自然農法の先駆者の畑はすごかった―埼玉県・須賀利治さん

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長身でかっこいい須賀利治さん。お忙しいところ色々とお話を聞かせていただきました。


「埼玉県に自然農法のスゴイ人がいるんだって。
河原の草だけで作った堆肥を使って品質がよくておいしい野菜を作ってるらしいよ」
埼玉・群馬の産地周りをしているとき、何回かその噂を聞き、
一度畑を見せてもらいたいなあと思っていた方がいました。

その方の名は、須賀利治さん。
埼玉県上里町で、自然農法を営んでいます。

実は利治さんのお父さん・須賀一男さんは、有吉佐和子の「複合汚染」に登場します。
一男さんは、昭和32年(1957年)から自然農法に取り組んだ、自然農法の先駆者。
すでに半世紀以上自然農法で耕されている、須賀さんの畑に行ってきました。

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冬季なので畑に作物がないため、2009年の11月の写真を見せていただきました。
とてもきれいで虫食いもない野菜たち。大根やかぶの地上部が小さめなのが特徴です。
これはチッソ分が適正であるという証拠。商品部分は正しい形できちんと生育しています。
このほうれん草が無施肥の畑で収穫できたもの。うーん、すごいぞ。
「まあでもちょっと早めに種をまくと、アブラムシがついたりもするよ」と須賀さん。
適当な時期には種することが大切ってことですね。適地適作ってやつでしょうか。


昭和32年と言えば、コワーイ農薬と化学肥料の使用が全盛の時代です。
「ええ~っ!そんなことやってたの~っ!!!うひい~」
と叫びたくなるような農薬の使い方がOKだった時代
(収穫後のナスをホリドールでドブ漬けとか…あーコワイ)。

しかも有機リン系(すごく毒性の強いやつ)やらドリン系やらのコワーイ農薬が主流で、
それらはまだ製造中止にもなっていませんでした。

レイチェルカーソンの「沈黙の春」は1962年出版(日本での新潮文庫版出版は1974年)、
有吉佐和子の「複合汚染」は1974年から朝日新聞に連載が始まりました。

この連載をきっかけにして環境問題に注目が集まり、有機農業運動がスタートしました。
私が以前勤務していた会社・大地を守る会が設立されたのが1975年ですから、
日本で有機農業がクローズアップされ、市民運動化したのはこのあたりからでしょう。

須賀さんはそれより18年も前に農薬と化学肥料について疑問を持ち、
さらにその使用をきっぱりと辞めた、有機農業の先駆者でもあるのでした。

その理由は、ご自身の病気だったそうです。

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ちょっと大きくなってるけど、いただいて帰ったほうれん草。甘かったっす。
品種はパレード。古い品種なので種やさんにも売ってないけど、毎年取りよせてもらってるとのこと。
その理由は「このほうれん草がおいしいから」。安全でおいしい野菜…理想ですね。



「僕はまだ生まれてなかったんだけど、親父が病気になった原因を考えていくうちに
世界救世教(MOA)の自然農法に出会ったんだよね。

自然のものを自然に返して、化学物質を一切使わない農業。
これだ!ってことで、当時は豚と牛も飼ってたんだけど、きっぱりやめちゃった。
そうすることで逃げ道をなくして、自分を追い込んだんじゃないかと思う。
これからは養蚕だってので、桑を何反も植えたとこだったんだけど、それも全部抜いちゃったの。
それで一から自然農法を始めたんだよ」

昭和32年。おそらく養蚕も養豚も酪農も、かなり利益が上がっていたでしょう。
これらの産業が衰退していくのは、昭和40年以降のことです。まだまだ儲かってたはず。
それをきっぱりと辞めてしまったとは…周囲の人はどう思ったのでしょう。

「まず両親は猛反対。あと近所の人にも何やってんだ、おかしくなったとまで言われた。

ただ自然農法をやっていくうちに親父の体は段階を経て、だんだん健康になっていった。
食べものだけが原因じゃないかもしれないんだけど、とにかく元気になって。
そのおかげで、父も母も今でも元気で、ちょっと腰が曲がってるけど農作業やってますよ」

現在、須賀さんの畑は、有機JAS認証を取得しています。
畑に入れる肥料分としては、利根川・荒川の草でできた堆肥のみ。
動物性のものは一切入れていません。

それで作物ができるのかな? チッソ分は? 素朴な疑問です。

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東毛酪農の牛が食べている河原の草をロールにしたもの。これは2年前のものです。
ほとんど分解していませんが、使う前に切り返して空気を入れてやると温度が上がり始めるとか。

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荒川から来るものはすでに何度か切り返されているので、ほとんど土状態。
このふたつが須賀さんの堆肥。他には何も足していません。


ほうれん草がよくできるという畑の簡易土壌分析結果を見せていただきました。
うひゃあ! この数値はいったい何なの?
残留チッソの数値は0.02(!!!)。これではチッソ分は全然足りないでしょう。
しかしスーパーに出荷できるようなきちんとしたほうれん草ができている…なぜ?

おそらく数値化されない形(アミノ酸類)でN分が土壌中にあるのでしょう。
長年の有機物の投入が、微生物豊富で団粒構造のできた土を作っている、
そんな風に思いました。

土づくりとは時間のかかる地道な作業。
それにしてもすごい結果をもたらすものです。

「うちの自然農法はMOAのガイドラインの自然農法。
自然の力を生かして作物を作る循環型農業なんだよね。
このほうれん草の畑は連作障害もなくて堆肥を入れなくてもできるんだ。
長年の土づくりの結果だと思うよ」

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「この半分生の状態で土に入れるんだよ。この状態で入れるのがいいの」
これを微生物が分解する過程で生み出すさまざまなものが、野菜に吸収されてるんだろうなあ、
理にかなってるなあ…とぼんやり思いながら聞きましたです。



最近都心部のこじゃれたレストランで
「野菜は自然農法のものを使っています」という注意書きをよく見ます。

これを見るたび「自然農法」って何のことだろうと思っていました。
現在のところ、自然農法には有機のような法的な決めごとがあるわけではありません。
あいまいだけどなんとなくいい印象を与えるこの言葉で、
ほんのりとした優位性を持たせているんじゃないか。そんな風に感じていました。

しかし、須賀さんの自然農法は、そんなあいまいなものではありませんでした。
長年の経験と土づくりによって、独自に確立され、誰にも真似できないもの。
最近流行のよくわからない「自然農法」とは一線を画するものでしょう。

土づくりは一朝一夕にはできないもの。何十年も草しか入れていない畑の土はどんな土?

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野菜の販売先は、MOA他4~5か所。あと産直の個人のお客様です。
雨の日の作業性と、いろんな野菜を届ける必要があるため、ハウスが4棟建ててあります。
これはミズナ。冷たい赤城おろしが吹き降ろすこの土地では、厳寒期の野菜は大変。



有機物の蓄積、微生物の働き、団粒構造、腐植…いろんな言葉が脳裏をよぎりましたが、
とにかく、須賀さんの畑はスゴイ!ってことだけわかりました。

「長年の蓄積があってできてることだから、同じようにはできないと思うよ」と須賀さん。

そう、真似しても野菜がうまくできないことは目に見えています。
とりあえず自分の家庭菜園では絶対ムリ! なので粛々と微生物と炭素分を入れることにします。

この日、無施肥の畑でできたほうれん草をいただいて帰ったのですが、
それはそれは甘くておいしいほうれん草でした。

それ以来、自然の力について考えています。


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はじめまして

研修中に須賀さんの田畑の見学に行きました

田んぼの草取りをしたのを思い出しました

有機農家の田んぼに入る感覚と違います

須賀さんの田んぼ成長良かった記憶があります

Re: はじめまして

はじめまして。

須賀さんは田んぼは有機JAS取ってないとおっしゃっていました。
自家用でほぼ消費だからと聞いたような気がします。
入った感触が違うなんていいですね。どんな感じなんだろう。

今度は作物がたくさんある時に見に行きたいなあと思ってます。

「自然農法」

「自然農法」って確かにわかりにくいですよね。
いろいろなサイトを見ましたけども、
ここの方がよく整理してまとめてらっしゃるなと思いました。
ちょっと長いですけど。
http://naturefarm.iti5.net/?eid=67

ところで「自然農法」で前から一つ疑問に思ってることがあるんです。
紹介されている須賀さんは植物性堆肥を入れてらっしゃいますが、
無肥料栽培で本当に何も入れないことをうたってる方もいますよね。

自然の野山は肥料などやらなくても木も草もしっかり育っている、
などと説明されていることがありますが、
この説明では穴があって、
自然の野山と違って畑では収穫物を畑の外に出しています。

植物の90%程度は水分で、
酸素と水素(水)は空気中および土壌を経由して供給されますが、
窒素はマメ科の植物などが空気中から固定されて、
炭素も植物の光合成により空気中から固定されます。
畑の植物バランスが適切なら、これらは必要な量は供給され得ると思われます。

疑問が残るのはミネラル(微量元素)です。
出て行く一方に思えます。
必要量が供給され得る可能性として思いつくのは、
・畑に山水を取り込む場合は山の土壌からミネラルが供給される
・井戸から水を供給する場合は井戸水からミネラルが供給される
・降雨によって空気中の塵やイオンなどに含まれるミネラルが供給される
・もともと普通の土壌中には十分にあって長期間収穫を続けても減らない
というくらいなんですが、
素人で具体的数値を知らないこともあってどれもいまひとつに思えます。
感覚的にはそれらでは足りないように思えるんですよね。

いろいろ調べていると、元素転換/原子転換なる言葉が出てきます。
もしそれが本当なら(証明されれば)ノーベル賞ものだと思いますが、
まだきちんとした科学的な論証に耐え得る証明は無いようです。
残念ながら、いかにもな感じの説明ばかりです。

この辺りのことについて、なにかデータとか見解とかお持ちですか?

まぁ農薬と違って肥料については、
肥料の中の残留農薬とか窒素過多や養分バランスなどに注意すれば、
無肥料栽培へのこだわりというのは(現時点では)持っていないのですが、
ちょーっと気になっている部分なんです。

No title

ほんたべさん

裸足でたくさんの農法の田んぼに入ってみると
面白いですよ
どんな感じなんだろう→体が何か感じる

数をこなせば 私、あの人の
田んぼが一番好きだと分かると思います

夏にまた訪ねてみるのも良いですね



Re: 「自然農法」

H2さん

> 無肥料栽培で本当に何も入れないことをうたってる方もいますよね。

本当に入れてるのか入れていないのか、私にはわかりませんのです。

自分の経験では、すももとみかんを栽培している人が、草生栽培で無施肥で果実ができてるってことしか知りません。
草生栽培の炭素分の供給(ライ麦とか炭素率の高いもの)、除草剤の不使用による微生物の繁殖と、マメ科植物(カラスノエンドウとかの雑草)や雨水からのチッソ供給で足りるのかもなあと思ってます。

道法さんもすもも農家も無施肥で栽培してたことを自分の目で見て確認したので、事実だと思います。
見てない人の畑については判断できないです…すみません。

>
> 疑問が残るのはミネラル(微量元素)です。
> 出て行く一方に思えます。

西出さんがおっしゃるには、植物の栽培には多量要素(9成分)・微量要素(15…だったかな?忘れちゃいました)が必要だけど、多量要素がバランスよく供給できていれば微量要素の心配はいらないとのことでした。

微量要素の中にはモリブデンとかいう自転車作るときとかに使われている物質があり、どうやって供給するんだろうねと元同僚と話をしたことがあります。

数値的に足りないと言われ、資材屋さんに微量要素資材を売りこまれている人がたくさんいますが、それより先に多量要素のバランスを見るべきだと西出さんはおっしゃっています。
人間がバランスよく食べものを食べてればサプリはいらないのと同じだと言われ、そうだなあと思いました。

現在のところ「自然農法」という言葉は、流通としては一番使いやすく優位性を持てる言葉になってしまっています。

法的な枠はないし、基準は各団体のガイドライン的なものしか見たことがありません。
一昔前の「有機栽培」「無農薬野菜」に代わる言葉として、流通には便利に使われています。
そしてそういう売り文句で付加価値商品として販売されていることに、多少の疑問を持っています。

でも、それでいいんかな~? 客観性をどこに持つのかな~?等々、疑問符はいっぱいです。

Re: No title

石川の自然農農家さん

田んぼって、ちょっと興味がなかったこともあり、うといんですよね。
いつか機会があったら入ってみたいと思います。

私的には西出さんに聞いたコンバインが沈まない田んぼに、一度入ってみたいと思っています。
理由を聞いたんですが、忘れちゃいました。

No title

ほんたべさん、おはようございます。須賀さん、渋くてかっこいいですね。信念を持った人の顔だと思います。

土づくりはとても大切だと、改めて思いました。特に堆肥を切り返すと熱が上がってくるところは、僕のファームで作っているものと似ているなぁと感じています。

甘いほうれん草。最近は食べたことがないです。いいですねぇ♪

Re: No title

駆動さん

おはようございます!

須賀さん、背が高いし渋いしかっこいい人でした。
でも背が高いと農作業がしんどいそうで、腰が痛くて…と笑ってらっしゃいました。

置きっぱなしの草でも、切り返すとすぐに60℃位の熱が出るそうです。
駆動さんとこのあの機械ほどではないですが、発酵熱って不思議ですね。
去年見せていただいた堆肥、今さらながらですが、よさそうだなあと思っています。

甘いほうれん草ですが、山形県には赤根ほうれん草って在来種がありますが食べたことないですか?
根っこばっか食べたい、ほんとにおいしいほうれん草でした(10月ごろ食べたかな)。

作るのはすごく難しいらしいですけど。あれ、おいしかったな~。
今まで食べた中で、ナンバーワンのほうれん草かも。
プロフィール

ほんたべ

Author:ほんたべ
手島奈緒
おいしい食べものをつくる人を紹介したり応援したりしております。ブログをまとめた著書『いでんしくみかえさくもつのないせいかつ』(雷鳥社)『まだまだあった! 知らずに食べてる体を壊す食品』(アスコム)『儲かる「西出式」農法』(さくら舎)など。現在ハンター修行中。

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