有機農業も自然栽培も「目的」ではなく「手段」

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今年もぶどうの季節がやってきましたねー。巨峰の原種を自根でつくってる
佐藤善博さんの巨峰(マニア過ぎる評価)を今年も注文しました。楽しみ。
あと五十嵐晴夫さんのシャインマスカットもチョー楽しみす。



先日阿蘇で行われた有機農業関係のイベントの最後にこんなひと言を聞いた。
「有機農業を広めるために何をしたらいいか議論しました」

よく聞く言葉だ。しかし、この時なにかがチクリとひっかかった。
小さなトゲは東京に戻ってからもちくちくと何か言いたげだ。
何が引っかかったのだろう。今までもよく聞いてきたのに。

なので、このトゲの違和感についてちょびっと考えてみた。

「有機農業」とは1970年代に始まった農業の一形態の名前である。
2000年に「有機農産物」「有機栽培」「有機ナントカ」と表示するため、
JAS規格の一部として「有機農産物の日本農林規格」が法制化された。

【JAS規格には、品位、成分、性質その他品質に関する規格及び
生産の方法に関する規格があり、品質に関する規格は51品目、
197規格、生産方法に関する規格は15品目17規格が定められています。
そのうち、有機JAS規格は、生産方法に関する規格に該当し、有機農産物、
有機加工食品、有機飼料及び有機畜産物の4品目4規格が定められています。】
(はじめての人のための有機JAS規格 農水省サイトより)

1970年代、それまでの農薬と化成肥料に頼った農業をやめ
有機農業に変えた人たちはたくさんいて、彼らに共通するきっかけは
わたくしが聞いたところでは以下のようなものであった。

・農薬が危険だから使うのをやめたかった。
・みなに喜んでもらえる安全でおいしいものをつくりたかった。
・自分の子どもに食べさせる安全でおいしいものをつくりたかった。
※1970年代はチョーコワイ「ドリン系農薬」などまだ失効していませんから、
農薬は危険なものでした。この場合の「安全」は正しい認識です。

畑作もコメも果樹を栽培している人もみなが等しく
上記のような理由で有機農業に取り組み始めた。と思う。

化成肥料をやめて堆肥を投入し、できるだけ農薬を減らし
虫とか病気とかがビシバシ出まくるなかさまざまな技術を試行錯誤して、
より安全なもの、おいしいものをつくろうと考えていた農家の作物は
2000年に有機JASが法制化され「有機農産物」とは呼べなくなった。

有機JASにはこまごまとルールが決まっていて認証にはお金もかかる。
さらには使える農薬や資材もガッチリと決まってしまった。
それまで無農薬でがんばってきた有機農家のなかには
一律の規格である「有機JAS」でひと括りにされるのを良しとしない人もいた。

とくに果樹農家は、農薬の散布数をかなり減らしてがんばってきたのに、
つくったものは「特栽」という規格のワクに入れられることになった。
何十年も有機農業やって来たのにくそっ! と思った人は少なくないだろう。

でもちょっと待って。よく考えてみよう。

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果樹農家で慣行栽培から有機農業に切り替えた農家の方々からは
わりとリアルな「農薬まいて病気になった」話が出てきます。
最も農薬の被害を受けるのは散布する人であることを忘れてはいけません。
だからこそ、減らしてつくってる人のものをわたくしは買いたいと思います。



そもそもみんな「有機農産物」と表示したいために
農薬を減らして肥料を変えたわけではなかったはずだ。
「おいしいもの、より安全なもの」をつくりたくて
有機農業を選択したのではなかったか。

であれば、有機農業は目的を達成するための手段のひとつだ。
おいしいもの、安全なものをつくりたい、それが目的なのだから。

「有機農業を広めるために」でチクリと感じた違和感は
「有機農業=目的」と最終到達点のように聞こえたからだ。
本来手段であるはずのものが目的になってしまった違和感である。

昨今農水省では有機圃場の割合を◯%にするとか目標値を決めているが、
こちらは「有機JAS取得圃場及び有機農産物が増えること」が目的である。

「おいしいものを、安全なものをつくる」のが目的であれば、
手段は有機農業だろうが自然栽培だろうが慣行栽培だろうが
たぶん、べつになんでもいいのだ。できたものがおいしくて安全ならば。

ただ、言葉で分類すると差別化やイメージしやすいというメリットがある。
数年前まで「有機農産物」はどんなものかよく知られていなかったが、
最近では「オーガニック=なんとなくいい」と考えられている。

食べもの以外のコスメや衣類なども充実してきて、
「オーガニック」表示はますます意義あるもののように思える。
どのようにいいのかはとくに関係ない。

JAS規格という法律によってオーガニックという規格(表示)で
何かが担保されていると思えればいいからである。

しかし、言葉にとらわれて本質が見えなくなることがある。
わたくし自身もこのところそうなっていた。

先日果樹分科会のコーディネイターをすることになったとき、正直に言うと
「柑橘はともかく落葉果樹は有機関係ないからなー」とわたくしは思った。
過去に落葉果樹農家に「俺ら有機関係ねーし」と言われた際にも
わたくしも「だよねー」となんとなく答えたりしていた。

この場合の「有機」はわたくしにとっては有機JASのことだったが、
わたくしはこのとき「何言ってんの、ずっと有機農業やってきたんじゃん!」
と言わねばならなかったのではないか。

おいしくて安全なものをつくろうと長年有機農業に取り組んできた、
そして現在もそうであるその事実も価値も変わらないのだから、
有機=関係ないではない、と、言わなくてはならなかったのだ。

まず最初に「おいしくて安全な食べものをつくりたい」があり
その結果「有機農業」あるいは「自然栽培」を選択し、
さらにそのなかに「有機JAS認証」を取得する人がいる。しない人もいる。

わたくしは大地を守る会時代には上記きちんと認識していたのに
ここ数年すっかり忘れていたのだった。日々猛省するわたくしであります。


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手島奈緒
おいしい食べものをつくる人を紹介したり応援したりしております。ブログをまとめた著書『いでんしくみかえさくもつのないせいかつ』(雷鳥社)『まだまだあった! 知らずに食べてる体を壊す食品』(アスコム)『儲かる「西出式」農法』(さくら舎)など。現在ハンター修行中。

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