すももの花が咲き始めました

R0013126.jpg
桃に花粉をつけたところ。めしべのあたりに黄色い花粉が見えます。
桃は花粉のない品種があるので、受粉作業をする必要のあるものとそうでないものがあります。
写真提供・市川泰仙



三寒四温と言いますが、寒くても花粉症はバンバカ出るように、
果樹類のつぼみは確実に膨らみ、知らない間に春が訪れているようです。

店頭に並ぶ果物を見て「ああ、もうこんな季節」と思う方は多いと思いますが、
花を意識している方はあまりいらっしゃらないかもしれません。
実はその年の果物の作柄は、この季節、3月末から5月中旬までに決まります。

果物の花で一等最初に咲くのは梅。今関東ではそろそろ散り際です。
今年はけっこうダラダラと長い間咲いていました。こういう年は不作だとか言います。
その次がすももです。山梨では去年より約1週間遅く、来週末位から開花のようです。

その後、サクランボ、桃、GWにはりんご、梨と続いていきます。

貴陽の花
大玉でとてもおいしい品種「貴陽」の花。すももの花って清楚な感じです。
貴陽は花が早いので遅霜にやられやすく、ある農家は受粉を8回くらいやるそうです。大変だあ。



さて、まさにこれから開花する、すももという割合とマイナーな果物は、
実は自分の花粉で受粉できる品種がとても少ない果物。
基本的に違う品種の花粉じゃないとうまく受粉せず、結果してくれません。
※自分の花粉で実が着くもの→自家受粉、他の花粉で実がつくもの→他家受粉と言います

そのため、すもも農家は、きちんとした実を作るために「受粉」という作業を行います。

まれに他品種の混植で実をつける人もいますが、ついたりつかなかったりで、
けっこうリスクの高い栽培方法…っていうか、あんまりプロの人はしないかも。
いいすももを採るためには、ひと手間かけねばならないってことですね。

受粉とはつまり、花に他の花から採った花粉を人間がつけてやること。
すもも農家の春一番の作業は、受粉樹からそのための花粉を採ることなのでした。

花粉
すももの花粉の写真はないので、桃の花粉をご紹介。思いっきり背景にピントがあってます(泣)。
この花粉は冷蔵庫に入れておけば少しの間保存することができます。



山梨の果樹園に行くと、道っぱたに赤い葉っぱの樹が植わってます。
これがすももの受粉樹「ハリウッド」。真っ赤っかな実がなります。
花粉が多く他の花に先駆けて花が咲くため、だいたいこの樹を皆が植えています。

このハリウッドの実、山ほどなるんですが、なんていうか渋くておいしくありません。
ってことで誰も食べず、小鳥がつついてはボトボト落っこちています。
果実酒にするとその渋みがうまそうなのですが、いまだチャレンジならず…
もったいないから、いつかやってみよう。

花粉を採る作業は、まず花を摘むことから始まります。
花を摘んだ後、花粉が詰まっている袋から花粉を採り出すため、機械に入れます。

わたくし、すもも農家に聞くまで知らなかったのですが、
花粉って袋に入っているのでした。
その袋を開けてやんないと、花粉が出てこないのです。すごいしくみです。

触ると出てくる黄色い粉が花粉だと思ってましたが、あれは袋なのでした。
不思議です。生命の神秘です(感動しすぎか…)。

花
花粉の袋を採取された後の花…なんか抜け殻っぽいのは、命の元が失われたせい?

Fs-07124-1-5.jpg
すももの受粉の写真はないので、桃の受粉をご覧ください。
毛ばたきでさら~っと花をなでていきます。話しかけるとどこまでやったかわかんなくなります。
黙々とやるのがコツです。



すももは自然界では虫が受粉をする作物。
ってことは、虫は生まれながらにして、袋を開ける方法を知ってるのです。
それぞれの花が特定の虫と契約を結んでるってのがわかる気がしますよね~。

さて、虫にまかせると不作になってしまうため、人間は機械で袋を開きます。
そこから出てきた花粉を毛ばたきにつけ、花に一つ一つ花粉をつけてやります。

私はりんごの受粉をやったことがありますが、
どの花にどこまで花粉をつけたか途中でわからなくなり、
大量につけすぎて怒られたことがあります。

受粉とは、簡単なようで難しい作業なのでした。

R0011482.jpg
りんごの花は中心の花が最初に咲き、その後回りの4つが咲きます。
中心花に耳かきみたいなはたきで花粉をつけるのですが、回りの花につけると全部実になります。
そして後日、摘果作業が大変になります。わたくし一度全部につけてしまい、怒られました。
写真提供・市川泰仙



さらに、受粉は天候にも思い切り左右されるのです。
途中で雨が降り出すとめしべが雨にぬれるのでダメ。また受粉後15度以下になるとダメ。

受粉に適当な温度と湿度はちゃんと決まっているのですね。

この作業で受粉をしても、4月上旬に低温が来たり霜が降りたりすると、
めしべが焼けて実にはならなくなります。去年のすももが不作だったのは、
3月に急に来た低温が原因だったと聞きました。急激な温度低下もダメなのですね。

とはいえ、こればっかりは天候にまかせなくてはなりません。
あんまり意識されていないのですが、そもそもすももとは、不安定な作物なのでした。

授粉した貴陽
受粉して小さな果実がついた状態のすもも。
これもこの後の天候次第で生理落果したり、病気になったり虫に食われたりします。
しかしこの小さな緑色の実が、大きくて甘酸っぱいすももになるんだから不思議ですよね~。



6月下旬、成長したすももの出荷が始まります。

地味~な感じで店頭に並ぶその品種、だいたいスタートは「大石早生」ですが、
この一個のために咲く花は、おそらく100以上。

果実をひとつ作るためには、大いなる無駄、しかし意味のある無駄が必要なのでした。

消費者には最終結果しか見ることができないのが現在の流通ですが、
完成までのプロセスこそがおもしろくて楽しいのに、もったいないよなあと思うのです。

いつか、みなさんに畑をご案内できればなあとか考えています。


★現在ブログランキング参加中です!
↓プキッとクリック、ご協力お願いいたします!



こちらもよろしくお願いいたします!
にほんブログ村 環境ブログ 有機・オーガニックへ
にほんブログ村

関連記事

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

オーガニックってエコかも!

日本の食料事情を考えると、実は石油を食べてるんじゃないかと思えるのです。

なぜなら、作物を育てる化学肥料にせよ、病害虫を防ぐ薬剤にせよ、それらは石油から作られているからです。

さらに、田畑や農園を耕す機具にしても石油がなければ動きません。

そして、出来上がった作物を、市場に届ける輸送手段さえも、石油が必要なのです。

こう考えると、究極の表現として、我々は石油を食べているという表現になる訳です。

そうすると、有機農法のオーガニックは、石油の消費を低減するエコな農法に他ならないと思うのです。

貴重な化石燃料を浪費しない農法という考え方も、消費者にうまく伝えることができれば、すごく効果的なメッセージになると思います。

とにかくオーガニックを応援したくなっちゃいます。


Re: オーガニックってエコかも!

鳩ポッポさん

> 日本の食料事情を考えると、実は石油を食べてるんじゃないかと思えるのです。

そうですね。その通りだと思います。
米を一俵作るのにドラム缶何個か分の石油がいると言ってた人がいました。
(不耕起栽培をしている米農家でした)

石油を使って田植えをして、石油を使って米を乾燥しています。
入っている袋もポリですから、石油からできたものでした…おお!
こう考えると米も大変石油を使っていますね。

> 貴重な化石燃料を浪費しない農法という考え方

昨今は大規模化の方向へ移行しているので、化石燃料使用が前提の農業で、
そうしないと競争力がないと政府の偉い人は皆言います。

若い儲かってる農家なんかもそういう言い方をする人がいます。

でも、小規模で省力化の有機農業であれば、石油はそれほど使わないでも可能です。
こういった農法で栽培された安全でおいしいものを、買う人がもっと増えればいいんですけど。
まだ時期尚早なのかな~。

> とにかくオーガニックを応援したくなっちゃいます。

鳩ポッポさんがオーガニックを応援したくなるような記事をがんばって書いてみます。
コメント、ありがとうございました!


No title

こんにちは。

たかがすもも、されど・・・な記事でした。
気の遠くなるような集中を要する作業を経て、店頭に並んでるんですねー。
春のこれからの時期は、農家の方にとってはそれこそ胃の痛くなる日々、というわけでしょうか。
すももに限らず、何気なくスーパーに並んでる果物を見る目が変わりそうです。

果物の酸味の苦手な僕でもプラムの甘酸っぱさは魅力ですね。
いつまでも種しゃぶっていたいっていうか。

ではでは

Re: No title

Fuさん

実はすももの酸っぱいの、私は苦手なのです。味覚がお子ちゃまなので。
で、すもも農家に呆れられてます。すっぱいの食べたくないとか言うから。

樹で思い切り熟してるヤツしか食べられなくて、
そしてそういうものはスーパーには売ってないので、すももはもっぱら畑で食べてます。

ボトボト落っこちたり病気になったり、畑に行くといろんなすももを見ます。
樹からもいで食べるとき、こんなのができるなんて奇跡のようだなあ…と時折思います。
とくにそれがすげえおいしかったりすると。

それぞれの実に物語があるんでしょうねえ。
すももはかわいらしいので、そういう妄想にふけることもあります(笑)

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます
プロフィール

ほんたべ

Author:ほんたべ
手島奈緒
おいしい食べものをつくる人を紹介したり応援したりしております。ブログをまとめた著書『いでんしくみかえさくもつのないせいかつ』(雷鳥社)『まだまだあった! 知らずに食べてる体を壊す食品』(アスコム)『儲かる「西出式」農法』(さくら舎)など。現在ハンター修行中。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
カレンダー
07 | 2017/08 | 09
- - 1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31 - -
リンク
FC2ブログランキング
FC2ブログランキング参加中

FC2Blog Ranking

フリーエリア
検索フォーム
RSSリンクの表示
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR