国産の小麦の話

s麦イメージ
5月、田んぼに麦の穂がゆれるのを見て「なんで今頃稲が?」と聞かれることがあります。
そんな風に言われるほど、麦は日本の風景の中から失われているということなのですね。
大麦や小麦など、二毛作で作ってる地域はたくさんあるんですけど…。



小麦価格が上昇しております。

2007年から2008年、オーストラリアの旱魃が原因だったと記憶していますが、
小麦価格がじりじりと上がり、小麦製品の価格も上がったことがありました。

当時スーパーでインタビューされた奥様方が「小麦が上がると困っちゃうのよね」と
おっしゃっているのを見て「小麦がなかったら米を食べればいいじゃないか!」と
憤ったのは私だけではないでしょう。全国の米農家もそう思ったはず(違うか…)。

その際のメディアの方向性が「国産小麦の作付をもっと増やそう!」ではなく、
「余ってる米の米粉を使おう!」だったことがさらに不思議でたまらなかった私ですが、
その後米粉が定着したので、それはそれでいいことかもなあと思っております。

どこの米粉かわからないけど、きっと在庫(政府備蓄とか)の米を使ってるんでしょうから。
在庫が減るのはいいことですもんね。

むぎふみ
秋まきの麦の秋の風情。ちょびっと出てきたところです。
冬の間麦ふみを2回位するそうですが、実際には踏むのではなく管理機で中耕すると聞きました。
やっぱり踏まないといい麦ができないそうです。北海道は雪に埋もれるので、踏んでないらしいです。



さて先日、小麦と大豆を作っている北海道の農家と話をする機会がありました。
色々聞いてものすごく驚きました。小麦って、ほんとにほんとに安いんですね。

小麦のデータを見てみます。

2011年概算で、小麦自給率は11%。2010年が14%ですから、下がっております。
昨年は北海道が大変な年で、小麦も不作だったそうですからそのせいかもしれません。

日本の小麦はグルテン含有量が低いためパンなどには向かず、
国産小麦は主に麺類で使用されています。麺類における国産小麦の割合は60%。

埼玉や群馬県などではまだ二毛作を営んでいる地域もありますし、
四国では国産小麦のうどん作りを積極的に推進しているところもあります。
中力粉類についてはかなり自給できていると言ってもいいでしょう。

しかしパスタやパンなどの小麦はほぼ輸入です。

強力粉は、北海道でいろいろと新品種が出てはいますが、いかんせん高くつきます。
パン用粉における国産率はなんていうか、えっ、ほんとですかって感じの0.6%。
戦後安価なアメリカの余剰小麦を食べ続けた結果がこれ。
アメリカの戦略は間違ってなかったわけですね。さすがです。

ringo 011
国産小麦のパスタもあるんですが、なんというか、ゆでるとやっぱりうどんの味。
デュラムセモリナ粉とは全く違うものですね。フランスパンなんかは中力粉でもおいしいのですが、
パスタは別の世界の食べものと思った方がいいかもしれません。



さて、小麦を作り手側から見てみます。

小麦も大豆と同様、入札で価格が決まります。
この入札価格、農家との取引価格には全く影響がないのですって。知りませんでした。
大豆のことを書いた時、私は勘違いをしていました。申し訳ありません。

小麦を栽培した農家へ支払われる金額を聞くと、1俵1,800円程度という答え。
一反6俵くらい取れるそうなので1反約10,000円。べらぼうに安いです。

で、これに交付金が加算されます。今年からしくみが変わるので何とも言えませんが、
去年までだと1俵7,500円位出たそうなので、1俵9,000円程度の収入になります。
うーん、この数字、どうでしょう。安いと思うんだけど。

これは一般の価格なので、契約栽培の場合もう少し良くなるとは思うのですが、
まあ米や野菜を作った方が儲かりますね。それは確実です。
他に主力作物がある農家が、余った土地で小麦を作る…そんな感じでしょうか。

ライ麦
草生栽培の果樹の下草に使われることもあるライ麦。炭素分が多いので植えてたら、
いつの間にか勝手に芽が出るようになったとすもも農家が言ってました。
収穫するとちゃんとしたライ麦粉ができるので、パン屋さんが持ってたりしてるそうです。
麦って穂の形がいろいろですが、ライ麦って雑草みたいですね。



さらに、有機小麦の数字を見てみました。価格は契約栽培がほとんどだと思うので、不明です。

有機麦(小麦だけじゃないかも)の平成20年度の国内の格付実績は883トンでした。
海外で格付けされた麦は83,418トン(海外で有機JAS格付を行い輸入したもの)。
ということは、国内で流通している有機JAS認証取得麦の国産割合は1%。

少ないですね。なぜこんなに少ないのか。
小麦の有機・無農薬栽培が難しいのには理由があります。

小麦には、赤カビというカビがつきます。このカビ、発がん性物質です。
無農薬で栽培すると、収穫時の天候によっては赤カビがつくことがあります、
赤カビの小麦をはじくと、歩留まりが非常に悪くなります。

有機という付加価値商品のため、多少高めで取引をされているとしても、
正品率が低いのでは割が合わないでしょう。有機には経費がかかります。
何しろ除草剤が使えないのですから。大面積で除草剤が使えないってことは、
人を使うってことです。パートの人件費だけでどれだけかかるか…恐ろしいですね。

gazou 003
貴重な北海道産・無農薬栽培のハルユタカ。小麦って変な形だよなあ…。
麦には秋まきと春まきとありますが、ハルユタカなどの強力粉はほとんどが春まき。
秋まきは中力粉に向いている=二毛作の小麦はうどん粉って感じのようです。



小麦はそもそも乾燥地帯の作物のため、海外ではカビの心配はあまりありません。

日本では、ちょうど収穫時期が梅雨時になることもあり、カビの生える割合が高いのです。
梅雨前に収穫できる地域でしか二毛作をしないのは、そういうことも理由のひとつ。
農薬を散布すればカビは防げますから、有機・無農薬の小麦が少ないのはしょうがないのでした。

今や小麦は「国産ってだけでありがたいもの」になりつつあります。
それはどうなんでしょう。せめて、「有機がありがたい」程度になって欲しいです。
米も大切ですが、小麦栽培にもう少し税金を充てる必要があるような気がします。

gsazou 031
自家用の小麦を天日干ししているところ。私はこの小麦をいただいています。
中力粉なのでうどんに向いているのですが、どっしりと重いレンガのようなパンも作れます。
うどんを作ると灰色がかったうどんになるのですが、国産中力粉は色がつくというので、
オーストラリア産が好まれるってこともあるそうです。いいのになあ、灰色のうどんでも…。



2010年にはロシアが小麦を輸出禁止にしたこともあり、
昨年の旱魃の影響で、世界的に穀物の価格が上がっています。

大豆・小麦・トウモロコシが高騰すれば、卵・肉・牛乳・パン・パスタなどの価格が上がります。
価格が上がるだけならいいけど、もし、日本への輸出を止められたら?

時々身の回りの野生動物を見ては「あれは食べられるかしら」とか考えちゃったりする私。
ニッポンの食糧は、非常に脆弱な基盤の上に成り立っていることを忘れてはいけないのです。

さて、私の自衛策は、とりあえず区民農園です。野菜だけですが、自給を目指します。


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No title

出来るだけ毎年 5月頃 出雲に蕎麦を食べに行くのだけど
出雲駅からバタデンに乗って
出雲の麦畑もエエもんですよ。
多分ビールになっているのだろうけど・・
じゃぁ ビールも値上げか?

Re: No title

もりりん

ビール麦は結構国産のものがあるらしいですよ。

小麦のほか、二条大麦・六条大麦など麦茶用の大麦とか、ビール用の大麦とかも二毛作で作ってるみたいです。
どこで何を作ってるか調べないとわからないのですが、
日本のビールはコーンスターチとか入ってるから値上げしないんじゃないでしょうかしら。

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Re: No title

あっ!ほんとですね。
申し訳ありません。ご指摘ありがとうございました!

本文も修正しておきます。
本当にありがとうございました!
プロフィール

ほんたべ

Author:ほんたべ
手島奈緒
おいしい食べものをつくる人を紹介したり応援したりしております。ブログをまとめた著書『いでんしくみかえさくもつのないせいかつ』(雷鳥社)『まだまだあった! 知らずに食べてる体を壊す食品』(アスコム)『儲かる「西出式」農法』(さくら舎)など。現在ハンター修行中。

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