巨峰の原木(!)を自根(!)で栽培している人-佐藤善博さん

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佐藤善博さん。お父さんが大井上さんに「これ植えてみたら」と
原木を手渡しされ、くれたのかと思ってたらあとで請求書が来た(笑)。
その木の子どもが今2本残っている。巨峰会にももう原木がないとかで、
数年前穂木をもらいに来たんだと。すげーなー。



巨峰ってぶどうがあるでしょう。

以前は高級品種だったけど、最近はシャインマスカットやピオーネが人気で
値段も下がり気味、つーことで「巨峰かあ。。」的なぶどうになりつつある。

小学生のとき初めて巨峰を食べ「こんなにおいしいぶどうがあるんか!!!」と
感動したわたくし自身も最近は「輝く新参者」シャインマスカットに夢中だ。

ごめんね、巨峰。

さて、わたくしはくだものの中ではぶどうが一番好きだが、
落葉果樹の担当をするまでぶどうのことをあまりよく知らなかった。

某D社のぶどう農家に「先生」と言われる人が3名ほどいらっしゃり、
たまたまわたくしはその先生たちの担当だったため「門前の小僧なんとやら」で
一般の消費者よりはちょびっとぶどうに詳しく不必要な知識も持っている。

例えば「巨峰」という品種はないとかね。知ってました? みなさん。
巨峰は農水省に品種登録を拒否されたぶどうで、品種名ではない。
現在の通称「巨峰」は登録された商標なのだった。

商標だから許可無く「巨峰」と表示して売ってはいけないし、
個人的に販売する際は日本巨峰会から箱を買うとか、巨峰のジャムを作って
「巨峰」ってつける際には許可を取らなくちゃいけなかったりするはずなんだが、
そのあたり徹底されていないように思えるがどうなのかな、ま、いいけど。

このすんばらしい品種「巨峰」を育種したのは大井上康さんという方で、
大井上康さんは栄養週期理論を打ち立てた方でもある。

巨峰と栄養週期について詳しくは以下のサイトをご確認ください。
http://www.kyoho-kai.net/index.html  日本巨峰会
「苦難の歴史」とか読むと「なんなんだあ農水省!!」って感じだ。

078.jpg
これが巨峰の原木です。地際を見ると台木がないのがわかります。
50年生くらいってことだから、寿命の短いぶどうにしてはわりと長生き。
でもはじっこの方はどうやっても枝が枯れこんで来てるから、
自根で新植しています。「年も取ったし栽培面積は縮小中」だそうです。



さて、どんな果樹でも「原木」と呼ばれる品種のおおもとの木がある。

例えばいまや海外でも栽培されているりんご「ふじ」の原木は盛岡にある。
現在栽培されているふじは言ってみればこのふじの子どもたちだが、
上から下まで同じふじではない。それは台木に接がれているからだ。

だいぎ【台木 stock】
接木のさいに,接木植物の地下部となる部分をいう。
台木に接着させる部分は接穂または穂木といい,台木と接穂は相互に影響を及ぼし合う。
栽培的に重要なのは,台木の種類によって地上部の大きさ,結実までの期間,
種々の不良環境に対する適応性が異なることである。
(世界大百科事典 第2版の解説 コトバンクより)


地下部と地上部が違う木なので原木の性質がそのまま果実に出るわけではない。
原木になる果実と台木に接いだものとは、よく似ているが違うものである。
台木によって微妙に姿が変わったりもするから不思議だ。

ふじの原木から出てきたひこばえをもらった長野県のりんご農家、故・原今朝生さんは
その木を地面にそのまま植え、色づきのよくないふじがなるだろうと言っていた。
ふじはもともとそういう色づきの悪いりんごだったからだ。

何が言いたいかというと、原木そのままの性質を持っている果樹というのは
やたらとそこいらにはないということである。だいたい台木に接がれてるからだ。

んで、巨峰の話に戻ります。

山形県に巨峰の原木を持っている人がいる。と聞いたのは今年の1月だった。
大井上さんから木をもらった(あとで請求書が来たらしい)というから驚きである。
さらにその人は、その原木を自根で栽培していると聞いてさらに驚いた。

果樹農家以外にはわかりにくい驚きどころは以下のふたつ。
1.巨峰会にもなかった巨峰の原木を持っている
2.台木に接がず自根で栽培している


つまり、大井上康さんがつくった巨峰の持っている性質をそのまま、
全く失うことなくこの人の巨峰は持っているということなのだった。
しかも現役でまだ実がなっているのだ!!!(コーフン!)

ひゃー、それ、どんな味? どんな形? 
巨峰が大好きだったわたくしとしては見てみたいじゃありませんか。
つーことで、行ってきましたよ。山形県に。

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露地栽培のタネあり巨峰。きれいにまっくろに色づいております。
これが畑の端っこもなかほども全部同じような玉張り・色合いなの。
枝によっておいしかったりそうでなかったりするもんだと思ってたけど、
どの枝もほぼ同じって言うからビックリしちゃったわ。



佐藤善博さんは山形県天童市でさくらんぼ、ぶどう、桃を栽培している。
現時点で栄養週期をきちんと実践できている数少ない農家の一人なのだが、
わたくしは佐藤さんの、誰の畑にも似ていない巨峰畑を見て心底驚いてしまった。

まず巨峰の葉っぱが小さくて分厚く、枝先の生育がビシっと止まっている。

「生育が止まる」というのは枝がムダに伸びていないということで、
これは栄養成長がきちんと止まっているということで、
果実に養分が集中している=おいしいってことでもある。

肥料が多すぎると果樹類は徒長枝というよぶんな枝を出す。
ある程度はいいが、徒長枝がびゅんびゅん出るような木の果実はおいしくない。
こういうぶどうをつくっている人の畑はこの時期行くと
めっちゃヤブ蚊に食われる。なぜかは不明だがとにかく蚊がいる。

理由の一つは棚のうえに葉っぱを茂らせていてぶどう畑が暗いことだ。
葉っぱが茂っているのは肥料が多いからで肥料が多ければ味は良くない。
棚がまっくらということはお日様がきちんと入らないからで、
下になっている葉っぱは光合成ができなくて、さらに味が悪い。

日差しが適度に入っている明るいぶどう畑でめっちゃ蚊がいる場合は
地面が湿っている(水はけが悪い)とか風通しが悪い畑ってことで、
こういう畑のぶどうは作り手の腕によって良かったり悪かったりする。

さて、そのようなぶどう畑をさんざん見てきたわたくしは
佐藤さんの巨峰畑がとにかく明るくて気持ちいいのに驚いた。
そして当然だが蚊がいない。全くいない。マジでいないのだ!!!

棚のうえに茂りまくっている枝などはいっさいなく
来年の結果枝がひょろっと2本伸びているだけである。
しかもその葉先は止まって全体的にこぢんまりしているのだった。

096_20160829100041d18.jpg
この2本が来年の結果枝なので、6節目で切り落とす。
って言われたのでこの写真を撮った気がするけどどうだったっけ?
葉っぱがなんか小さくてこぢんまりしております。葉数が多いから
光合成をよくするかっつったらそんなことはなくかえって邪魔らしい。



ぶどう農家が見たら「この葉っぱの大きさでいいのかな?」とか言いそうだが、
それは西出隆一さんのきゅうりの葉を見た人がよく言うセリフである。
葉の大きさと光合成能力は関係ない。関係するのは葉の厚みである。

剪定は今年の結果枝を全部切り来年の候補の枝を6芽残すだけで
つねに太い枝から出た枝に果実をつけると佐藤さんは言う。
「その方が味がいいと思うよ」

長梢剪定をしている人の場合、枝がどこから伸びてきて、
どこに果実がついてるんだかちっともわからない状態の人が多いが、
佐藤さんの巨峰は結果母枝から出た小さな枝に果実がついている。

また、通常は畑のはじっこのぶどうの生育がいいものだが、
すみからすみまでどのぶどうも生育度合いがほぼ同じなのだった。
どこを見てもまっくろな玉張りのいい巨峰が同じように実っている。

んー。わからん。なぜ6芽とかいう剪定で木が暴れないのか。
枝先がきちんと止まるのか。そしてタネありにできるのか。

その秘密は栄養週期の技術と、苗を植える際の枝の選び方にある。
苗木になる枝の、どこを残してどこを植えるかがちゃんと決まっている。
そこを間違えると暴れる木ができる。そうなるとこのような剪定はできない。

「暴れない性質を持った木」を最初からつくることができるんだなー(ため息)。
「カンタンなことだよ」と言われてわたくしはうーんと唸ってしまった。
畑で食べた巨峰は「久しぶりにおいしい巨峰を食べた!!!」って感じだった。

「品種がつくられたときそのままの性質を持っている巨峰」という
わかりづらい付加価値に目がくらんでいる可能性があるので、
家に持ち帰って糖度を測ったら19度だった。

093_2016082910004285c.jpg
棚上に枝があまり伸びていないのは夏季剪定してるからじゃなくて
そもそも伸びていないから。さすが栄養週期!!である。
施肥設計とか農薬とかこの木に圧倒されて聞くの忘れちゃった。



でも糖度だけじゃなくてさあ、なんつーかこう、食べ終わったらすぐ
「もう一個食べたいっ!!!」って思ったのよ。
そういうぶどうってめったにないの。
「一個でいいですすんません」ってのが多いの。

というように、原木・自根の巨峰は畑も果実もすばらしいものでした。

わたくしはこのようなおいしいものとおいしいものをつくるひとと会えて
いろんな話を聞けて、そのつどいろいろびっくりすることがあって、
ほんとにしあわせだなーとしみじみしみじみ思ってしまったです。

栄養週期がもっと広まるといいなー。
そしておいしいぶどう天国になれ!! なるのだ! 日本! 


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ほんたべ

Author:ほんたべ
手島奈緒
おいしい食べものをつくる人を紹介したり応援したりしております。ブログをまとめた著書『いでんしくみかえさくもつのないせいかつ』(雷鳥社)『まだまだあった! 知らずに食べてる体を壊す食品』(アスコム)『儲かる「西出式」農法』(さくら舎)など。現在ハンター修行中。

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