「おいしい野菜」が減っている?

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冬の露地畑のほうれん草。地面にべったりロゼット型に広がって寒さをしのいでます。
収穫した後少し水分を飛ばさないとパック詰めできないくらい、茎が太く硬いのですが、
ゆでるとあま~くておいし~いんですよね~。



冬らしい寒さが続きますねえ。菜っ葉がおいしくてしょうがない季節になりました。

この時期の菜っ葉は糖度が高く(硝酸態チッソの残留は低く)、一年で一番おいしいもの。
葱や人参、キャベツなどの冬野菜も、寒さに当たって糖度が増しています。
その野菜が一番おいしい時期のことを「旬」と呼ぶのであれば、
今はちょうどこれらの野菜の「旬」。おいしいうちにたくさん食べておくべし!です。

昨今、年中同じ野菜が店頭に並び、野菜の旬が本当にわかりにくくなりました。

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旬が全然わからない野菜の代表選手「トマト」。関東では3月上旬くらいからハウスのものが出てきます。
3月から4月下旬までがこの作型のトマトがとってもおいしい時期になります。
まあでもやっぱトマトの旬ってのは、家庭菜園でできる6月ごろであって欲しい気も…。



「いつもいろんな野菜を売ってて欲しい!」という消費者の欲を反映し、
夏場に関東で作れない野菜は、高原などの涼しい産地で栽培され、通年供給されています。
しかし、その味は、本来の旬の味とは似て非なるもの。
ムリして栽培されるものは、そのムリが味に反映するのだなあと思うのです。

例えば関東の平地で、夏場に作るのがとっても難しいほうれん草。

どんなに涼しい山のてっぺんで作っても、糖度は低く葉っぱはペラペラ、
食べると苦いようなチッソ過多の味がするものがほとんどです。
作り手が悪いのではなく、そういうものしかできない季節なのでしょうがないのです。

「おいしいと思わない時期の野菜は食べなくてもいい!」 
そんなふうに思う人ってあんまりいないんですかね。なんか不思議です。

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とっても涼しい夏場のほうれん草産地のほうれん草。緑が淡くて葉っぱが薄いです。
上のごってりした葉肉の厚さと比較してみてください。とても同じ野菜には見えませんです。



さて、今が旬のおいしい野菜たちですが、ちょっとショックな話を聞きました。

先日埼玉の農家でほうれん草のおひたしをいただき、
あまりにも甘くておいしいのでひたすら感激していたら、生産者がひとこと。

「このほうれん草ね、前作ってたのに比べると味が悪くなってるんだよね」
えっ? なんで。こんなにおいしいのに。
「毎年新しい品種が出るんだけど、新しい品種って味がよくないんだよねえ」

平成12年の「五訂日本食品標準成分表」発表時、少し話題になっていましたが、
野菜の栄養価が下がっているものがいくつかありました。

例えばほうれん草のビタミンCの値は、四訂で15mgだったものが五訂では12mg。
なぜ? 理由は明確にはされていませんでしたが、
栽培方法や品種の変化などが原因なのではないかと言われていました。

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埼玉県の瀬山さんがずっと種を採り続けている小松菜。
一度栄養分析をしたら、普通の小松菜よりも数値が全て高かったそうです。
自家採種を続けているせいか、土のおかげか、はたまた品種がそうなのか。
とにかく興味深い結果です。



有機野菜と慣行栽培の野菜の栄養価を比較したものを見たことがありますが、
栽培方法の違いでは、そんなにはっきりとした差が出るわけではありません。
(有機農家には悲しい結果ですけど)
ならば、残る原因は…品種?

そこで思い出すのは、以前企画したブロッコリーの品種ごとの食べ比べ会のこと。

ゆでただけのブロッコリーを味付けなしで食べるのは苦行に近く、
「ブロッコリーは大量には食べられない」というアホな結論を導き出した他に
「ネコブ耐性品種」の味が、ひときわ悪いことがわかりました。

その結果をブロッコリー農家に伝えたところ、
「そんなの当たり前でしょ。俺ら最初から作ってないよ」と言われたです。
そういうのって、農家にとっては常識だったようでした。あれま。

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葱自体が柔らかいのでむくことのできない深谷葱。加熱すると甘くてとろけるような味が身上。
葱ももう、泥つきで販売されることのなくなった作物。今やガリゴリと硬い一本葱が主流です。
「作ってる人ももうあんまりいないよね」と埼玉の農家に聞きました。もしや絶滅危惧種…?



耐病性の品種、寒さに強い品種、むきやすい品種、作りやすい品種。
農家にとって便利なそういう品種の野菜は、なんていうかやっぱり「いまいちな味」。
しかし、効率化・大量生産、市場の要求、そういった理由から選択されることが多く、
昔ながらの品種を作ってきた人たちは、どんどん減ってきています。

その最たるものが、いまや日本中の農家が作ってる青首大根です。

種をまくと収穫日の目安がある程度立てられ、欠株ができてもまきなおしOK。
葉っぱは上向き。株間は25センチ~30センチ(10aあたり10000本作れます)。
首が地面から出てくるので、生育具合もきちんとわかり、
同じ日に植えればだいたい同じ日に一気に収穫できるというスグレモノです。

これを在来品種の大蔵大根と比較してみます。

葉っぱが横に広がるので株間を広く取る必要があり(10aあたり4000本くらいかな?)、
地上部がものすごくでかくなるので、うっかりすると地面が見えなくなってしまいます。
大根が全部地面の中なので生育具合はさっぱりわからず、
収穫時期を逃すと割れてしまい、抜く時にはふか~い穴を掘らなくてはなりません。

やっぱ、青首を作りますよねえ…。でも大蔵大根、煮るとおいしいんですよねえ…。

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厳寒期の白菜の栽培風景はエイリアンの卵みたい。頭を縛られて寒さを耐え忍びます。
柔らかい品種だと霜で枯れてしまうので、耐寒性の強い品種を選択しますが、
この品種、バリバリと葉が硬くて、新理想などと比較すると味がいまいちなんですよね。
でも美しい商品になります。ロス率が低くなり、収入は上がります。



深谷葱、新理想(白菜)、下仁田葱のだるま、大蔵大根、日本ほうれん草…
こういった昔ながらの品種は本当においしいのですが、作りにくいものが多く、
それなりの対価が得られなければ農家も作りたがらないもの。

やっぱり淘汰品種なのかなあ…ああ、もったいない。

食べればわかるそのおいしさも、食べないと永遠にわかんないもの。
誰にも知られずになくなってしまう品種だってありそうです。

知らない間に野菜がどんどんまずくなっていくんじゃないかしらん…
ムキネギばっか売ってるスーパーの店頭で、そんなふうにしみじみ思う今日この頃です。


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品種

はじめまして。

ほうれん草ですけど、
違う品種や作型(栽培時期)が違うものを比較してどうこうというのは
アンフェアというか誤解を招きませんか?
品種の系統(東洋系、西洋系、交雑系)によっても見た目が大きく違いますし。
もちろん、同じ品種でも作型が違えば少し違った見た目になり、
品種と作型が同じでも栽培方法が違えばやは違ってきますよね。

それに、同じ条件なら、淡い色のものを選んだ方がいいといわれますよね。
窒素過多だと色が濃くなるそうなので(硝酸態窒素の残留の懸念)。

あと品種改良についてですが、
つくりやすさの観点以外にも食べやすさの観点からの品種改良もありますから、
一概に昔のがいいとも言えないかと。
原種に近いとえぐみ成分なんかも多かったりしますし。

本当は、品種と作型と栽培方法を特定して比較するのが理想だと思うんですが、
品種名を書いて売ってあるものって少ないですよね。

Re: 品種

こんばんは。
ご訪問ありがとうございます。

>
> ほうれん草ですけど、
> 違う品種や作型(栽培時期)が違うものを比較してどうこうというのは
> アンフェアというか誤解を招きませんか?

言葉が足りなくて申し訳ありません。
今回「おいしい」=「旬」という切り口で話を進めたので単純に作型の比較をしました。

高原や冷涼な産地で栽培するほうれん草は、流通という立場では必要とされているので、それはそれでいいと思っています。
ただ、そのほうれん草がおいしいと言えるのかしらと率直に思っていたので、そのことを素直に表現しました。
いいとか悪いとかではなく、夏のほうれん草は自分がおいしいと思えないので、そういう疑問を誰も持っていないのかなと問題提起したかったのです。

この後、IPMなどについて書いていく際に、耕種的防除、適地適作等について書こうと思っていました。
今回の記事は、食べる側の「欲」についてちょっと思いをはせてもらいないなあという、私の欲です。


> それに、同じ条件なら、淡い色のものを選んだ方がいいといわれますよね。
> 窒素過多だと色が濃くなるそうなので(硝酸態窒素の残留の懸念)。

ほうれん草についてはどうかはっきりとはわからないのですが、チッソ過多だと緑色が濃くなるというわけではないらしいです。
緑色の濃いものでも、硝酸態チッソの残留値が低かったり、淡くても高かったりすることがあり、色合いだけでは判断できなくて、前会社で勤務している際に困った経験があります。

特に小松菜でその傾向が強く、チッソ分を色合いで判断する場合は、生長点から見ていかないとわかりにくいと思います。


> あと品種改良についてですが、
> つくりやすさの観点以外にも食べやすさの観点からの品種改良もありますから、
> 一概に昔のがいいとも言えないかと。
> 原種に近いとえぐみ成分なんかも多かったりしますし。


そうですねえ。そういう品種ってあります。

例えば「みやまこかぶ」という昔の品種なのですが、作ってちょうだいと生産者にお願いしたのですが、「おいしくない」と言われました。
「こんなの作りたくない」と。
そういうものもあるので昔の品種が一概にいいとは言えないです。

とうもろこしの昔の品種なども同様です。

そのあたりは今回書ききれませんでした。
今回書いたものは作り手自身が「おいしいのに評価されない」と言っているものに限定して書いたつもりでしたが、わかりにくかったかもしれません。

ほうれん草については7年ほど前に食べ比べをした際品種の差を見ましたが、日本ほうれん草の食味がダントツでした。
ちなみに、ちぢみほうれん草という名でスーパーで販売されていたものはフツーの品種(アトラスとかそういう品種)以下でした。
栽培方法で味が良くなるってことだと思います。

>
> 本当は、品種と作型と栽培方法を特定して比較するのが理想だと思うんですが、
> 品種名を書いて売ってあるものって少ないですよね。

そのあたりは流通の不勉強なのか、そこまでしなくていいと思っているのか、私にはよくわかりません。

ただ深谷葱については、付加価値商品として販売している場合もあるようです。
また人参の黒田五寸や白菜の新理想なんかは、品種名をわざわざ書いて売っているのを見たことがあり「エライな~」と思ったことがあります。

「おいしい品種を知らない」=「評価されない」ってことだと思います。

ムキネギを作ってとお願いして「そんなのおいしくないのにいいのかい?」と農家に聞かれたことがあります。
おいしいものを作ろうとわざわざそういう品種を選択している人はたくさんいます。
でも、その品種が評価されなければ(価格面でも)作る意欲がなくなるでしょう。
そして現在の流通では、評価するしくみはありません。

時折付加価値商品としてものすごく注目を浴びることがありますが、次の日には忘れられているような状況です。

だから本当に書きたかったのは「評価するしくみがない」ということだったのですが、そのあたりはうまいこと書けませんでした。
その対策というのは、全く思いつきません。
でも知らないよりは少しでも知ってる方がいいと思うのです。


Re: 品種

お返事、ありがとうございます。

旬のおいしさについては、類型化による説明はどうでしょうか?
冬野菜は寒さにあたって糖分を蓄えることで甘くなるわけですよね。
各野菜で、旬のおいしさのメカニズムの違いを知りたいなと思います。
甘いからうまい、とは単純に結論づけられませんから、
細かい部分で品種による性質の違い、
作型や栽培方法による影響具合の違いがあって、
それがおいしさにどう影響してくるのかも、興味があるところです。
最終的なおいしさの評価は、好みもあるので難しいところですね。

品種についてですが、生産者側の意識に
「品種選びはノウハウとして秘密にしておきたい」というのもありますかね?
しかし消費者側としては、品種名がわからないと比較もできないし、
それを頼りにして次に選ぶということもできないので、
生産者側・販売側の意識の変化が重要な気がします。

最近マルシェとか覗きますけども、
品種比較できるような感じで売るのもありだと思うんですが、あまりやってないですね。
ジャム屋さん、パン屋さん、お菓子屋さん、なんかはやってますが。
野菜でも、食べくらべを提供してみたり、向き不向きをアピールしてみたり、
同じ品目でも10種類20種類並んでると興味惹くと思うんですけどね。
定番以外なかなか売れないからって言われるんですが、
ホウレンソウやレタスあたりは大根や人参に比べればやりやすい気はします。

ほうれん草の品種ですが、昨秋、
東洋種の禹城、西洋種のキングオブデンマーク、交雑種の若草(東洋種に分類される場合もあり)、
の3つの種を実家の母に送りました。
まさに食べ比べしようと思ってなんですが...
違うのはわかるけど、きちんと食べ比べしないと評価は難しいですね。
ほうれん草のオススメは向き不向きの限定なしで日本ですか?
新日本(数年前に試しました)は味的には全く別ものですか?

珍しい品目・品種を中心にいろいろと種を買って実家の母に送っているんですが、
固定種の種は国華園が安くていろいろ揃っていてお試しには重宝してます。
ほうれん草は、日本は無いようなので日本大葉を買えばいいのかな?
他の品目も、どんな品種を比較すると面白いかとか、
またいろいろと記事にしてくださいませ。

Re: Re: 品種

H2さん こんにちは。

> 甘いからうまい、とは単純に結論づけられませんから、
> 細かい部分で品種による性質の違い、
> 作型や栽培方法による影響具合の違いがあって、

食べ比べをする際には、同地域の作型を選択するというのが条件みたいです。
「関東」とかいうくくりだと、同地域同作型で比較が割合と可能です。
で、次は品種で、次が肥料と栽培履歴も必要でした。
葉物類の場合は簡易硝酸態チッソ試験キットなんかも必要でした。

そうすると同じ品種でも肥料によって味が違うのがわかりやすくて、やっていて驚くほどでした。
作り手の名前は食べてる最中には出しませんが、やっぱり上手な人が上位に来ました。
これは元会社が栽培履歴をすべて提出してもらってるからできることなので、一般的には難しいですねえ。

>
> 品種についてですが、生産者側の意識に
> 「品種選びはノウハウとして秘密にしておきたい」というのもありますかね?

H2さんのこの言葉を見るまでうっかり忘れていましたが、一般的にはそういうのあると思います。

とくに地域全体で●●の産地と言われているようなところで。
ブロッコリーの株間を狭くして作れるものとか、霜に強いものとか、去年うまくできたものとか。
食味っていうのはあまり関係なかったですけど…。

>
> 最近マルシェとか覗きますけども、
> 品種比較できるような感じで売るのもありだと思うんですが、あまりやってないですね。

そうですねえ。品種を提示してもメジャーじゃないと消費者にも伝わりにくいかも。
そんな中では、さつまいもの「安納芋」はメジャー品種になりましたよね。
主に通販ですけど。

マルシェは相対で販売できるので、品種の説明もしやすいと思うんですが、売り手や作り手にじゅうぶんな知識がないと難しいのかもしれません。


> ほうれん草のオススメは向き不向きの限定なしで日本ですか?
> 新日本(数年前に試しました)は味的には全く別ものですか?

「新日本」という品種、すみません。勉強不足で存じ上げませんです。

日本ほうれん草はおいしいので、自分で作る時には日本ほうれん草を選択します。
品種名はしっかりと覚えていませんが、ホームセンターで売ってるレベルです。
でも作りにくいです。夏はとくに、作れないと農家の人々はおっしゃいます。

H2さんのご質問で「ああこんなとこが足りなかったな~」と思ったところがありました。
また今後の記事の参考にさせていただきたいと思います。

またのご訪問をお待ちしています。
ありがとうございました。

比較・分析

農業の場合、変動パラメータが多くて、
また論理的・科学的考証が正しくできていない主義・主張も多くて、
それらをきちんと見極めるのってなかなか難しいですよね。

ホウレンソウは下記ページの品種分化図などを参考にして、
違いが出そうなものを選びました。
http://www.takii.co.jp/tsk/hinmoku/asp/p1_bdy.html
前の種もまだ残っていますが、
次回はまた違うのを選んで、できる範囲で比較してみたいと思います。

Re: 比較・分析

> 農業の場合、変動パラメータが多くて、
> また論理的・科学的考証が正しくできていない主義・主張も多くて、
> それらをきちんと見極めるのってなかなか難しいですよね。

そうですね。
地域によって土質は違うし、気候も降雨量も適正な作物も違うし。
在来品種なんてその最たるものだと思います。
だだちゃ豆なんて、よその地域に行くと同じものにならないって言いますもん。
何が違うんだか…はっきりとは誰にもわからないのが、また不思議なところですよねえ…。

その点F1はきちんとどこでも同じようにできるってことが素晴らしいと思います。

ほうれん草、いろんなの作ってみたらまた教えてください。
私は3月から区民農園が使えるので、秋作で日本ほうれん草にチャレンジしてみます。
プロフィール

ほんたべ

Author:ほんたべ
手島奈緒
おいしい食べものをつくる人を紹介したり応援したりしております。ブログをまとめた著書『いでんしくみかえさくもつのないせいかつ』(雷鳥社)『まだまだあった! 知らずに食べてる体を壊す食品』(アスコム)『儲かる「西出式」農法』(さくら舎)など。現在ハンター修行中。

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