アニマルウェルフェアについて考えてみた

とんかつ
豚肉の味は飼料と品種によって変わりますが、
飼育方法によってはそんなに変わらないと思うので、
豚がどんなふうに飼われてるかなんてことは一般的に
あんまり人は気にしないのかもしれませんね。



「アニマルウェルフェアってどう思います?」と畜産農家に質問してみよう。

なんとなく困った顔になる人、あからさまに嫌な顔をする人
怒り出す人などさまざまだが、だいたいにおいてこの話題は好まれない。

アニマルウェルフェアは以前「動物福祉」と訳されていたが
農水省では「福祉」に限定すると意味合いが変わってしまうことから、
アニマルウェルフェア=快適性に配慮した家畜の飼養管理と定義している。

農水省WEBサイトにアニマルウェルフェアについての資料があった。
「アニマルウェルフェアをめぐる国内外の動き」
http://www.maff.go.jp/j/chikusan/sinko/pdf/aw_meguzi201406.pdf

これによると、1976年 農業目的で飼育される動物の保護のための欧州協定で
経済動物にたいしても権利があること確認したとされている。

えええーそんなに前からなのう? 全然知らなかったなー。

わたくしがこの言葉を初めて聞いたのは1997年頃である。
有機JASが施行されるとかどうとかで、将来的には有機畜産もあるよね、
でもアニマルウェルフェアって概念をクリアできるかどうかだよね
ムリじゃないかなーなんて大地を守る会の畜産担当と話したのが最初だ。

アニマルウェルフェアも有機畜産も日本ではムリだよねと思ったため
わたくしはそれっきり忘れてしまっていたが、世界は着々と動いており、
EUではテキパキといろいろなことが決まっていたらしい。

1991年 子牛の保護のための最低基準を定める理事会指令
子牛の単飼ペン飼育の禁止

1999年 採卵鶏の保護のための最低基準を定める理事会指令
採卵鶏のバタリーケージ(※1)飼育の禁止

2001年 豚の保護のための最低基準を定める理事会指令
妊娠豚のストール(※2)飼育の禁止

2007年 肉用鶏の保護のための最低基準を定める理事会指令
飼養密度33kg/㎡以上での飼養禁止
(「アニマルウェルフェアをめぐる国内外の動き」より)

上記のさまざまな項目は日本では禁止されていない。
おそらく畜産農家のなかには現在進行形で実行中のところも多いだろう。
日本はアニマルウェルフェアでは後進国と言ってもいいのだった。

gazou 033
一般的な豚はLWDという三元交配のもので早く大きくなり多産です。
一度に10~12頭とか生むそうですが、なかには育たないのもいます。
しかし子豚ってほんとにかわいいすよねえ。連れて帰りたい。


さて、アニマルウェルフェアにおける動物の権利とは以下の様なものだ。

「5つの自由」の実現
1.飢餓と渇きからの自由
2.苦痛、傷害又は疾病からの自由
3.恐怖及び苦悩からの自由
4.物理的、熱の不快さからの自由
5.正常な行動ができる自由

日本でもある程度は実現できているだろうが、5についてはどうかな? 
狭い国土で最大限の効果を上げなくてはならない日本の経済動物の飼育法は
「できるだけ小さな面積で効率よく肉乳卵を作りましょう」なのだから、
実現はほぼできていないと考えてもいいだろう。

採卵鶏でよく行われる強制換羽は1(※3)に当たる気がするが、
10年ほど前はフツーにやってたが、今はどうかな。

さて、ではなぜ日本でアニマルウェルフェアが進まないのか。

以前取材に行ったとき、それまで和やかに話していた養豚農家に
アニマルウェルフェアについてどう思います? とうっかり話しかけて、
「ナーンセンス!!」と激しい口調で一喝されたことがある。

「アニマルウェルフェアは現場がわかってない者の言い草」で、
「役人が考えた机上の空論」でしかないと彼は言った。

たしかに経費と売り上げを考えるとそうなのだろうと思うが、
おそらくこれが一般的な畜産農家の反応ではなかろうか。
そして役人もあまり強くは言えないというような事情があるようだ。

以前、アニマルウエルフェアの勉強会に参加した際、
推進すべき農水の人の発言が業界団体及び農家に気をつかってなのかどうか、
「理想と現実という点もあるかと思いますがえーとえと、あのー」みたいな感じで
わたくしはアニマルウェルフェアが進むことはないだろうと確信した。

しかし、何かにつけ先進的なEUがこういった指針を作るのは当然だが、
なんと動物工場的な畜産の形態をとっているはずの米国ですら、
テキパキとガイドラインが決まっているらしいのだ。びっくり!

そしてマクドナルドやバーガーキングにも独自基準があるらしい。
基準は見つからなかったが、使用されている鶏卵については
強制換羽をしないこと、バタリーケージの面積を広くすること
などが定められているという記事を見つけた。

日本では、平成23年に乳牛・肉用牛・採卵鶏・ブロイラー・豚・馬について
飼養管理指針ができている。よーく読むと「現状を整理してみました」
的なもので、何か規定ができたとか決まったとかではないようだ。

それだけ推進するのが難しいということだろう。
というか日本はマクドナルド以下ってこと?

kobuta2_20170217104424398.jpg
母豚が入っているのがストールですが、イマイチわかりにくいすね。
どのおっぱいにどの子豚がすいつくか決まってるらしく、
よく出るところにはでかい子豚が、出ないところには小さいのが、
と、非常にわかりやすく並んでいます。


というように、アニマルウェルフェアにおいて日本はまだまだであり
わたくしたちはそういう肉乳卵を食べていることを忘れてはいけないのだ。

だから何ができるかというと何もできないが、知ってて食べるのと
知らずに食べるのとではなにかが違うはずだとわたくしは信じている。

以下専門用語の解説
※1 バタリーケージ 採卵用の鶏がはいっている檻。一羽につきだいたい
B5サイズくらいのスペースしかないため鶏がぎゅうぎゅう詰めになっていて、
ストレスで尾つつきとかしないようくちばしを切られていることが多い。
少なくともバタリーケージくらいはやめようよ、というのが世界の潮流。

※2 ストール 豚の体の幅ほどしかないせまい檻。妊娠中の母豚がよく入っている。
全く身動きできずただ立ったり座ったりするだけで見るたびに悲しい。
子豚が生まれてもここに入っててずーっと寝そべって授乳しているが、
ストールがあるから子豚を踏みつぶさないという養豚家もいる。

※3 強制換羽 鶏の生態で羽が抜け替わると採卵率が上がるという性質を利用し、
人工的に換羽を起こして採卵率を上げる方法。換羽をさせるため
鶏を一時的に飢餓状態(水しか与えない)に置くことから、
アニマルウェルフェア的にどうなの、という技術。

おまけ・スタンチョン 乳牛の首をつないでいる器具のこと。
規模によっては運動場にも出ず、ずーーーーーっとつながれてる牛もいる。
牛乳のCMで放牧風景を見るたびこれは優良誤認なのではないかと思うわたくし。



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ほんたべ

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手島奈緒
おいしい食べものをつくる人を紹介したり応援したりしております。ブログをまとめた著書『いでんしくみかえさくもつのないせいかつ』(雷鳥社)『まだまだあった! 知らずに食べてる体を壊す食品』(アスコム)『儲かる「西出式」農法』(さくら舎)など。現在ハンター修行中。

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