「F1の野菜を食べたら不妊になるってほんとうですか」と聞かれたら

gazou 014
自家採種するとその土地にあった性質のものになっていくと
よく言われておりますが、とくにネギは非常に味がよくなります。
ネギのタネを採るのはわりとカンタンなので採ってる農家はわりといます。



先日お友だちに「F1って種のね、野菜を食べたら不妊になるってほんと?
どういう理由かわかんないけど、なんかこわいねー」と聞かれました。

「ならない。っつか、今スーパーで売ってるアブラナ科ほとんどがF1だから。
大根とかほぼF1だから。今までもみんな食べてるから平気だから。
それにあなた子ども3人いるでしょ。不妊になってないから」とわたくし。

元記事がどんなものか読んでないから不明だが、
お友だちが言うには以下のような記事だったらしい。

「今の野菜はF1とかいうらしいんだけど、なにかがよくなくて
それを食べると不妊になる心配があるとか。少子化もこれが原因だとか。
だけどそうじゃない種もあって、それなら大丈夫だって」
(↑ 農業に詳しくないお友だちフィルターがかかっているので漠然としています)

これはたぶんF1をつくる際の「雄性不稔」が不妊とか無精子症の原因、
とかいう話であろう。最近ネットでときおり見かける。

ちなみにF1とは一代交雑種とかハイブリッドとも呼ばれる。
植物の「優性遺伝」という性質を利用し特定の性質を獲得したもので、
中学の時に習った。一世代目には優性遺伝のピンクの花が咲くけど
次世代はバラバラになるというメンデルの法則の図を思い出してください。

特定の性質とは人間にとって都合の良い性質のことで、
たとえば大根なら50日で一気に収穫できるとか、まっすぐ生えるとか、
ネコブ病に耐性を持っているとか、とう立ちしにくいとかである。

問題は、これらの形質や性質は次世代にそのまま伝わらないということだ。
つまりF1の野菜のタネを採って畑にまいても同じ性質のものができない。
ということで、タネを毎年買わなくてはならないというデメリットがある。

上記の説明をしたところ友人は「農家ってタネ買うんだねー」と言った。
「みんな自分でタネ採ってると思ってたよ」「ひー(゚∀゚)」
みんな農業に興味ないんだなーと遠い目をしてしまったわたくし。

IMG_1474.jpg
以前大地を守る会で固定種を積極的につくってもらったことがあります。
おいしいかぶをつくる農家に「みやまこかぶ」を作ってもらったのですが、
「こんなかぶ作りたくない」と言われました。理由は「おいしくないから」。
「おいしいものを消費者に食べてほしくてつくるのに、こんなの作ってどうする」
なんちて言われました。固定種がおいしいとは限らないことを知りました。
※写真はみやまこかぶではなくほんたべ農園で採れたものです



そう、農家って毎年タネを買ってるの。んでそれがけっこう高いの。
でもタネ採りもすげー大変なの。例えば小松菜は3月に種まきして
4月下旬に収穫しちゃえば畑が片付いて次のものつくれるけど、
タネができるのを待ってると6月まで地面を使うわけ。

そんなの余分な土地があるとか思想とか余裕がある人じゃないとムリ。
だからみんなタネを買うわけ。でも作りやすいとか形がそろうとか
タネが採れないってデメリットよりもメリットのほうが大きいの。

「んじゃ何がダメなの、F1」とお友だち。
「タネが取れないこと」とわたくし。
「それだけ?」
「(企業によるタネの支配とかあるけどこの場合は)それだけ」
「へー。んじゃ大丈夫なんだね」会話終了。

さて、そうは言っても気になったので「雄性不稔」について調べてみた。

「雄性不稔」はざっくり言うと「花粉を作らない」ということだ。
りくつや歴史等含めて以下のサイトが非常にわかりやすいのでご確認ください。

「花粉を作らない雄性不稔のメカニズム—核とミトコンドリアの不思議な共生—」
http://www.kyoto-su.ac.jp/project/st/st17_07.html

「雄性不稔」が無精子症など不妊の原因になると言っている理由は、
雄性不稔の原因がミトコンドリアの持っている遺伝子によるという部分だろうか。

それを食べると人体のミトコンドリアにも影響するのではないか。
だから不妊になるのでは。最近少子化が問題になっているのも
男性の無精子症が増えているのも、これが原因、というような感じかな。

そこでわたくし的にはギモンがふたつ。

植物の細胞に含まれるミトコンドリアはヒトの胃でバラバラになりませんか。
仮にそのまま吸収されたとして、人体の生殖細胞のなかに
ウイルスでもないミトコンドリアが入れますか。入れませんよね。

言ってみればこれはタネなしぶどうを食べると不妊になる的な話ではないか。

であればタネなしスイカもキケンだし、トマトトーンで着果したトマトや、
単為結果するバナナやパイナップル、さらに平核無柿もキケンである。
しかしこういうものを食べて不妊になる。と主張する人はいないだろう。

ということで、F1はキケンではないし不妊にもならない。
でもタネが採れない、という問題がある。

gazou 047
どの野菜がF1か知りたい人はホームセンターでタネを見るといいでしょう。
F1とか一代交配種とか書いてあります。揃いがよくて作りやすいけど、
味がイマイチ。というものもあります。ネコブ耐性品種はたいがいそうです。


わたくしは在来品種を含めた固定種は(おいしいかどうかは別として)、
すんばらしいものであると考えており、
めんどうな自家採種をしている農家も尊敬している。

固定種はわたくしたちの固有の文化とも結びついている大切な財産だが、
効率や大規模化を優先する現在の経済(農業)のしくみから
ずいぶん前にこぼれ落ちてしまった。

つくりにくいとかそろわないとか、淘汰された理由を考えると
しょうがないとも言える。タネを採るより優先されることがあるからだ。

固定種やF1について語るとき、固定種がなぜ淘汰されちゃったのかとか、
なぜF1をみんなが作っているのか、というようなことを
いっしょに伝える必要があるとわたくしは思う。そうすれば
現代の農業がはらむ問題などについて考えることができるからだ。

その問題には「F1が不妊を引き起こす」的な話からは決してたどりつけない。
「F1」対「固定種」という偏ったイメージを与えることは、
タネについての正しい知識にダメージを与えるだけではないか。

この話は農業のことをよく知らない人(のみに、と言ってもいいかもしれない)に
非常にインパクトを与える話だが、聞くたびにいつもガッカリしてしまう。
この話をする人はこれが農業や農家のためになると考えているのだろうか。

なんてことを考え始めると夜も眠れませんよ。
だからもう考えないことにします。



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Author:ほんたべ
手島奈緒
おいしい食べものをつくる人を紹介したり応援したりしております。ブログをまとめた著書『いでんしくみかえさくもつのないせいかつ』(雷鳥社)『まだまだあった! 知らずに食べてる体を壊す食品』(アスコム)『儲かる「西出式」農法』(さくら舎)など。現在ハンター修行中。

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