グラスフェッドビーフってなんなんだというギモンその1 乳牛

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ジャージーちゃんを放牧しているキープ協会取材の風景。
牛は好奇心が旺盛なので知らない人が来ると必ず見物します。
カメラマンに興味津々。わたくしもさんざん鼻面を押し付けられました。


「グラスフェッドビーフ」って言葉を昨今やたらとあちこちで耳にするが、
みなさまご存知でしょうか?
カンタンに言うと「草を食べて育った牛」という意味であります。

「グラスフェッド」に対して「グレインフェッド」というのがあり、
これは「穀物を食って育った牛」のことであります。

日本の和牛・国産牛・乳牛のほとんど及び米国の肉牛はグレインフェッドで、
オーストラリアやニュージーランドの肉牛がグラスフェッドである。しかし、
オーストラリアではすべてグラスフェッド、でもなく
穀物を食わせてるのもあったりいろいろということは最近知った。

くらいの感じでわたくし「グラスフェッド」を受け止めていたのだが、
昨今なにか大変とても優位性があるかのように言われ始めており、
それについて大きな疑問符がわたくしの頭に浮かんだ。

「グラスフェッドビーフってなんなんだ?」
つーことで考えてみました。

「グラスフェッド」にでかい疑問符がついたきっかけは
ソフト部の部活で食べた中洞牧場のソフトクリームである。
中洞牧場の直営店でチョー高額の「グラスフェッドバター」が売っており、
そのバターを使ったバターコーヒーも販売されていた。

バターコーヒーはシリコンバレーのナントカとかいう人が朝食代わりに飲むと
なんかこう生産性が上がるんだか痩せるんだがとしばらく前に話題になったもので、
グラスフェッドバターじゃないとダメ! みたいな記事もわたくしは読んでいた。

日本にグラスフェッドバターなんてないよなー。と思っていたので、
中洞牧場のグラスフェッドバター表示にはすげービックリした。
そしてその表示を見たソフト部部長が一言つぶやいた。

「グラスフェッドってなんのことなんですかねー」

部長は元畜産関係者、わたくしは畜産関係にミョーに詳しいライター、
畜産について知らなくてもいいことをあれこれ知っている。なのでこれは
単に「草を食ってる牛」という意味ではなく、実際にどれぐらい草を食えば
「グラスフェッド」といえるのか。という意味のつぶやきである。

「おやつどうなんですかねー」「食べてないのかもねー」と会話は続いた。
※おやつについては後述します。

さてここで、乳牛の飼料について考えてみます。
牛一頭買うのに必要な草地は約1ヘクタールと言われております。

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木次乳業の育成牛用の放牧地。ものすごい傾斜ですが牛は平気です。
しかし、牛舎につながれっぱなしだった牛は放牧されても傾斜地を登れないとかで
子牛のころから足腰を鍛えないとダメなんだって話を中洞さんの本で読みました。
ところで中洞牧場は今はジャージー牛みたいです。



平地はほとんど畑と田んぼになっている日本に牛を放牧する草地などない。
ということで、日本の牛は基本的には放牧はされておらず、
牛舎で穀物と粗飼料(草とか)を食べて肉になったり牛乳を出したりする。

穀物と粗飼料の割合は、乳牛の場合4:6、あるいは5:5であり、
肉牛になると7:3、あるいは8:2くらいになる。
乳・肉牛ともにほとんどの牛の主たる飼料は穀物、ということである。

しかしそもそも草が主食の牛に穀物を食わせるのはどうなのか。
ヒトが食べられない草を食べて資源にしてくれるのが牛ではないか。
平地がないなら山にあげて山を放牧地にしちゃえばいいじゃんか!!
ってことで提唱されたのが日本型の酪農「山地酪農」である。

前述の中洞牧場とか木次乳業とか山地酪農の実践者は全国に数軒あり
山で好き勝手に草をはんだりしてる牛は大変とても幸せそうである。

実は牛乳のCMでよく見かける広大な牧場に草を食んでるホルスタイン
というのは幻想で、だいたい牛舎か運動場を行ったり来たりしていて
なかには人生のほぼすべてをつながれたままで終える牛もいる。
山地酪農以外で放牧されている牛はそんなにいないと言っていい。

幻想のもとの「牧場に放されている牛」はいることはいるが、
乳を出すまで、肉になるまでの育成中の若い牛&繁殖用の牛のことが多い。
搾乳期間中は食べるものは全部牛乳になって欲しいし
肥育期間中は食べるものは全部肉になって欲しいから放牧などはしない。

そして牛乳の量を増やす&肉の味を乗せるのは草ではなく穀物である。
だから乳牛・肉牛の主たる飼料は穀物で、草は主たる飼料にはなり得ない。

ということで、山地酪農の牛は主たる飼料が草というまれな牛とも言える。
のだが、ここに「搾乳時のおやつ」という問題が立ちふさがる。

日中山で草を食べてのんびりしていた山地酪農の牛は
夕方になると搾乳のため山から下りてくる。
木次乳業では夜は牛舎に入れて朝また山に上げるが、
搾乳されたらすぐに山に戻るとかで、牛舎がないところもあるようだ。

牛は搾乳時におやつをもらう。このおやつが「穀物」なのである。

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放牧されている育成牛。オスの場合もあるけどメスの場合でも
おっぱいが小さいので育成牛だとすぐわかります。
放牧された牛を見たらおっぱいに注目してみましょう。



ふだん草を食ってる牛たちにとって高カロリーな穀物はとてもおいしいらしい。
もしかしたら牛たちはおっぱいが張るから山から下りてくるのではなく
おやつを食べに戻ってくるのかもと思うほどウキウキと搾乳に下りてくる。

有機JASを牛乳で取得しようとした乳業メーカーの社長に聞いた話では
「おやつの割合調べてみたらびっくりするぐらい多くてさ、
ほっといたらおいしいから牛がすげー食べちゃうのよ」だそうで、
部長の「グラスフェッドってどんな牛なんですかねー」というギモンは、
この「おやつ」の割合のことを言っていたのだった。

しかしまあよく考えてみるとおやつが飼料の40%になることはないだろう。
さらにもしかしたら中洞牧場の牛はおやつをもらっていないのかもしれない。
であればグラスフェッドと表示をしてもぜんぜんOKなのである。

そしてその他の山地酪農の牛乳も「グラスフェッド」でいいのかもしれないが、
現時点ではそのような打ち出しをしているメーカーはないようだ。

さて、穀物を主に食べている牛の一年間の平均乳量は10000リットルである。
放牧とか山地酪農とかにすると5000リットル以下(ホルスタインの場合)で
これがジャージー牛だと4000リットル、悪くすると3000リットル。
粗飼料食べてるからチョー少ないのよねプンプン!! って感じだ。

ヒトが利用できない食べもの(草)を資源(牛乳)に変えてくれるだけで
牛は貴重な存在だと思うが、乳価もそんなに上がらないなかではやはり
経済効率が優先される。そのため牛は乳量で評価されることになる。

一般の乳牛は5産くらいで乳量が落ちて廃牛にされることが多いが、
山地酪農や放牧主体の牧場では年寄り牛も現役で活躍していたりする。
わたくしが山地酪農の牛乳が好きなのはそういう理由もある。

経済動物なのだから搾取はある程度は仕方ないとは思っても、
一方的な搾取は気がふさぐではありませんか。

え? ふさがない? そーですか。

つーことで、牛乳のグラスフェッドについてはこんな感じです。
では、肉のグラスフェッドについてはどうかな? 
昨今いろいろと問題が多そうですが、次回に続きます。


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No title

とうもろこしのサイレージならグラス?
全く本文とは関係ないのですが、なかほらさんの研修の給料は問題にならないのでしょうか。外人さんなら大騒ぎ。新規農業者の研修も日本人なら低賃金でも誰も騒がないのはなぜ。
しょうもない疑問すみません。

Re: No title

コメントありがとうございます。

> とうもろこしのサイレージならグラス?

サイレージの原料も草ですからグラスフェッドでいいのではと思います。


> 全く本文とは関係ないのですが、なかほらさんの研修の給料は問題にならないのでしょうか。外人さんなら大騒ぎ。新規農業者の研修も日本人なら低賃金でも誰も騒がないのはなぜ。


申し訳ないのですが、わたしは中洞さんの研修生がどのような状況なのか、お給料がどれぐらいなのかとか存じ上げません。

ただ、一般的に新規就農者が研修という名の労働搾取をされていることがあるのは知っています。

最近は新規就農者でも相当ネットで調査してから研修に入っている人も多いし、そういう悲しい研修先に入ってしまう人がどれぐらいいるのは知りませんが、そんなところばかりではないと思います。

というか、わたしの知ってるところはそうではありませんが、そういう労働搾取話があまり表に出てこないのは研修者自身が声を上げてないからかもしれませんね。

山での放牧

本題からは少し逸れますが。ほんたべさんもご存知の通り、中山間地では獣害がひどくなってますけども、そういうところの里山を整備して放牧地にするという動きは無いもんなのでしょうか。完全な草原にせずとも、木陰にもなる木をある程度残してもいいと思うし。里ぎわが開けて牛もいれば、獣害も減るんじゃないかと。

ネックを想像するとすれば、日本の山地は所有者が細かく分かれているところが多いことや、田畑に比べれば安いとはいえ山地も購入するとなれば高額になることなどでしょうか。民家が近くに多いと臭いの問題もあるし、急峻なところは災害のリスクもあったりして難しそうです。1960-70年代に植林されたところがこれから徐々に伐採期になっていきますが、木材価格の長期低迷のため、伐採後の植林はせずに自然更新で広葉樹林に戻していくところが多いと聞きます。そうなれば、放牧地として同意をまとめるのもやりやすくはなるのかなという気もします。

Re: 山での放牧

H2さん、こんにちは。

> 中山間地では獣害がひどくなってますけども、そういうところの里山を整備して放牧地にするという動きは無いもんなのでしょうか。完全な草原にせずとも、木陰にもなる木をある程度残してもいいと思うし。


H2さんもご指摘のように所有者の問題ではないでしょうか。
あと、山地酪農でも木を伐採したり、牛が好きな牧草の種をまいたりする必要があったりしますので、単なる下草を食べてもらうというのが難しいのかもしれません。

以前群馬で「森林の牧場」というのがありまして、そこは下草はとくにタネもまかずにやってました。
しかし12頭ほどの牛を放牧したところ、あっという間に下草を食い尽くされたとのことでしたので、相当な面積が必要なのだと思います。
「ここから先は人の土地」ってところに牛が入るとおおごとなので、しっかり囲ってあったりもしました。

しかしそこは手入れができていない森林なので、日差しも入らないからほそーい木がたくさん生えてましたが、牛が下草を食べたことで新しく芽を吹く木もあったりして、細い木を伐採するなど人が少し手をかけてやれば森林が再生しそうな感じでした。
牛の力で森林が再生っていいなと思っていましたが、原発事故でどうなったかな? 


>
> ネックを想像するとすれば、日本の山地は所有者が細かく分かれているところが多いことや、田畑に比べれば安いとはいえ山地も購入するとなれば高額になることなどでしょうか。


ということですよねえ。
管理者がわからない土地とかもあるみたいで。

島根と岡山の県境の大きな山を全部放牧地にしてる人がいらっしゃいますが、木を伐採するだけでもものすごくお金がかかったみたいです。
そして牧草の種代も馬鹿にならないって感じです。


>1960-70年代に植林されたところがこれから徐々に伐採期になっていきますが、木材価格の長期低迷のため、伐採後の植林はせずに自然更新で広葉樹林に戻していくところが多いと聞きます。そうなれば、放牧地として同意をまとめるのもやりやすくはなるのかなという気もします。


ですねー。
やっぱり牧場にするまでの初期投資がすごいのでしょう。

あとはまあミルクプラントを作んなくちゃいけないとか、出荷先とか、乳価が下がってるのにどうするのかとか。
新規参入は難しい世界ってこともネックになるかと思います。
プロフィール

ほんたべ

Author:ほんたべ
手島奈緒
おいしい食べものをつくる人を紹介したり応援したりしております。ブログをまとめた著書『いでんしくみかえさくもつのないせいかつ』(雷鳥社)『まだまだあった! 知らずに食べてる体を壊す食品』(アスコム)『儲かる「西出式」農法』(さくら舎)など。現在ハンター修行中。

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