昔ながらのエコな育苗床―踏込温床を見学

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春まきのネギが芽を出しています。まだ種の皮をかぶってます。美しい緑色ですねえ。
この細っこい葱が、土(肥料含)と太陽と水だけであんなに大きくなるんだから不思議です。
野菜の芽を見るたび、いつも思います。



1686年、徳川五代将軍・綱吉公の時代に、
「野菜初物禁止令」というお触れが出されたことを御存じでしょうか?

このお触れ、かなりスゴイです。江戸の人々の初物好みに合わせ、
農民が米・麦などの基幹作物よりも、初物の栽培に力を入れたことから、
それを防ぐために作られたお触れでした。

いつの時代も儲かる話に敏感な農民はいるんですね~。
知り合いの色んな人の顔がなんとなく思い浮かびます。

野菜初物禁止令には、筍は4月、ナスは5月よりも先に出荷してはいけないと書かれています
(いずれも旧暦)。

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古式ゆかしい踏込温床。枠の周りを稲ワラでさらに囲っています。
より温度が高くなり保温性が増すらしいけど…。完全に囲ってあるので、温床ではなく堆肥化中?

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さちこさんのハウス内に作られた踏込温床。木枠の中には落ち葉がみちみちに詰まって発酵中。
その上に育苗パレットを置いて種まきし、ビニールをかけて温度管理します。
育苗パレットの黒いのはモミガラ燻炭。育苗土は購入培土。
購入培土は高いので燻炭で増量し、保温性も高めてます。次年度、この温床はリサイクルされます。


加温ハウスで促成栽培できる現代なら簡単なことですが、時は江戸時代。
どこの筍をどうやって4月に出したのか。それよりもナスの5月ってどういうことだ。
そんな疑問がわき上がります。

で、江戸時代の農民が何を使っていたか。

苗は堆肥の発酵熱を利用した踏込温床を利用し、本圃に定植してからは、
油紙でトンネル栽培をしたのではないかと元会社の上司が推測しておりました。

時代劇でよく雨降りの日にお弁当を包んでる油紙。買えば高価なものだったらしいですが
強度も高く、はっ水性があり、さらに保温能力も高そう…日照不足が気になりますが。
トンネルの枠は竹を割いて作ったのでしょう。自由自在に曲がります。

木と紙で家を作る日本人ですから、工芸品のように美しいトンネルだったんじゃないでしょうか。

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温床の材料、落ち葉・米ぬか。育苗土にすることを鑑みて、貝化石も入れています。
落ち葉はあちこちから拾ったもので、割合とすぐに集まるとのこと。里山が近くにあるといいですね。


しかし、恐るべし、江戸の農民の知恵。

初物を食べるためなら金に糸目をつけないという庶民がいてこそなのでしょうが、
誰が最初に思いついたのか。きっとすんごく儲かったんでしょうね。
そのせいでしょう。このお触れ、全く効果がなくてその後何度も出されています。

それにしても、筍の4月出荷って何だ。当時は相当寒かったはず。
これをどうやって栽培したのかは不明です。
竹林の地温を上げるために何かしたのかな~?誰か知ってたら教えてください。

さて、重油や電熱線を使わずに熱を発生させ、苗作りを可能にするしくみ「踏込温床」。
江戸時代ならぬ現代でも、利用している人はたくさんいます。

先日茨城県のさちこさんが作ったと聞き、見学に行きました。
さちこさんの記事は過去ログから↓
「農」のある暮らし 茨城県 さちこさん(2009年新規就農)


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温床本体の温度は何度? 21度でした。外気温は15度位だったので、
べらぼうに高いわけではなく、朝は0度位に下がっていることもあるそうです。

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温床のなかをちょびっとのぞいてみました。放線菌が繁殖しています。
がんばれ~微生物のみなさん!



踏込温床は、落ち葉を利用して発酵熱を生み出し、加温するしくみです。
種を温床の上にまき、あったかくして発芽を促し、育苗を行います。

資源は落ち葉と米ぬかのみ。CO2を発生させないエコな育苗法で、
有機農業を営む農家はよく利用しています。
育苗後の温床は翌年の培土にする人も多く、
一粒で二度おいしい育苗法とも言えるかもしれません。

しかし落ち葉をゲットしてどこかに保管し、枠を作って踏みこんで温度を上げて…等々
手間と暇が大変かかるため、手広くやってる大規模農家でやってる人はあまり見かけません。
というか、できないでしょう。まく種の数が多すぎるので、広大な温床が必要です。

費用対効果的に、小規模な農家じゃないと合わないしくみなのですね。

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来年の育苗土(去年の温床)。踏込温床は使い切りにならないところがさらにエコですね~。


最近よく感じるのですが、少数多品目を栽培している農家の方が、
アホほど儲かることはないかもしれませんが、単一作物の栽培を行うよりも
リスク分散という点でメリットが多いんじゃないでしょうか。

また、そういった規模で農業を営むと、栽培のあちこちで「エコ」な取り組みが可能です。
踏込温床しかり。コンパニオンプランツしかり、自家採種しかり。
(その分手間がかかるので、時間給換算すると実は赤字かもしれませんが)

国策としては大規模・集約化を推進しているし、その方が確かに利益が上がりますが、
応援したいのはローカルな小規模農家…消費者の気持ちとしてはそんな感じです。

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見学のお礼にキヌサヤの支柱立てをお手伝いしました。
キヌサヤは第一花が咲いたら追肥をし、支柱のてっぺんに来たら先を摘み取り脇芽を出し、
さらに追肥をしていけば未来永劫採れると西出さんに教わりました。そんなことできるんかな~。
CECの低い土壌でそんなことしたら、なんとなく病気にかかって途中で枯れそうです…(泣)


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支柱立ては若いもんにまかせて、オバサンは撮影と支柱運び。働いておりません。
さて算数のご質問。24mに10本の支柱を均等に立てる場合、何センチ間隔に立てればいいでしょうか。
240÷10をしてはいけません(しましたけど)。二度手間になります。9で割るのです。


しかししかし。

以前、農業分野におけるCO2排出量を計算したことがありました(私ではなく同僚が)。
小規模農家の栽培は、実はCO2削減になっていないという結果が出てきます。
大規模集約化農業の方が、作物一つ当たりのCO2排出量ははるかに少ないのです。

冷静に考えれば当然の結果なのですが、自分としてはなんとなく「うっ」と来る話。
経費からCO2排出量を導き出すしくみでは、ローカルな小規模農家を評価できないのですね。

多様性、環境保全、生態系の安定…数値には換算できないメリットがあるはずなのですが。
そこんとこを評価する誰もが納得するしくみが作れないのかなと最近よく思っています。


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こんばんは

秋に大量に出る落ち葉をポリバケツに集めて、何層かに分けて米ヌカまぶして足で踏み固めて腐葉土づくり、なんてこともやったことあるんですが、これを「種まき用土」として使用するなんて、初めて知りましたです。
あれを大量に作るなんて、相当手間かかるでしょうねー。頭下がります。

>旧暦4月の筍の出荷

江戸時代、竹林に速効性の肥料である干鰯(ほしか)を入れた、なんて記述がチラホラ見えますが、なんか関係ありますかね。

ではでは v-22

Re: こんばんは

Fuさん

> あれを大量に作るなんて、相当手間かかるでしょうねー。

そうなんですよね~。手間暇かけるエコな取り組みです。

> 江戸時代、竹林に速効性の肥料である干鰯(ほしか)を入れた

あっ、これは肥料ですよね。
関係あるんじゃないでしょうか。ありがとうございます。

肥料入れてもOKな位儲かったってことですよね。
儲からないと肥料なんて入れないもん。

戦後、水田に干ニシンを差し込んで速効性のチッソ肥料にしたと聞いたことがありますが、
干し魚は昔から肥料になってたんですね~。

たけのこ

タケノコって、前年の秋から冬にかけて、
地下ではすでにかたちになって準備してるそうですよ。
だから掘れば小さいのが収穫できますし、
南向きで暖かいところで、
さらに落ち葉や堆肥で地温を高くしたりして、
暮れに収穫するとこもありますよね。

当時はいまより寒かったとはいえ、
旧暦の4月ってことは今年ならざっくり5月ですし、
南向きで暖かいところなら、あまり特別なことをしてなくても、
収穫できたんじゃないでしょうか?

毎年GWに帰省して、自分ちの山にタケノコ掘りに行ってます。
あまり上に出てないのを見つけるのが楽しいので、
暖かい年はもう出まくっていて今ひとつ面白みに欠けます。
ちなみに初物はイノシシ君が召し上がります。

Re: たけのこ

H2さん

> さらに落ち葉や堆肥で地温を高くしたりして、
> 暮れに収穫するとこもありますよね。

ええ~そうなんですか。知りませんでした。

> 毎年GWに帰省して、自分ちの山にタケノコ掘りに行ってます。

実家はどちらなのですか?

筍ってあんまり意識してないので、いつ頃から出てくるものやら…。
孟宗竹だったり葉竹だったり、いろんなのもあるし。
早く採れるのは何だろう…?私はいつも葉竹を食べてるので…。
(葉竹は少し遅くて6月ごろに出るのです)


> ちなみに初物はイノシシ君が召し上がります。

ははは。いいところを持って行かれそうですね。

Re: たけのこ

「早出し筍」で検索してみてください。
温暖な地方では10月とか11月というのも見つかりました。
地方にもよりますが、商売として考えるなら孟宗竹は3月までが勝負みたいですね。

>実家はどちらなのですか?

上関原発で話題の山口ですよ。うちは西の方ですが。
うちの竹林(東向き)は自家消費なので特別なことは何もしていませんが、
早ければ3月下旬、遅くても4月半ばには人間様もタケノコにありつけます。
竹の種類はごく一般的な孟宗竹です。
残念ながらうちの山にハチクは生えてないので、将来どこかに植えたいなと。

たくさん採れたときは、
茹でて灰汁抜きしてから細切りにして天日乾燥させて保存したりもします。
数年は保ちますから、水で戻してから煮付けます。
またちょっと違った食感で、これはこれでいけます。
お酒は飲みませんが合うかも。

Re: Re: たけのこ

H2さん

> 地方にもよりますが、商売として考えるなら孟宗竹は3月までが勝負みたいですね。

ふい~。早いですねえ。
じゃあ5月出荷でも大丈夫か。

> うちの竹林(東向き)は自家消費なので特別なことは何もしていませんが、
> 早ければ3月下旬、遅くても4月半ばには人間様もタケノコにありつけます。

西日本の筍って早いですね。
朝採りじゃないと劣化が早いので、こちらに来るにはちょっと厳しいのかな。
チルド航空便とかで来ると高いでしょうね~。


> 茹でて灰汁抜きしてから細切りにして天日乾燥させて保存したりもします。

干し筍、いいですねえ。
私の場合はもったいないので一度に食べず冷凍し、最終的には冷凍焼けを起こして廃棄…
というパターンが多いです(泣)

リスのように備蓄はするけど、忘れてしまうのが原因です。

たけのこ

農業のことは「門外漢」ですから、さっぱりですが
食う方だけは、シッカリしている癌ダムです(苦笑)

この記事を読んで、
京都の たけのこ料理専門店「錦水亭」の事を思い出しました。
池畔にたたずむ庵の風情も(全室別棟です)
たけのこの刺し身もある「のこ尽くし」という
たけのこのフルコースも最高ですが

裏山の専用竹林はふかふかのベッドのようにしてあるので
この季節に、こんなに柔らかなたけのこが出来るのだ…
と、お店の方は言ってらっしゃいますが

HPにも書いてありましので、ご参考に。
http://www.kinsuitei.co.jp/3contents/index.html

しばらく、ブラックアウトで失礼いたしました。

Re: たけのこ

癌ダムさん

> たけのこの刺し身もある「のこ尽くし」という
> たけのこのフルコースも最高ですが

うわ~! おいしそうですね!
行ってみたいなあ。
でもすごく高そうです…。

いいなあ、京都。おいしいもんが山ほどありそう。
東京脱出して行ってみようかな~。

> しばらく、ブラックアウトで失礼いたしました。

心配しておりました。
アクセスできるようになって良かったです。

No title

それが、なんか地雷を踏んじゃったみたいですね(苦笑)
世の中には、僕たちの知らない深~い闇があるようです。

Re: No title

癌ダムさん

> それが、なんか地雷を踏んじゃったみたいですね(苦笑)

なんかあったのですか?
気になる~。大丈夫ですか?

ふか~い闇とは…うう、何でしょう。
プロフィール

ほんたべ

Author:ほんたべ
手島奈緒
おいしい食べものをつくる人を紹介したり応援したりしております。ブログをまとめた著書『いでんしくみかえさくもつのないせいかつ』(雷鳥社)『まだまだあった! 知らずに食べてる体を壊す食品』(アスコム)『儲かる「西出式」農法』(さくら舎)など。現在ハンター修行中。

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