ほんものの真珠は長く輝く

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若い頃はこの地味な美しさがよくわかんなかったですが、
年を取り、キラキラしたわかりやすい宝石類よりも、真珠がいいなと思うようになりました。



15年ほど前、愛媛県の明浜町に、真珠の取材に行ったことがありました。

1月、四国とはいえ凍てつくような寒さの海で、アコヤ貝を引き上げ、
パクっと割られた中から真珠が出てくるのを見て驚いたこと。
ほとんどが色がついていたり変形だったりで、丸く美しいものの数はほんの少しだけなのです。

日頃身につけている真珠が、実は何百・何千のうちのひとつであることを知り、
一つひとつを大切にしなくてはとしみじみと思ったです。

しかし15年も時は経ち、すっかりそんなことを忘れてしまっていたわたくしですが、
先日、明浜で真珠養殖を営んでいる佐藤真珠代表・佐藤宏二さんのお話を聞く機会があり
当時のことを走馬灯のように思い出した次第です。

生きものの体の中で作られる真珠…ひとつとして同じものはない、そんなお話を聞きながら
その不安定さ、頼りなさ、自然の美しさ等々について、色々と思いを馳せてしまいました。

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色々な色合いがあるという見本。中に11mmという大玉がありました。
佐藤さん、20年真珠養殖をやってきて、11mmはまだ3つくらいしか見たことないという貴重品。
真珠の核は最大で7.5mm。通常の真珠層は2mmなので、9.5mmまでならできるらしいです。
高いんでしょうねえ…11mm。



真珠には色々な種類があります。

アコヤ貝の真珠、淡水性の貝が作る淡水真珠、
クロチョウガイが作る黒真珠、シロチョウガイが作る南洋真珠、マベパールなど。
希少価値の高い天然真珠もあるようですが、昨今の真珠は、基本的には養殖。
それぞれに大きさも色も違い、商品価格もグレード・種類によってさまざまです。

アコヤ貝の真珠養殖は歴史が浅く、20世紀に入ってから盛んになりました。
現在日本のアコヤ真珠養殖は、三重、愛媛、熊本、長崎の4県が中心だそうです。

真珠はアコヤ貝という生きものの体内で作られることから、
美しく丸く輝きの強い真珠のためには、アコヤ貝を健康に保つことが一番大切。
それには、海の環境が大きく影響することをご存じでしたか。

美しい海から美しい真珠ができる…当然なのですが、私は思い至りませんでした。
真珠とは、海の汚染に左右されるなんとも頼りない宝石なのでした。

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養殖が可能になるまでは天然の真珠しかありませんでした。
アンティークパールなどは非常に価値が高いというのもうなずける話。
王侯貴族に好まれるのも当然、まさに富の象徴だったわけですね。
養殖という技術で庶民もその美しさを楽しめるようになったのですから、素晴らしいことだと思います。



佐藤さんにお話を聞きました。

「明浜は、石灰質を多く含む山を背にしたリアス式海岸の土地です。
日当たりのいい海に面した斜面には、みかんの段々畑が連なっています。
段々畑の石はメッカラ石という石灰岩で、それはそれは美しい風景ですよ。

その山が、真珠を作っていると言ってもいいんです。

山からのミネラルとカルシウムの供給、そのバランスで真珠の色合いは変わって来ます。
明浜の真珠は、ピンクのなかにブルーが入る独特の美しい色合いが特徴ですが、
これはみかん農家などの協力も得て、山と海の環境が守られていることも大きいんです。

海は山が作るんですよ。カキの養殖などで植林をしている人もいるでしょう。
だからこの土地のみかん農家は、農薬はできるだけ使いません。
また地域の住民全体で合成洗剤もできるだけ使わず、せっけんを使っているんですよ」

明浜町と言えば、カタログハウスなどでおなじみの無茶々園が有名ですが、
地域一体となり海の環境を守る活動をしています。
森つき魚という言葉もあるように、いい漁場には背に山があると言われますが、
真珠やカキの養殖も、同じようなところがいいのでした。

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最近よくみかけるマルチカラーの真珠ネックレス。このブルーあたりは着色しているそうです。
アコヤ真珠で相当濃いブルーのものが売ってることがありますが、それはコバルト照射で作るとか…。
「自分が焼かれるみたいでコバルト照射なんて絶対イヤですね~」佐藤さん。真珠への愛を感じます。


さて、真珠には、ゴールドやブルー、ピンクなどのさまざまな色があります。
しかしこれ、実は脱色や着色をされているものがあるのをご存じでしたか?

貝から出てくるものが、ナチュラルな美しい色合いのものばかりならいいのですが、
なにしろ生きものが作るもの。いろんな色や形の玉が出てきます。
それぞれ違う色合いを合わせるよりも、着色してしまう方がいいことなどから、
脱色・着色は業界の常識なのでした。

そんななか、できるだけナチュラルな色のものを大切にしたいと佐藤さんは言います。

「脱色したり色を付けたりしても美しさは変わらないんだけど、
言ってみれば、その真珠にとっては、それが美しさのピークなんですよ。
でも、ナチュラルな真珠の色や輝きは、そこからがスタートなんです。
年を経てくると色合いは少し変わったりもしますが、輝きは長い間変わらないんです。

私のところでも着色はするけれども、ナチュラルな色が好きなので、
できるだけしないようにできればいいなと思っている。
そういう色のものができるには、海がきれいじゃないとダメなんですよね」

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佐藤真珠株式会社・代表 佐藤宏二さん。真珠の話を聞くと愛情いっぱいの答が返って来ます。
佐藤真珠では生産から販売までを一貫して手掛けています。まさに顔の見える真珠ってことですね。


そして、丸い真珠よりもバロック真珠が大好きと言う佐藤さん。

「真珠の素になる核を入れるとき、ショックで死んじゃう貝だっているんですから、
真珠を作るっていうのは、アコヤ貝にとっては大変なことなんですよ。

貝の体内では真丸のものよりも、いびつな形のものを抱え続けるのは辛いはず。
何かがうまくいかなかったから、バロック真珠になってしまうんだけど、
カルシウムを分泌させて核をまいていく途中、貝自身が痛いだろうなあって思うんです。
突起があって、ちくちくするかもしんない。でもすごくがんばってまく。

だから、バロックを見るたび、アコヤ貝の根性を感じるんです。

通常真珠の層は2ミリくらいなんだけど、バロックは部分的に3ミリとかになったりする。
がんばってますよねえ、ほんと。
丸い真珠の方が価値が高いんですが、私はバロックが好きなんです。
エネルギーが強いような気がするんですよね。きっと根性が相当入った真珠ですよ」

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15年ほど前に佐藤さんのところで買ったバロック真珠のネックレス。
たしかにいびつであちこち変形していますが、これが何とも言えない風情と個性を醸し出しています。
改めて見ると美しいですねえ…。写真では黄色っぽく見えますが、本来はピンクがかった明浜色です。



テレビショッピングで、安価な真珠がよく販売されていますが、
着色・脱色は当然されているはず。悪いことではないのですが、程度の問題はありそうです。
せっかくアコヤ貝が一生懸命作った美しい宝石なので、ナチュラルなものが欲しい、
でも着色や脱色は素人にはわかりません。知ってしまうと気になります。

ダイヤモンドもルビーも地球が作った鉱物ですが、真珠は唯一、生きものが作る宝石。
その頼りなさも不安定さも、全てが真珠の魅力なのだと今回ひしひしと感じました。

来年はブルーのバロックのネックレスを買おうと思ってしまったわたくし。
根性が全く足りないので、真珠の根性をもらって立派な人間になれるといいなと思っています。


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No title

こんにちは。
また渾身のレポートですねー。

> 海は山が作る。
カキの養殖の例がありましたが、
たしか宮城の気仙沼のほうでカキ漁師さんたちが川の上流の山に落葉広葉樹を長い間植林していてかなりの効果が上がっている、なんて記事を何かで読んだような気が・・・。
またこちらもうろ覚えですがその腐葉土の「ナントカ酸」が鉄と結びついて「ナントカ酸鉄」となって海の栄養分となるとかならないとか(めちゃくちゃいいかげんな話ですみません)。

大量の鉄分が海水中の植物プランクトンのエサとなり、それが今度はカキなどの動物のエサになる、という寸法だそうですね。
昨今話題になってる山の水源地帯を外資にバンバン買われているなんて話、ちょっとゾッとしますです。

それにしても、真珠、きれいですねー。
写真だってとってもきれいに撮れてる思いますが、やっぱりゲンブツはぜんぜん違うんでしょうね。
こんなにいろんな色や種類があるなんてはじめて知りました。宝石などとはまったく縁遠い人間ですので・・・
今度、真珠を付けているご婦人を見かけたら胸元をジッと見てしまいそうです(イヤ失礼)。

ではでは v-77

Re: No title

Fuさん

こんばんは。ご訪問ありがとうございます。

> たしか宮城の気仙沼のほうでカキ漁師さんたちが川の上流の山に落葉広葉樹を長い間植林していてかなりの効果が上がっている、なんて記事を何かで読んだような気が・・・。

宮城のカキとか厚岸のカキとか、そういうところで植林やってますよね~。
海は森の恋人とか言ってる地域もあったような…どこだったか…?

広葉樹の森から出てくる水とミネラルがプランクトンを育てて、それが小魚を育てて…っていうような、私もうろ覚えなんですがそんな感じでした。
だから護岸工事なんかやっちゃダメで、合成洗剤も富栄養化につながるからダメって話です。


> 昨今話題になってる山の水源地帯を外資にバンバン買われているなんて話、ちょっとゾッとしますです。

コワイですよね~。
最上川上流の山をシンガポール資本に買われてたって記事が新聞に出てたけど、どうなっちゃうの~?って感じです。
日本人って水に対して無頓着なのかもしれませんねえ。
当たり前にあるから、大切にしないのかも。

私自身も、森つき魚の話を知るまで、河と海がつながっていることをぼんやりとしか認識してなかったので、人のこと言えないんですけど。


> こんなにいろんな色や種類があるなんてはじめて知りました。宝石などとはまったく縁遠い人間ですので・・・

女性にとっては、他のものと違って真珠はひとつくらいもっといた方がいいわよね的な宝石なので、だいたい一本ネックレスを持ってるもんなんですよね。
でも買う時は大して意識して買ってないんです。
なんか「これでいいかあ…」位の感じ。

知ってしまうと、ちゃんと選びたいなあと思いますが、時すでに遅し…。

今回ご紹介した佐藤さんに言われたのですが、日本で国産と言える数少ない宝石なんですって、真珠。
言われるまで気づきませんでした。
何だか少し、大切にしたい気持ちが心の底から湧きあがって来ました。

これからは買うなら真珠かも。

No title

ほんたべさん、こんばんわ。真珠は海で作るものですから、まさか山が関係あるとは思っていませんでした。住民の皆さんの努力も必要なのだなぁと感じています。

>バロック。
これは初めて見ました。言われてみると、味わいがあります。でも、日本人は綺麗なものを高級と感じてしまいますので、こういうのはもったいないなぁと思います。同じ貝が生み出したものなのですけどねぇ・・・

Re: No title

駆動さん

こんばんは。

真珠の色を山が作るっておもしろいですよね!
私も、聞いてびっくり!って感じでした。
カキの養殖などではよく聞く話なのですが…やはり貝なので同じだったのでsね。

> >バロック。
> これは初めて見ました。

まんまるで画一的な規格のものは、ただ美しいだけで個性がないのでつまらない気がするのです。
それぞれの真珠が一つ一つ違ってて、自己を主張しているバロックが好きな自分としては、バロックが安くて良かった!ってなところもあるのですが…。

まあでも正式な場所にはなかなかしていけませんよね。
やっぱカジュアルなものということになっちゃうのでしょうねえ…。

プロフィール

ほんたべ

Author:ほんたべ
手島奈緒
おいしい食べものをつくる人を紹介したり応援したりしております。ブログをまとめた著書『いでんしくみかえさくもつのないせいかつ』(雷鳥社)『まだまだあった! 知らずに食べてる体を壊す食品』(アスコム)『儲かる「西出式」農法』(さくら舎)など。現在ハンター修行中。

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