「種子法廃止」で日本のタネが失われるってのはほんとの話?

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きちんと発芽すること、遺伝的に純粋性があることなどが
高品質なタネと言えるそうです。「種子法」とは、このような高品質なタネを
増殖し品質管理をきちんと都道府県の責任において行うことを義務付けた法律で、
タネの独占とかF1とか不妊とかはあんまり関係ありません。


4月13日、メディアや国民が森友問題でわーわー騒いでいる間に
「主要農産物種子法」の廃止が可決されましたですね。

わたくし、種子法についての理解が全くありませんで、
どーゆーことなのか、きちんと国会の議論を聞きたいと思っていたのに
ほとんど聞けませんでしたよ。

くそう! 森友とかやってる場合じゃないだろ!
どーでもいいことを延々国民の税金使ってやるな! 
と思ったのはわたくしだけではないでしょう。

可決後、主にネット上では以下のようなことが言われています。
検索するとわらわらとでてきますが、これらはほんとのことなのか?
なんて思うわけです。

・日本古来の原種・原原種が失われる
・タネの値段が高騰し農民が立ちいかなくなる
・モンサント等の巨大企業に日本のタネが独占される

ということで、たねと食とひと@フォーラム主催の
「種子法廃止でどうなるたねと食と農」でお勉強してきました。
講師は龍谷大学経済学部教授・西川芳昭さんでありました。

まず「主要農産物種子法」とは8条からなる短文の法律で、
附則がやたらと長く何を言っているのかよくわかりません。
しかし「育種」とか「種の権利」とかについての言及はありません。

種子法の目的は「主要農作物の優良な種子の生産及び普及を促進するため、
種子の生産についてほ場審査その他の措置を行うことを目的とする」
であります。これがどういうことなのかがイマイチわかりにくいのです。

ということで「種子法」を一言でいうと以下のようなものになります。

奨励品種(優良品種)の「増殖」とその「品質管理」を
都道府県の責任においてきちんとやることを義務付けた法律

具体的にはこんな感じです。

都道府県(以後「県」で統一)の試験場などで育種されたイネのタネがあります。
これは県だけではなく現在では民間にも開放されているので、
民間で開発されたタネでもOKです。が、あんまり活用されていないようです。
※「育種」の管轄は種苗法です。種苗法では開発者の権利が担保されており、
種子法は全く関係ありません。ここが大事です。とても大事です。

そのタネを入手し奨励品種になるかどうか、県で試験をします。
つまり自分とこの気候や土地柄に合うかどうか、いいものができるか、
きちんとやって栽培方法とか技術とかを確認するわけです。

試験の結果「奨励品種」(準奨励品種とかもあるらしいです)が決まります。
できたタネはちょびっとしかありませんから、増殖しなくてはなりません。
ということで、県の決めた圃場とルールのもと、増殖を行います。

ここで最初に増殖したタネを「原原種」と呼びます。
原原種はその品種のおおもとになるものです。それをさらに増殖します。
増殖したものを「原種」と呼びます。
※「原種が失われる」と言っている人はこの種子法上の「原種」という言葉を
一般的な「原種」とごっちゃにして語っているのではないかと思ったりします。

原原種や原種を生産するにあたって圃場だの技術だの農薬だのに決まりごとがあり、
それも種子法のなかで「ちゃんとやれ」と義務付けられています。
原種をさらに自県の農家に販売できる数量まで増やします。
ここまでが種子法で都道府県に義務付けられている部分です。

「原原種・原種の増殖」と言われてもなんのことかピンと来ませんが、
これは奨励品種と定めたイネのタネを田んぼにまいて、常時巡回し、
へんてこりんなもの、たとえばびゅーんと伸びすぎてるヤツや
ヘンなイネが実るヤツなどをちまちまと抜き取る、的な作業で、
大変な手間がかかります。

が、こういったヘンテコなものが混入すると
品質が低下しますのできちんとやらなくてはならないのです。

この作業は県からお金が出ていますから、このぶんの経費は
販売価格には上乗せされません。ということで奨励品種は
相対的に安価で購入できるというメリットがあります。

種子法の廃止とは、この「増殖」及び「奨励品種になるまでの試験等」を
民間に開放するということです。
大きく見た場合「公的事業」削減の一環とも言えなくもないでしょう。
昨今種子法だけでなくさまざまなものが「民間競争力」の俎上にのっているのです。

では、「県の責任と義務」が民間に受託されるとどうなるか。
民間企業では費用対効果などがシビアに検討されますから、
「増殖の際の品質の担保」がむずかしくなる可能性があります。大きな問題です。

ということもあり、参議院で付帯決議が出されているそうです。
これは、法律はなくなるけど制度を残すというものですが、
将来的に予算がつかなくなることが予想されます。

んではどうなるか。

基幹作物である「イネ」についてはどの県も一定程度配慮するでしょうが、
そもそも生産量の少ないダイズとムギについてはどうでしょうか。
ダイズ・ムギで付加価値品種をつくっている産地以外は、
手間ひまかけて試験をして増殖しなくなる可能性が高くなります。

義務と責任がなくなる=予算がなくなるということですから、
栽培面積の少ない作物に予算をつけられない県はそこら中にありそうです。
ダイズ・ムギについてはすでに輸入作物がメインになっているわけで、
ますます自給率が下がることが予想されます。

さらに、経費が上乗せされていないため結果的に安価で購入できたタネが
割高になる等も懸念されています。このあたりは農家が困ります。
付帯決議の「制度は残す」部分に期待したいところです。

わたくし的には「種子法廃止で巨大企業がタネを独占」とかいうのは、
種苗法の管轄で上記種子法には関係ないだろうと思いますし、原種が失われる、
というのも何かの勘違いだろうと思うわけで、ネットで騒いでらっしゃるのが
全て正しいとはとても思えず、便乗商法の方もいらっしゃるように思えます。

だからと言って問題がないわけではなく、やはり品質の低下や、
ダイズ・ムギの没落とかは困るわけです。
しかし一消費者として何ができるか、というとむずかしいところです。
今後も情報の推移を注視していきたいと思っております。


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ほんたべ

Author:ほんたべ
手島奈緒
おいしい食べものをつくる人を紹介したり応援したりしております。ブログをまとめた著書『いでんしくみかえさくもつのないせいかつ』(雷鳥社)『まだまだあった! 知らずに食べてる体を壊す食品』(アスコム)『儲かる「西出式」農法』(さくら舎)など。現在ハンター修行中。

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