるため有機JASを取得した人には向かない。

有機農業&巨峰黎明期にこのお勉強をした人はたくさんいて、
某D社の生産者にも多く、学習会なども行われていた。
栄養週期、略して「栄週」。お聞きになったことありますか?

たまたま、というか今では運命だったのではないかと思えるが、
わたくしが担当していた生産者に栄週の先生と呼ばれる人がいて、
栄週を実践している人もかなりいた。

これを書くので思い返してみたら、某D社で栄週をやってる人は
ほぼわたくしが担当していた。出張のたびに話を聞いていたから
とりあえず「栄週とはこんなもの」と説明はできるようになった。

しかし。

聞きかじったことはいくつもあるが、他人には全く説明できない。
つまり全く理解していないということである。

むかーし聞いた栄週の先生だった担当産地の生産者が言ってた
「菜っ葉の7枚目の葉が出たら栄養成長から生殖成長に変わる交代期」を
他の栄週の人に言ったら「んー。ちょっと違うなー」と言われた。

聞きかじりの知識を披露してはいけないとわたくしはしみじみ思った。

このように、栄養週期は作物を栽培していないとちんぷんかんぷんで、
家庭菜園の本も出ていてわかりやすいんだがわたくしにはいまいちわからず、
大井上先生の本は読んだらすぐに眠くなってしまって読めない。

わたくしは「聞きかじり」のまま生産者と話をし、
「聞きかじり」のまま今まで生きてきたが、別にそれで良かった。
栄週をやってる人はおいしいものをつくる人が多い。
そのことがわかっていれば良かったからだ。

さてその栄養週期の世界で名前をちらほら聞く人がいた。
山形県天童市の果樹農家、佐藤善博さんという方である。

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佐藤善博さん。さくらんぼ、巨峰などを栽培されております。
栄養週期は現在実践している人が非常に少なくなっていて、
後継者もあんまりいなくて技術としては先細りになっております。
悲しい。


今年、有機農業参入協議会のお勉強会で山形県天童市に行った際、
佐藤善博さんと知り合う機会があった。これもたまたまであった。

佐藤さんは栄養週期の技術を大井上さんに直接教わった数少ない一人で、
ぶどう畑には巨峰の原木が植わっているらしい。すごいのだ!!!
わかんないかもしれないけどわたくし的にめっちゃすごいのだ!!!!!!

お勉強会の翌日、さくらんぼ畑を見せていただき、
素人のわたくしに剪定した木の形などわかるはずもなかったが、
花芽が非常に充実していることはわかった。一応果樹担当だったからね。

その時聞いた話は剪定の話より枝がねじれると葉芽がどうなるとかの
細かいことばかりだったが、佐藤さんは変わったことをおっしゃった。

さくらんぼは通常一か所にたくさんの花をつける。
ほっとくと全部実になるため5個から6個くらいに調整する。
これを摘果という。ならせすぎると味が落ちるため必須の作業である。

佐藤さんはこの5個から6個つけるところに2個しかつけないと言うのだ。
5~6個つくのに2個。な、なぜ? 少なすぎない? 
しかし、葉っぱが光合成をした養分は5個のところ2個に集中するから、
おいしいものができるはずである。この理屈は素人でもわかる。

だいたいひとつの果物に必要な葉っぱの数は40~70枚と言われる。
少なすぎると味はよくない。しかし果実が少なすぎても良くない。
果実に行くはずだった養分が余ると木の生育に回ってしまうからだ。
そうなると変なところから枝が出たり果実の味も悪くなってしまう。

5個つくとこに2個しかつけないんじゃ木は暴れないのかな? と
栄養週期をやってた元担当産地のすもも農家、古郡さんに聞いたら
「それをコントロールするのが栄週。暴れるわけないじゃん」と言われた。

おお、そうだった。栄週とはそういった技術なのだった。
すげーなー、栄週。とやっぱりしみじみ思った。

さて、このように栄週のことをくどくど書いたのには理由がある。
先日佐藤さんからさくらんぼが送られてきて、
そのさくらんぼがすごかったのだ。わたくしは驚愕した。

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山梨県で栄週をやっていた古郡正さんのすもも。現在は自然農法。
わたくしは最近古郡さんの自然農法のすももしか食べてないので、
一般的なすももの味がわからなくなっておりますが、これもたぶん
木の力を最大限に引き出した、そういうすももになっていると思います。



わたくしの考えるすげーおいしい砂糖錦の味は、
東根市の奥山博さんが栽培している佐藤錦が基本である。
ちなみに奥山さんも栄養週期の人だ。栄週=うまいものなのだ。

佐藤さんの佐藤錦は実を言うと佐藤錦っぽくなかった。何かが違った。

自分の頭のなかにある佐藤錦の味は、ぷちんと皮を噛むと
最初にロウっぽい香りがふわっとしてその後に少し酸味が来て
甘みがどっと押し寄せ後味はひたすら甘く、せきが出るほど甘いこともある。

しかし、佐藤錦は紅秀峰のように甘いだけではなく、ほんのりした酸味と
独特の香り(ロウとか言ってすんません)がありそこが魅力的なのだ。

「今から佐藤錦を食べるぞ!」と集中し準備したわたくしの脳は
佐藤さんの佐藤錦を一口食べて困惑した。あれ? これなに?
佐藤さんの佐藤錦は酸味も甘みも強くものすごーくおいしかったが、
色合いも軸の形も佐藤錦なのに佐藤錦っぽくないのだった。

ほんのりふんわりした佐藤錦をクッキリ際立たせたパンチのある味。
そんな感じだ。さて、これはどういうことかな? 

わかっているのは作り方が違うことだ。しかし作り方と一言でいうが、
果樹の場合、剪定、土づくり、木の仕立て、摘蕾・摘果のタイミング、
施肥管理と生育ステージ上にさまざまなやり方・技術がある。

生育期間が半年から一年で終了し毎年更新する畑作と違い
果樹は永年作物だから今年だけではなく長年の蓄積が果実の味を決める。
佐藤さんの佐藤錦の味は佐藤さんが今まで蓄積した結果によるものだ。
それがこのような独特の味をつくっているのだ。

佐藤錦っぽくないけどすげーパンチがあっておいしい佐藤錦。
木の持っている力と佐藤さんの技術が結晶したものである。

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なんかでかい花芽だったなー。次に行った人の畑の花芽が
とても貧弱で弱々しく、そういう花芽はいい花がつかないから、
やっぱりこういうのって技術だよねとしみじみしみじみ思いました。



わたくしはスーパーのくだものが仕組み的においしいものを販売しづらい
と知っているため、果樹担当になってから一度も買ったことがない。
生産者に送ってもらったおいしいものしか食べていないのだが、
それでも作り方でこんなに味が変わるのかと感動してしまった。

しかも「甘い」ということでのみ評価されがちな佐藤錦で、
目からウロコが落ちるような味のものができるとは。
佐藤錦にそういった潜在能力があるということだろう。

作物の持つポテンシャルを引き出せる人とそうでない人がいる.。
そしてそうでない人の方が圧倒的に多いのだ。

同じ品種だから一律同じ味なんてことは思い込みにすぎないと
某D社を辞めて5年経ってしみじみ思った佐藤さんのさくらんぼでした。


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ほんたべ

Author:ほんたべ
手島奈緒
おいしい食べものをつくる人を紹介したり応援したりしております。ブログをまとめた著書『いでんしくみかえさくもつのないせいかつ』(雷鳥社)『まだまだあった! 知らずに食べてる体を壊す食品』(アスコム)『儲かる「西出式」農法』(さくら舎)など。現在ハンター修行中。

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