有機JAS認証と有機農業推進法と有機農業

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ほんたべ農園で栽培したカブ。有機JAS認証で使っていいと定められている資材を使って、
無農薬栽培なんだけど、有機JAS認証を取得していないので有機と表示して売ってはいけません。
つまり有機JAS認証は、販売の際の表示の規制を定めた法律なのですね。



先日あるところでオーガニック食品についての講演をさせていただきました。

有機JAS認証・有機農産物・有機農業…有機と名のつくものは様々あるのですが、
「何が何だかよくわかんな~い」と言われることが多いもの。
有機農産物についてメディアで紹介される際でも、「おや?」という説明が多く、
きちんと理解されていないのかなあ…と思ったりしています。

有機JAS認証含め、有機農産物についてきちんと理解している人は、
全国民の約5%しかいないのだそうです。びっくり! 
これでは有機JAS認証取得の数字が上がらないのもうなずけますねえ。

有機JAS法は新しい法律で、施行されたのは2000年です。

食の安心に関心が高まるなか、有機農産物・無農薬野菜の優良誤認が問題になり
法制化されたのですが、有機農業団体はこの法律に大反対していました。

反対していた団体のひとつ・大地を守る会。当時私は広報室で勤務しておりました。
今ほど有機農業がメジャーではない時代です。
有機農業は「有機農業運動」という名の市民運動でもありました。

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有機JAS認証は作物ではなく圃場に対して認定されます。認定圃場には看板がかかってます。
有機JAS認証を受けた圃場で栽培されたものを「有機」と称して売っていいのですね。
検査は前年度の栽培においてなされるので、その年有機JASで定められたもの以外のものを使用しても
表示して売ることは可能です。そうなった場合、翌年から有機が取り消されるんですけど…
まあリアルタイムじゃないってことですね。


有機農業を理解するには、まずはここからの説明が必要だと思います。

1975年。朝日新聞に有吉佐和子さんが「複合汚染」を連載中でした。
この本をきっかけに、農薬や化学肥料などを多投する農業の問題が表面化し、
「安全なものを作りたい農家」と「安全な野菜を食べたい消費者」がつながり始めました。

農協や市場を介さず、消費者と農家が直接取引する「産直」があちこちで始まり、
都市の消費者が有機農家の栽培する野菜を買い支え、無農薬の畑へ援農に行く。

ただ食べものの安全性のみを考えるのではなく、食べものを切り口として
環境を守り、子どもたちの未来を守ろうという人たちが増え、
有機農業運動は、都市の消費者にじわじわと広がっていきました。

大地を守る会の設立も1975年。市民運動華やかなりし時代です。

さて、消費者と農家が直接取引をしている間は、安全に対する疑念は起きにくいものです。
お互いの顔と顔が見えていれば、ウソはつきにくいもの。
信頼関係は、生産現場に援農に行くことで培われていました。

有機農産物と消費者
作ってる人が「私は有機だ!」と言うのは一者認証。作り手と流通が「有機だ!」というのは二者認証。
いずれも客観性はありません。私が「私は有機だ!」と言うのと同じです。
有機JAS認証は第三者(認定機関)が農家を検査し「有機である」と認定することで取得できます。
有機JASでなくても第三者機関の客観性を得る方法(GAPとか)もあります。



しかし、この美しい関係が続いたのは、有機野菜がブームになる1990年代まで。

「有機って儲かるんだって」「無農薬野菜は高く売れるんだって」
有機農産物がマーケットとして成り立つようになると、事情が大きく変わってきます。

農薬を時々まいてるけど、堆肥を入れてれば有機農業。だから、作ってるのは有機野菜。
一回ぐらい農薬使っても、いつもは使わないからほとんど無農薬…という感じで、
流通も農家も、有機・無農薬という優位性のある魔法の言葉をバンバン使うようになりました。

当然ですが、儲かるんだったらウソをつく人も出てきます。
「有機農業」という言葉を規制する必要性が出てきたのは、当然の流れでした。

当時有機農業団体がこぞってこの法制化に反対したのは、
有機農業の推進という理念なしに、単なる表示の規制のみを行うことについてでした。

有機JAS法は、簡単に言うと「有機農産物」と表示して売るためのルールを定めたもの。
そこに理念は存在しません。
有機農業は、スタートが市民運動。理念は当然必須だったのですが、反対もむなしく
有機農産物ガイドラインという段階を経て、有機JAS法は2000年に施行されました。

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平成20年度の野菜の有機格付けは35,928トン。海外での格付けは173,819トンでした。
海外で有機JASを取得して輸入されているものが多いのですね。
米は11,278トン。米も海外格付けのものがあるのですが、加工品に利用されているのでしょう。
こういった数字を全部合わせると「日本の有機農産物は0.19%」という悲しい数字になります。



有機農業推進法が施行されたのは、その6年後、2006年の話です。

有機農業の存在すら認めなかった国が、有機農業を推進すると方針を明確にしたのです。
理念や、販売方法・消費者への啓蒙、技術の構築の必要性などもきちんと明記され、
ようやく自分たちの実績を認められたと有機農業界の人々は喜びました。

ただ、有機JAS法との整合性を整理するまでには至らず、現在もそのままです。

上記のような流れを知らない人にとっては、
「有機JAS認証」と「有機JAS認証ではない有機農業」がなぜ混在するのか
いまいち理解できないというのがわかるような気がします(確かにわかりにくいです)。

さらに何十年も有機農業を実践してきた農家には、筋金入りの思想がそれぞれにあり、
ひとつとして同じものなく、農家ごとに「有機とはこういうもの」ってのがあったりして
さらに、さらにわかりにくくなっています。

有機農業推進法の施行後、県や自治体単位で方針をそれぞれに策定し、
委員会などが作られ、モデルタウン事業などの助成金も交付されました。
(民主党政権になってから、有機農業関連の事業が仕分されたようですけど)

画像1
モデルタウン事業では有機農業関連の講演を行ったり、新規就農者受け入れを行ったり、
様々な取り組みがされています。金子美登さんのいらっしゃる小川町などがいい例ですね。
金子さんを中心に「有機の町づくり」を推進しています。ただ誰にでもできることじゃない。
戦略を考えられるプロデューサー等々ある程度「栽培者」じゃない人の力が必要なんですよね~。



牽引力のある有機農家がいる町では、その人を中心に有機農業の輪が広がりますが、
そういう人のいない地域では、有機農家はいまだにアウトサイダー的な存在ってのも現状。

「販売促進」「消費者への啓蒙」「技術の構築」も、いまいち効果が目に見えにくい。
その理由はやはりわかりにくさに起因するのかなあと思っています。

ともあれ、有機農業推進は6年前から日本という国の方針でもあります。

「大規模集約化で海外との競争力のある農業を」とか言ってる政治家と農水の方々、
有機農業は推進しなくちゃいけないんですよ~。


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No title

>有機JAS認証含め、有機農産物についてきちんと理解している人は、全国民の約5%しかいないのだそうです

げっ、残りの95%の一人です。
なるほど、ひと口に有機農業といっても、
いろんな歴史的な経緯(オトナの事情?)が複雑に絡み合ってるわけですね。
有機って定義自体、時代や認証する人によって違ってくると?

個々の農家が良かれと思って進める農法を、ブームと見るや途端にエイヤッとばかりに法律という網を投げて捕捉しようというのが「有機JAS法」?
お上お得意の「お前にお墨付きを与えてやりたい」ってやつですかね。

「有機JAS認証」なんてラベルが貼られてたら、貼られてないのに比べておいしくて安全、なんてつい思ってしまいそうです、素人の僕としては。
いや啓蒙されました(誤解でしょうか)。

ではでは

有機JAS

いつも興味深く読ませて頂いております。書いちゃいましたね。。。
私も何度も書こうと思ったのですが、このことを書くのはタブーだと思ってました。。。オーガニック資格を習得して数ヵ月後に有機JASは本当の有機ではないという事を知りました。私が取った資格は有機JASを推進していますので、残念ながらその上の資格は取るのはやめました。資格がなくても本当の有機のことを知っていればいいというスタンスに変わりました。照射の事実も在来種のこともオーガニックの勉強を始めてから知りましたが、記事にしていいものか思案していたところでした。食の安全性は原発事故がおきている今、更に大きな国の関心事になると思います。食=人間の命ですのもね。

Re: No title

Fuさん

> なるほど、ひと口に有機農業といっても、
> いろんな歴史的な経緯(オトナの事情?)が複雑に絡み合ってるわけですね。

そうなんですよね。
有機JAS方ができた経緯を知ってると素直になれない感じです。

でも経費と手間暇かけて取得している農家はきちんといて、それは大変なことなんです。

しかし、有機JASを取得してても無農薬じゃないとか、非常にオトナの事情がありまして、
優位性がハッキリしないので、昨今ではガイドラインで無農薬野菜に対して、
「無農薬表示」が禁止となりました。「栽培期間中農薬不使用」と書かねばなりません。

有機JASよりも無農薬の優位性が高いとよくないわけですね。


> 「有機JAS認証」なんてラベルが貼られてたら、貼られてないのに比べておいしくて安全、

「農家の努力の賜物」と思ってくださいませ。
それは確かです。大変なことなのです。シール貼られても価格に反映されてないんですから(泣)。

あ、あと、第三者が認めたものなので「栽培に不確かさがない」という点で、
非常に優位性がありますです。

でも厳密に言うと「有機JAS認証を取得しているから残留農薬がゼロ」ってわけではありません。
隣接圃場からの飛散等々の可能性もあり、ドリフトによる残留農薬がある可能性はありますのです。
(でもOK。全ての作物の残留農薬は基準値以内であればOKなのです)

Re: 有機JAS

Mioさん

> いつも興味深く読ませて頂いております。

ありがとうございます。今後ともよろしくお願いいたします。

> 有機JASは本当の有機ではないという事を知りました。

農薬を使用してもいいというところで「本当の有機なのか」等々の議論はあるかと思います。
ちょっとわかりにくいですよね。

でも、使っていい農薬名を聞くと「それは大変だよね~」的な農薬が多いです。

たとえば殺虫剤のBT剤などは、紫外線で効果が激減したり、雨が降ると台無しだったりもして、
まき方を間違えると高価なものなのに効果がなかったりして、悲しい結果になったりします。

また別の見方で言うと「農薬をまかないから有機なのか」ってところもあったりして、
私はそこんとこどうなのか、いろいろと難しいなあと思っています。
例えば中国で作られた有機で使えると言ってた資材に、化学合成の殺虫剤成分が混じってたこともありました。

その点有機JASでは、資材の確認(原料・製造工程等々)をメーカーに提出させ、
第三者機関が審査してOK出すという手続きが踏まれているので、
確からしさという点ではやはり優位性があるのです。

とはいえ、現在の状況で、有機JASもへったくれもなくなるんじゃないかと私は心配しております。
本当に安全な食べものってどんなものなんだという疑問を、現在、日本中の人が考えてる気がします。

>食=人間の命ですのもね。

本当にその通りですよね。
「安全」は食べものの基本なんですけど…困りましたね~。

No title

>海外での格付けは173,819トンでした。
>海外で有機JASを取得して輸入されているものが多いのですね。
>…こういった数字を全部合わせると「日本の有機農産物は0.19%」という悲しい数字になります。

そうなんですか!日本の農産物ばかりと思っていました。
海外では農地が広いからとなりの農地の農薬の影響なく、有機JAS資格も取りやすそうです。
「有機JAS」はブランドみたいなものですね。
日本の農業の良さを生かす法律になっていないのですね。

理念と法律の関係、またそれをよく知らない政治家や農家のこと、
私の関わる「生物多様性国家戦略」でも同じようなことを感じたがあります。理念はしっかりしているけれど、法制化され、都道府県レベルまで下りてくるところまではいいのですが、その先に理念は伝わらず実際運用する公園の管理に当たる人たちは変化していない…。
という私もまだまだ勉強不足です。

わかりやすくこうした問題を追及してくれるほんたべさんはほんとにありがたいです。

それにしても、恐らくなるべく農薬を減らしておいしい野菜を、と頑張っていた農家の方たちの土壌が放射能で汚染されるというあまりに残酷な状態に、単なる消費者の私もほんとにやりきれないです。
どうなっていくのでしょう…。

Re: No title

nabanaさん

> 日本の農業の良さを生かす法律になっていないのですね

そうなんです。
書いてしばらくして当時のことを思い出したのですが、
有機農業団体の反対理由のひとつがそれでした。

次回はそれについて書いてみようと思ってます。

> それにしても、恐らくなるべく農薬を減らしておいしい野菜を、

本当にそうですよね…怒りを覚えます。

今や安全性は放射能一本で計られていますから、そのうち輸入野菜が安全と
誰かが言い始めるのではないかと思ったりしています。
そうなる前に収束してもらいたいと、本当に強く思っています。

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Re: No title

鍵コメさま

確かに、見てみたらコメントが消えていましたね。
また消えてたらイヤなのでこちらに書いてます。

なぜなんでしょう?
メンテナンスの結果?

なんか釈然としませんね。
問い合わせてみてもいいんじゃないでしょうか。

それよりも体調は大丈夫ですか。

先日原発の学習会に行ってきたのですが、雨には濡れない方がいいですよ。
事故は関係なく、昔から雨ってのは
空に舞い上がってる放射性物質をくっつけて落ちてくるものなのだそうです。

私は昨日の雨に思い切り濡れました。
今日は体調が悪いです。

単に、二日酔いのせいかもしれませんけど…(泣)
プロフィール

ほんたべ

Author:ほんたべ
手島奈緒
おいしい食べものをつくる人を紹介したり応援したりしております。ブログをまとめた著書『いでんしくみかえさくもつのないせいかつ』(雷鳥社)『まだまだあった! 知らずに食べてる体を壊す食品』(アスコム)『儲かる「西出式」農法』(さくら舎)など。現在ハンター修行中。

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