チッソ成分という名の「欲」

gazou 011
レタスは外葉の大きさで玉の大きさが決まるので、初期育成がすごく大切な作物。
なので初期のチッソ肥料がとても大切。寒い地域で畑の微生物が初期に働けない地域では、
速効性のある化学肥料を初期のみ投入する人が多いです。高原産地などに顕著です。



植物の生育に必要な要素はチッソ、リン酸、カリと言われますが、
本当は9つの多量要素ってのが必要です。

チッソ、リン酸、カリ、カルシウム、マグネシウム、炭素、水素、酸素、イオウ。
この中で、収量に最も関係するのがチッソ。

じゃあ、作物をたくさん収穫したければチッソ分をバンバカ入れればいいってこと?
さにあらず。そんなことしたら、病気と虫が大量発生します。
それらを抑えるために、農薬を使う…近代農業の通ってきた道ですね。

チッソを入れ過ぎると全く何も生育しなくなる…なんてこともあります。

「種をまいても生育しないので、肥料が足りないせいだと思い堆肥を入れ続けてた」
その農家は、ある日土壌分析をして初めて「肥料入れ過ぎてた」と気づいたそうです。
土壌分析、やった方がいいってことがよくわかるエピソードですね。

それはともかく。

チッソ分は一反当たりだいたい15kgあれば、普通に作物が作れます。
ほんたべ農園でもこの数字で計算し、チッソ分を入れる予定です。
でも手間暇かけられる家庭菜園ですから、元肥一発にはしないで、
ちまちまと追肥をすることにいたしました。その方が継続的にチッソを効かせられるからです。

gazou s038
埼玉県の瀬山明さんの畑のほうれん草。冬場の野菜は硝酸態チッソの残留が少なく、
糖度が高いのでおいしいですね。チッソ分は光合成をきちんと行えて分解されていれば
何の問題もありません。分解できる以上のチッソを吸ってしまうと害虫発生の原因になります。



ちなみに。

CEC(塩基置換容量)が高ければ、土が肥料分を保持する能力が高いので
チッソをたくさん投入できます。参考までに計算してみました。

CECが10の場合は → 10×0.2×14 = 28kg
20の場合は     → 20×0.2×14 = 56kg
30の場合は     →30×0.2×14 = 84kg

しかしこれはあくまで理論上の数値にしかすぎません。

一反84kgも入れちゃうと、お茶の栽培になっちゃいますね。
チッソの形によっては地下に流亡し、地下水を硝酸態チッソ汚染することになります。
「堆肥をバンバン入れてる人の野菜が危険だ!」とか言われる理由がこれです。

堆肥の成分分析をしないで「有機だから」という理由でやみくもに入れていると、
作物が吸収できず流亡した硝酸態チッソが土壌・地下水を汚染し、
作物の体内に残ってしまい、牛も食べない菜っ葉ができたりしちゃうのです。

gazou 020
少しチッソが多いような色をしている小松菜。生で食べると苦くて、やっぱり多かったです。
葉物は成長途中のものを食べる作物。チッソが多いと虫も来るし味も悪くなっちゃいます。
アブラムシが大量についてる菜っ葉などは、施肥設計が間違ってるのでしょう。
「有機だからしょうがない」と言う人がいますが、あまり関係ないと思うなあ。



チッソ分が多いと作物の味が悪くなるという理屈も同じです。
有機なのにいまいちだよなあ…という人の畑には、大量にチッソが入ってたりします。
まあ、やっぱり、チッソというのはわかりやすく言うと「欲」なのですね。

その「欲」をうまく効かせて本当に安心でおいしいものを作るためには、
肥料にひと手間かけねばなりません。

さて、その前に。
植物の体内ではチッソはどのように変わっていくかを知らねばなりませんです。

硝酸態チッソで吸収→アンモニア態チッソ→アミド態チッソ→アミノ酸、
最終的にはこれがたんぱく質になって、植物は自分の体を作ります。

有機質を利用して堆肥を作る場合、チッソ分の分解は上記の逆になります。
たんぱく質→アミノ酸→アミド態チッソ→硝酸態チッソ→アンモニア態チッソ。

植物は硝酸態チッソの形でしかチッソ分を吸収しないので(※)、
化学肥料のチッソ分は、アンモニア態チッソという形をしていることが多いです。
高温発酵した完熟堆肥もだいたいアンモニア態チッソ。
(※)アンモニア態チッソ・アミノ酸も吸収することがわかっているが、ほとんどは硝酸態チッソ

有機質肥料も化学肥料も、チッソの形は同じなんですね~。
だから、鶏糞堆肥なんかを大量に投入すると、虫や病気が出るのは当たり前なのです。

gazou 002
「雲地ファミリー農園」の自家製ボカシ。キトサン効果を狙ってカニガラ入れてます。
温度管理するのに大変だったと聞きましたが、無事50度以上にならず完成したそうです。
これで今年はトマトを作るとか。味がどうなるか楽しみですねえ~。がんばって雲地さん!



「そうならないために、ボカシ肥料を作りなさい、それが有機栽培のメリット」
というのが、私の師匠、西出隆一さんの理論です。

温度を50度以上にしないで分解したボカシのチッソ分は、アミノ酸の形をしています。
アミノ酸のまま土中に投入されると、植物はアミノ酸を吸収し、たんぱく質を合成します。

上記のステップの中を2段階抜けることから、余分な体力を使わずにすみ、
余分な体力=糖分の蓄積 なので、食味が上がると言う理屈です。

さらに。

硝酸態チッソからアミノ酸へ移行する途中にできる物質が、虫を呼ぶニオイを放つため、
硝酸態チッソを吸わせると害虫被害が多くなるという弊害もあり、
チッソ分はアミノ酸の形で土中にあるのが理想なのですね~。でも難しい。

しかも、アミノ酸は土壌分析しても数値化できませんのです。
チッソ分がほとんどないのに、ちゃんと作物ができる自然農法の人の畑は、
アミノ酸がたくさんあるのでしょう。そんな畑になるまでには、何十年もかかるでしょうね。

gazou 034
埼玉県・瀬山明さん。堆肥も併用していましたが、長年ボカシを入れ続けた畑には
微生物がいっぱい。生の資材を入れても、1週間で分解し終わってしまうと研究者が驚いていました。
今年は無施肥で栽培してみるとのこと。一朝一夕にはそういう畑は作れませんです。



ということで、手っ取り早く収量を上げたいけど自家製ボカシを作る場所もない
へなちょこほんたべ農園としては、購入ボカシ肥料を投入することにいたします。
その名は「モグラ堆肥A」

このボカシ、前回初めて使ったのですが、ものすご~く味が良くなるのですよ!
とくにピーマン。甘くて大きくておいしかったなあ…今年も作ろう、ピーマン。

ピーマンはチッソ分が大好きなので、トマトと同じ施肥では収量が上がりません。
チッソは追肥で多めに入れて、さらに今年は一本の木から200個採れる剪定を実践…
っていうか、去年成功した人から教えていただく予定です。

野菜室に入った大量のピーマンを毎晩眺めては「うひっ」と豊かな気持ちになるのが、
今年の夏の、ささやかな私の「欲」でございます。


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混植

混植にはトライされないのですか?(いつかでも)
肥料バランスがうまくいく混植ができれば、
ある程度手が抜けるかなと。

Re: 混植

H2さん

> 混植にはトライされないのですか?(いつかでも)

15平方メートルしかないので、基本的には混植になります(苦笑)

トマトとトマトの間にバジルとか、ナスとピーマンは同じうねとか(肥料が好きなので)。

その他、とうもろこしの間にエンツァイ植えて、とうもろこし収穫後から収穫を始めるみたいな。
どうしても狭いので、肥料分どうこうよりも、しょぼいスペースの使い方になってしまいますです。

コンパニオンプランツやるスペースもないんですよね~。
10坪位広さがあればいいんですけど。

No title

ほんたべさん、おはようございます。
窒素をたくさん入れると、結果的に良くないことがわかりました。
「過ぎたるは及ばざるがごとし」なのですね。腹八分目?

>ピーマン。
ええ!甘くなるのですか?と言っても野菜の甘さなのでしょうけれど・・・そう思うと、スーパーに並んでいたピーマンたちは、苦かった気がします。窒素が少なかったのかなぁ・・・栄養失調?野菜なのに(苦笑)。

Re: No title

駆動さん

過ぎたるは及ばざるがごとしなのですよ。
植物はチッソをとても吸いやすいらしくて、チッソ先行の生育をしてしまうと、
軟弱で栄養過多な生育になってしまうらしく。

本来ならば初期はリン酸が効いている状態が理想だそうなのです。
でもリン酸は土にがっちり結び付けられているものが多くて、簡単に吸える状態にないのです。

でも、微生物が分解するとリン酸が土中に放出されるので、植物も吸えるようになるということで、
やっぱり微生物がたくさんいないといけないみたいです。

> ええ!甘くなるのですか?と言っても野菜の甘さなのでしょうけれど・・・

甘いと言ってもお砂糖のように甘いわけじゃなくて、おっしゃる通り野菜の甘さなんですけど。

でも苦くなくてピーマン臭くもなくって、ひたすらおいしかったですよ~。
もう一度あのピーマンを!!!って感じです。

肥料で味って変わるんだなあとつくづく実感したですよ。
プロフィール

ほんたべ

Author:ほんたべ
手島奈緒
おいしい食べものをつくる人を紹介したり応援したりしております。ブログをまとめた著書『いでんしくみかえさくもつのないせいかつ』(雷鳥社)『まだまだあった! 知らずに食べてる体を壊す食品』(アスコム)『儲かる「西出式」農法』(さくら舎)など。現在ハンター修行中。

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