農薬と農家、流通と消費者の話

ミツバチトリミング
殺虫剤は害虫も殺しますが、ミツバチやクモなども殺します。そういう意味では「悪」。
しかし、特定の農薬を規制するよりは、全体の毒性で議論した方がいいと思うんだけどなあ…。



以前勤務していた会社(大地を守る会)で、私は産地担当という仕事を5年間していました。

産地担当とは、農家との作付契約・出荷物・出荷状況・作柄の確認などが主たる役割で、
農家のおじさま方と毎日ああでもないこうでもないと話をするのがお仕事。
時には飲んだくれ、時にはガミガミと言いたいことをストレートに言ってきた結果か
5年間で気遣いの全くできないガサツな女になってしまったのでありました。

それはさておき。

たまたま私の担当は落葉果樹類全般(りんご・なし・桃・ぶどう等々)だったことから
農薬の名前について、またその危険性についてやたらと詳しくなりました。

大地を守る会では大地を守る会基準で、使ってはいけない農薬が決まっています。

使用禁止になる農薬は、催奇形性・魚毒性等々総合的に判断して決定するのですが、
基本的にはコワイ農薬。しかしそういう農薬は、果樹類の場合は特効薬が多く、
産地担当が農薬に詳しくないと農家が困ってしまうので、自然と覚えたのです。

また、使用禁止にする過程では農家への聞き取りが必須。

「それじゃあちょっと栽培が難しいね」と言われるものを、禁止にはできません。
なぜ難しいのか、代替農薬はないのか等々の話をしているうちに
役割などもなんとなくですが、覚えていきました。

門前の小僧なんとか…ってヤツですね。

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桃やすももに入るシンクイムシという蛾の幼虫がいます。
食べて出てくるとびっくりする虫のナンバーワンじゃないでしょうかしら。
私は古郡さんの無農薬すももを食べてるので、シンクイを何匹か食べてるはずなのですが、
アオムシみたいに苦くないので平気です。シンクイムシは食べてる果実の味がするのだと思っています。



働いてたからほめているのではないのですが、大地を守る会のいいところは、
使ってはいけない農薬を定めて作物の安全性を担保するとともに、
特効薬が使えないゆえに起こる様々な病虫害についてきちんと消費者に伝え、
多少見た目が悪くても、時々すももや桃に虫が入っていても、
ネクタリンにカイガラムシがくっついていても「多少ならOK」とすること。
(最近はそんなでもないらしいですが…)

農薬を少なくするというリスクを農家に一方的に負わせるのではなく、
消費者も流通も按分しますという姿勢と、その理念を理解してくれる消費者がいるというのは
普通の流通には真似できないところ。さすが老舗です(ほめすぎか…)。

そういう大地イズムが身についてしまっているためか「食べる人」の立場のみで
物事を見るのが難しくなっており、時々変なことでびっくりしたりします。

最近びっくりしたのは「ネオニコチノイド規制」の運動。

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「合ピレって効くんだなあ~って思ったよ」とクモの話を教えてくれた山梨家の果樹農家、丹澤修さん。
少ない農薬で作ってたら出荷できるものが減っちゃったので、今年は一剤増やそうと思ってるそうです。
仮にひとつ増えたとしても、農薬を減らす努力を評価することはとても大切なのです。



もともとは、ミツバチの大量死(CCDなのか薬害なのかは微妙なところ)が
ネオニコチノイド系農薬が原因ではないのかと話題になったことが発端です。

ミツバチの大量死の記事は過去ログから↓
六本足の家畜「ミツバチ」と農薬について思うこと
http://hontabe.blog6.fc2.com/blog-entry-19.html
ミツバチの大量死から見える農業の問題
http://hontabe.blog6.fc2.com/blog-entry-25.html


2006年に出版された「悪魔の農薬」というネオニコについての本を読んだ際、
単純に「ネオニコを規制されたら農家は何を使うのかな?」と疑問に思ったわたくし。
これこそが大地イズム。習慣とは恐ろしいものですね

農薬の危険性はそれぞれですが、果樹栽培の現場を行き来していると、
何が本当にキケンなのかを肌で感じることができます。

まず筆頭に挙げられるコワイものは「有機リン系」(サリンの仲間であります)。
この農薬は、その場にいる虫を全滅させ、さらに残効性も高いので、
その後もしばらくよく効いて虫を殺します。つまり残留性も高いのです。

当然ですが人間にも効果があり、有機リンをまいた後の畑を歩くと頭痛がします。
吐き気がして泣きそうになったこともありました。

P7196261.jpg
「6月、無風の晴天日のりんご畑はダーズバンのニオイ」…たぶんダーズバンをまいてるところ。
んで、その後何時間か独特のニオイがします…ってことは畑へ行くと被爆しているってことですね。
アメリカでは農薬をまいた後何時間か畑に入ってはいけないという規制があるらしいのですが、
日本では残留農薬基準値はあれど、使う人のための規制は全くなし。うーん、それでいいんか。



「合成ピレスロイド系農薬」のエピソードも事欠きません。

まいた後、小さなクモが大量に地面に落ちてくると言ってる農家がいました。
「もののけ姫の木霊みたいにさあ、ぴゅ~って糸はきながらたくさん落ちてくるの。
かわいそうだなあって思うけどさ。合ピレは一回入れときたい(※)からしょうがないんだよね」

ちなみに、合ピレは家庭用の殺虫剤の成分。電気蚊取り器の液体にも使われています。
これは低濃度の合ピレを常時室内に放出するという恐ろしい器具なんですよ~、
私は怖くて絶対に使いませんですよ。

※)いろいろな系統の農薬を使用することで抵抗性をつけないようにするのは
防除体系を考える際の基本。
合ピレばっか使ってるとカイガラムシが大量に発生したりすることもありますから、
農薬の選択性の広さってのは、とくに果樹類では大切。

また、ネオニコチノイド系農薬にも問題があるものがあり、現在フランスで規制されている
イミダクロプリドなどは、使わない方がいいと言う研究者もいます。
(ヨーロッパでのネオニコ規制は現在ではフランスのみ)

gazou 020
ちっこい虫食いの穴が開いてますが、これぐらいはOKですよね。
でもこの中にアオムシがいたり、アブラムシが一匹でも入っていると、市場では売れません。
大量の虫害は施肥設計の間違いだとも思うのですが、ちょびっと位許容して欲しいです。
と思うのは、農家サイドから物事を見ているからかな。



農薬の毒性は総合的に判断し、規制後に何が起こるかの議論が絶対に必要でしょう。

アメリカでは有機リン・カーバメート系の安全評価をし直していると聞きました。
以前製造中止になったダーズバンのように(日本ではまだ)、
そのうち有機リン・カーバメート系が作られなくなる可能性はあります。

ならば何を使うのか。
ネオニコ以外に、カメムシやアブラムシに効き安全性の高い農薬はあるのか。

規制されて困るのは農家であるという視点が全くないのはなぜなのかなあ。
アブラムシが一匹でもついていると許さない、カメムシ米は絶対に食べたくない
そんな消費者に、誰が説明し、理解を求めるのかなあ。

ネオニコ規制の話を聞くと、いつもこういった疑問が頭に浮かび、
ひょっとしてやりっぱなし・規制しっぱなしなのかしら…と怖くなったりします。

gazou 006
無農薬の畑に行くと良く見かけるアブラバチのマミー。
これが宅配で来た小松菜なんかについてると「おっ、アブラバチが来た!」と思います。
栽培期間の短い菜っ葉でも、慣行栽培では農薬を10回(成分数)も使うので驚いちゃいます。
虫が一匹ついてて無農薬の方がいいと思うんだけどな。価値観は人それぞれだから何とも言えないけど。



農薬は使わないのが一番です。

しかし使わないと何が起こるのかを、皆がきちんと知る必要がありますよね。
多少虫が食ってても作物がきちんと売れ、喜んで食べる消費者がたくさんいないと、
作り手側が農薬を減らすことなどできないのです。売れないと困るのですから。

農薬の話を考えるといつも感じるのですが、消費者という出口が詰まっているせいなのか、
パイプである流通がうまく流れていないのか、単純に入口の農家が狭いからか、
それぞれの段階で問題があり、スムーズにはなかなか流れないように感じます。

全てがきちんと流れるようになれば、日本の農業も流通も変われるのに。
それまでは、大地を守る会にがんばってもらうしかないか。がんばれ、大地。


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農薬の話

素朴な質問なんですが、
それらの果樹が野生にあったときはどんなだったんでしょう?
やっぱり基本的に虫食いはすごいんですかね?
それとも、人間がおいしく品種改良してきた結果、
虫に食われやすく抵抗性の低い性質になってしまったんでしょうか?

農薬バンバンやるくらいなら、農薬をやらずに、
そこまで甘くなくていい/もっそ素朴な味のままでいい、
と個人的には思ってしまいます。

それと最近は買い物をする際、
「どうしてもそれを食べなきゃいけないか」
と自問自答しつつ選んでいます。
もともと贅沢はしていませんが、
無理を重ねて作ったものを食べる必要はない、と思っています。
農薬しかり、危険な添加物しかり。
まぁそんな人ばかりになると果樹農家さんはほぼ全滅かもしれませんが、
農薬などほとんど無かった昔のように、
滅多に食べられない高級品でいいのかもしれないなとも思います。

カメムシ米等についてですが、
出荷前の玄米段階で光選別機を通すことでほぼ無くせるみたいですよ。
高いのでうちにはありませんが。
現状でも米屋は精米後に光選別機に通しているわけで、
等級には全く意味がないんですから、
これについては比較的容易に対策がとれるように思えます。
しかしJAのライスセンターとかでも
光選別機を導入してないところは多いみたいですね。
なんででしょうねぇ。

Re: 農薬の話

H2さん

こんばんは。


> それらの果樹が野生にあったときはどんなだったんでしょう?
> やっぱり基本的に虫食いはすごいんですかね?

山の梨を食べたことがありますが、とっても食えませんでした。
りんごやスモモの受粉樹が原種に近いんかな~と思いますが、おいしくないですね。

やっぱりサルとかイノシシの食べものって気がします。
で、虫も入ると思いますねえ…シンクイムシも品種改良とともに発生したわけじゃなくて、山の中にいるみたいです。

山際の果樹畑なんか、普通のところよりもよくやられるって聞いたことがありますから。


> カメムシ米等についてですが、
> 出荷前の玄米段階で光選別機を通すことでほぼ無くせるみたいですよ。

えっ、そうなんですか。私は農協出荷の人に、等級が下がると聞きました。
100粒に一粒入るとどうとかこうとか。
食味も落ちるとか聞いたと思いましたが、再度確認してみます。

素人考えですが。

こんにちは。

「多少虫が食ってても作物がきちんと売れ、喜んで食べる消費者がたくさんいないと、
 作り手側が農薬を減らすことなどできない」

うーん、たしかに。そのとおりだと思います。

農薬を減らす努力は各農家さんでできるとしても、
見た目偏重の価値基準(等級)から、
別の価値基準(例えば無農薬・無添加物)を重視する方向にシフトさせていくためには、
個々の農家さんの努力だけでは限界があるように思います。

H2さんのように、個人的には「農薬をやらずに、 そこまで甘くなくていい/もっと素朴な味のままでいい」
という人は自分も含めてたくさんいるはずなんですが、
それがなかなかネットワーク化されない、というのが問題なんでしょう。

われわれ一般の消費者の頭をやさしく改革してくれるような
インパクトのある説得が(上から)示されないかぎり、
むずかしいんじゃないかなー、と思うのは、受け身すぎますかね。
タバコの害をあれだけ喧伝して「健康増進法」なるものまでとおしたんですから、
農薬についても少しは関心を持たせてもらいたいものです。

でも、ほんたべさんのこのような活動にしろ、
総体的な(下からの?)流れとしてはいい方向に向かっているように感じています。

またいろいろ教えてください。
ではでは、またまた v-22

Re: 素人考えですが。

Fuさん

大地を守る会時代に、同僚と「やっぱウチはニッチな市場だよね」とよく話していました。

食べものの価値を価格で測る人たちと、そうではない人たちと、消費者は二極化していると思います。
お金に余裕ができて初めて「安全性」を求められるんじゃないかとも思うのです。
そういう状況の中では主流にはなりえない気がします。

今や安全はお金で買うもの。でも買える人は限られています。

私の田舎のお友達は、そんなに高い食べものは買えないと言います。
東京・大阪・名古屋…そのあたりでは安全にお金をかけてもいいと思う人が多いかもしれないけど、
地方にはそんなにいないことも事実。

そういった状況の中では、Fuさんのおっしゃるようにボトムアップは難しいです。
トップダウンが効果的だと思うのですが、しがらみも多いので、やっぱ大きく動くことはないかもしれませんね。

そんな中で伝えられることは伝えて、考える素材を提供したいってのがこのブログの目的なのでございます。
ちまっとやっていきますので、これからもよろしくお願いいたします。

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プロフィール

ほんたべ

Author:ほんたべ
手島奈緒
おいしい食べものをつくる人を紹介したり応援したりしております。ブログをまとめた著書『いでんしくみかえさくもつのないせいかつ』(雷鳥社)『まだまだあった! 知らずに食べてる体を壊す食品』(アスコム)『儲かる「西出式」農法』(さくら舎)など。現在ハンター修行中。

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