実は有機栽培より減農薬栽培に向いている土着天敵活用法

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アザミウマ類の強力な天敵「ヒメハナカメムシ」はシロツメクサで増えます。
夏に定着させるならオクラがGOOD。見つけるのむずかしいけど
有機の露地のナス畑によくいます。アザミウマだけでなく
いろんな害虫を食べてるらしいです。写真撮影・市川泰仙氏



株式会社マルタの冬期全国生産者会議に参加してきたです。

お目当ては一日目の懇親会と(えへ)、二日目の
宮崎大学農学部植物生産環境科学科・大野和朗さんの講演
「地域に生息する土着天敵を活用した害虫管理」である。

大野先生の講演は大地を守る会でも何度かお聞きしたが、
聞くたびに新たな発見があって、興味深い内容でとてもおもしろい。
今までわかってなかったことが次々に明らかになっているようだ。

しかし研究の現場でいろいろわかってきていても、天敵の活用は
施設栽培の農家を除くと実践されてはいないように思える。

とくに露地栽培での天敵の活用などはあまり聞いたことがないが、
実は露地でも有効な土着天敵を利用した害虫管理が可能だということが
今回の講演で具体的によくわかった。明日からすぐにできる対策である。

それが「天敵温存作物」を植えること、である。

農業とは自然にやさしいというようなイメージというか妄想があるが、
実はとくに自然にやさしくもなくけっこうな勢いで環境を破壊している。

たとえば、生態系の破壊(農薬による昆虫類・微生物類の殺戮)、
単一作物栽培(モノカルチャー)による植生及び生態系の破壊、
多肥(チッソ肥料)による地下水等の汚染など、枚挙にいとまがない。

そういう意味で放出する化学物質量が少ない有機農業に意味はある、と
わたくしは常日頃考えているがとりあえずそれは置いといて。

生態系の機能のひとつに天敵によって他の生物の発生が抑えられる
「自然制御」があるが、実は農業現場ではあまり機能していない。
天敵の活躍を制限してしまう要因があるからだ。

この要因が有機リンや合成ピレスロイド系農薬のような絶滅系農薬や、
単一作物栽培による「モノカルチャー」であると大野先生は言う。

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日本にはアブラバチがたくさん生息しているそうなのですが、
天敵農薬として売られてます。土着のアブラバチを利用すれば
お金かからんと思います。アブラバチはアブラムシの天敵です。
写真撮影・市川泰仙氏



単一作物の大規模栽培=害虫天国であることは農家なら誰でも知っているだろう。

その作物が好きな害虫が発生し、卵を産み孵化しまた産卵して、
数世代にわたって同じ害虫が同じ畑で繁殖する。
対策は農薬だがそのうち効かなくなりリサージェンスが起きたりする。
※リサージェンス 抵抗性がつき農薬が効かない害虫が大量発生する恐怖の状態

少量多品目栽培などのポリカルチャー(多植栽培)や
自然栽培の畑でよく見るミックスカルチャー(混植栽培)だと
さまざまな植物があることで特定の害虫が大発生しづらい環境ができ、
その多様性が天敵も呼び寄せることから、自然制御はある程度可能である。

とは言っても近隣の畑で絶滅系農薬を散布されれば天敵は死ぬ。

ちなみに慣行農家が「有機の畑から害虫が飛んでくるから迷惑」とよく言うが、
実は「有機の畑で増やした天敵を慣行の畑で全部殺されてて迷惑」なので、
慣行栽培の人にそう言われたら有機の人はちょっと怒っていいと思います。

んじゃ日本の畑全体をポリカルチャーにすればいいんじゃん? と思うが、
そのようなことをするのは効率・手間その他もろもろでむずかしい。
高原レタス産地の人に「レタスの間にセロリを一列ずつ植えて」とか言ったら
張り倒されるだろう。現在の日本の農業はそういう方向を目指してはいない。

とりあえず大野先生はポリカルチャーを目指すのではなく、
圃場周りに天敵温存作物を植えることを勧めている。

天敵温存作物とは、小さな花を長い間にわたってつけるハーブや、
花粉をたくさん出してくれる作物、分泌物を出すオクラなどである。

これまでのIPM(総合的病害虫管理)では、天敵vs天敵という考え方が主で、
研究発表でもアブラムシと天敵の数のグラフなどがよく表示され
「問題はアブラムシが減ってきたら天敵が死んでしまうことです」
なんて話をよく聞いた。当時は天敵は害虫しか食べないと考えられていたからだ。

現在では、天敵は害虫がいないときには花粉や蜜を食べていて
花粉や蜜があれば畑で生きていけることがわかっている。
花蜜は天敵のエネルギー源、花粉は繁殖のための栄養源であり、
花粉が足りないと卵を産まないなどのこともわかってきた。

IMG_6319_2017021010573471f.jpg
移動距離が長いと考えられてきたヒラタアブですが、最近
エサがあれば長いことその場にとどまることがわかってきたらしい。
幼虫を常時供給するためには花粉が多い花を植えてメスを呼ぶこと。
雌は複眼の間に白いラインが入ってるのでよく見るとわかります。



大野先生の研究でわかった「天敵の強化」を目的とした
天敵温存作物(大野先生オススメ)は以下のとおりです。(講演資料より)

ノースポール
スイートアリッサム
ハゼリソウ(緑肥として使えて種が安い)
ソバ(いろんな種類の天敵が観察されているオールマイティな花)
クレオメ(すげー花粉を出すらしい。作物と言うより庭木?)
三尺ソルゴー(畑に植えるときには周囲にぐるりと植えないと逆効果)
スイートバジル(シソ科植物はながーいこと花をつけるのでオススメ)
ホーリーバジル(同じ)
シナモンバジル(同じ)
コリアンダー(パクチーは春先に花が咲くのでオススメ。人参もオススメ)

つーことで、プランターのトマトにアブラムシがわいてたまらん! と言う人は、
パクチーを植えれば開花期にヒラタアブが来て卵を産んでくれるでしょう。

また、せっかくの畑に金にならないものを植えるなんて許せん!
という農家には、大野先生はオクラを勧めている。
オクラから出る樹液(真珠体)が食べものになるため、アザミウマ類の天敵の
ヒメハナカメムシやカブリダニが安定的にいついてくれるらしい。

大野先生は、実は有機の畑よりも「これから農薬を減らしたい」と
考えている農家にこそ天敵の活用が向いていると考えている。
減農薬だと効果も見えやすいと言う。対策は簡単である。

1.今使っている絶滅系農薬を減らし天敵を殺さない選択制農薬を使うこと。
2.畑の周りに上記のような花が咲く草や作物を植えること。
これだけで天敵が増え害虫が目に見えて減ってくるそうだ。

大野先生が実験を行っている宮崎のナス農家では、農薬散布数が激減し、
コスト&労働力の点で非常に効率化できて感謝されているそうである。

gazou 005
4月になると越冬していたテントウムシ類が活動を始めます。
カラスノエンドウにつくアブラムシは作物に被害を与えないので、
そこにテントウムシを誘引し、畑で卵を産んでもらいます。
孵化した幼虫は畑のアブラムシを食ってくれます。←理想の形。



わたくしは最近、有機の畑が増えるのも大切だが、
慣行栽培の人が農薬を減らすことも同じくらい大切だと思うようになった。

日本の畑は小規模な面積のものが多いから、畑は単一作物でも、
俯瞰してみれば一反ごとに違う作物が植わっていたりして、
結果的にポリカルチャーになっていると言えなくもない。

だから地域で減農薬をしていけば擬似ポリカルチャーがつくれる。
大野先生は今それを目指しているのだそうだ。そうすれば、
天敵が地域全体で増え、害虫管理の一助を担うことができるようになる。
そして地域全体の減農薬がますます進む可能性もある。

そのような時代が来ればいいとわたくしは思う。
だからJAの人は天敵農薬買ったハウス農家に絶滅系農薬売るとかの、
変なことするのはやめた方がいいと思います。

オーガニック・エコとか言う以前に減農薬栽培を増やしましょうよ、
ねえ、みなさん。


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ほんたべ

Author:ほんたべ
手島奈緒
おいしい食べものをつくる人を紹介したり応援したりしております。ブログをまとめた著書『いでんしくみかえさくもつのないせいかつ』(雷鳥社)『まだまだあった! 知らずに食べてる体を壊す食品』(アスコム)『儲かる「西出式」農法』(さくら舎)など。現在ハンター修行中。

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