「新鮮」「朝採り」という魔法のことば

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現在の日本では数少ない、通年栽培のできない(きちんとした旬がある)作物の代表・そら豆。
自分の畑で作ると、あの独特なニオイは流通途中に出るのだと気づきます。
採りたてのそら豆はただひたすらに甘く、ほくほくした食感と幸せの味ざんす。



時折ニュースで主婦の方々がインタビューされてるのを見ます。
スーパーだったり直売所だったり、マルシェだったりします。
その際、彼女たちが必ず言う言葉があります。

「新鮮なお野菜はうれしいですよね~」

「新鮮なお野菜」以降はいろんなバリエーションがあるけど、
とにかく皆さま口をそろえて「新鮮な野菜」とおっしゃるのです。

野菜の流通を体験すると、この「新鮮」という言葉にとまどいを感じるようになります。

「何をもって新鮮と言うのか」「栄養価か見た目か、何のことを言いたいのか」
「新鮮」という言葉は、実はイメージ先行の魔法の言葉。
野菜については、見た目と収穫後の時間は正比例しないからです。

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これも数少ない通年栽培できない作物、キヌサヤエンドウ(の花)。
農家的には収穫の手間の割に価格が合わないので、あんまり作りたくないと言う人が多いです。
この野菜も温度管理や鮮度管理が割合と難しく、どうかするとカビくさいものが売ってたりします。



さて、人間と同じく野菜も生きているので、呼吸しています。

収穫された後も、彼らはずっと呼吸しています。
何を使って呼吸するかというと、体内の糖分をどんどん利用します。

ということは?

収穫後、時間が経てば経つほど、野菜の糖分が低下していくということなんですね。
糖分が低下することで野菜は劣化し、最終的には腐るかしなびるかします。

ではどうすればいいのか。

以前働いていた会社で、とうもろこしの鮮度保持に取り組んだことがありました。
畑からの物流倉庫までの流れはこんな感じでした。

① チョー朝採り(早朝4時とか)し、コンテナに入れて次々に倉庫(常温)に運ぶ。
→早朝なのでとうもろこしは冷たい。
② 倉庫で箱詰め。→この時点ですでにちょびっとあったかくなっている。
③ 夕方、トラックに載せて出荷。トラックは鮮度保持のために冷蔵車を利用。
④ 深夜、トラック到着。冷蔵庫に保管し、翌日とうもろこしの温度を計ると…

…25℃!!!!

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パックの内側にこういった水滴や蒸気がついているものは、冷蔵→常温→再冷蔵されたものが多く、
温度管理がまずかったという証拠。直売所とかでよく見かけます。
「温度管理がまずい=鮮度に気を使ってない」ですから、そういう店では買いたくありませんですよ。



朝採りのとうもろこしなのに、冷蔵してるのに、25℃に上がってるのでした。

とうもろこしの温度がなぜこんなに上がるのか。大変とても驚きました。
ちょうど夏場がアホほど暑くなり始めた2002年位のことでした。

実は野菜は呼吸によって自分で熱を発します。これを「呼吸熱」と言います。
この熱によって、野菜の劣化は加速度的に早まります。

とくに呼吸の激しいもの(豆類・とうもろこし)などは、糖度が命なのに、
収穫時の糖度を呼吸でどんどん消費します。
その結果、味も栄養価も落ちてしまうのでした。

畑に行く前に湯をわかしてから行けとまで言われるとうもろこしや枝豆。
収穫時の糖度そのままで食べると、そりゃもう食べたことのないおいしさ。
その味を経験すると、お店で売ってるものは何なんだと思ってしまいます。

流通途中でいかに味が落ちているかってことですね。

千葉畑・畑のスイカ大玉
意外なことに、スイカって貯蔵が前提の野菜なのですよ。2週間位は全然平気です。
なり口が取れているため、消費者は収穫後に時間が経ってることに気づかないのですね。
倉庫に貯蔵されてて、市況が上がってきたら出荷したりもしているそうですから驚きです。
なり口のついてる農家直送のスイカを、丸ごと買うのがおいしいスイカを選ぶコツですよ~。


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で、現在のスイカはカット販売が前提。エッジの立った切り口が新鮮風に見えますから、
農家的には味よりも、手が切れそうな切り口になるバリバリする品種を選択する人が増えています。
昔ながらの半分に切ったら中が落ちてたみたいな品種は、味はいいけどカットして売れないので
淘汰品種になりつつあるそうです。残念ですねえ。シャリシャリしておいしいのに。



ただしかし。収穫後すぐに野菜の芯まで1度~2度位に冷やしてやると、
呼吸作用は一時的に止まる、あるいはゆっくりになります。

さらに、一度しっかり冷えた野菜は、流通途中の温度変化にそれほど敏感じゃなくなります。
出荷先できちんと冷蔵庫に入れてやれば、低い温度で呼吸も抑えられ
意外と長期間保管できるのです。

これがコールドチェーンと呼ばれる、野菜の鮮度保持の秘訣。
現在の野菜流通の基本です。

さて、そこでさらにイメージ先行の言葉「朝採り」について考えてみます。

「朝採り」でも途中の温度管理がダメなら鮮度はどんどん落ちていくため、
朝採り=鮮度がいいと単純には言えません。前日に収穫してあっても、
きちんと予冷をかけてあるものの方が状態がいいことの方が多いのです。

紅秀峰だけど
とにかく冷やせばいいのかというとそうでもないのが果物。とくにさくらんぼや桃。
冷蔵から常温になり再度冷蔵した場合に果実につく水滴が、そこにいる病原菌を活性化させて、
一気に病気が広がることがあります。なので、常温で流通するのがいい場合もあるのでした。
流通途中の急激な温度変化は、かえって劣化を早めるので要注意です。



しかし、売り場に「朝採り」と書いてあると「新鮮」と思ってしまうのが消費者。

上記のような事情を知っていると「何をもって新鮮と言うのか」
その言葉を聞くたびに疑問に思い続けることになるのでした。

本来ならば地産地消で、近所の農家が朝採ったものを午前中に売り切れれば、
鮮度的には問題ないのですが、そんなのは今の日本では夢のまた夢ですね。

遠隔地から「冷蔵」と言う技術によって運んで来られた野菜を食べてる私たち。

「朝採り」「新鮮野菜」には「有機」と違って法的な規制はありませんから、
販売の際にはこの魔法の言葉がバンバン使えます。

でもね。売ってるのは、いつ収穫されたのかよくわかんない野菜なのですよ。
見た目はパリッとしておいしそう。当然です。しなびてちゃ売れませんから。
「新鮮野菜」「朝採り」という魔法の言葉のPOPとともに、店頭に並んでいます。

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いつ収穫したかわかんない野菜の代表「トマト」。収獲時には緑色でも貯蔵中に赤くなってくれます。
完熟のトマトでは柔らかすぎて一般的に流通できませんから、ちょびっと赤くなった時点で収穫。
「完熟」と称して売れないため「甘熟」っていうよくわかんない言葉を付けて売られてたりします。



なんてことを考えると、本当においしいものは自分で作るしかないのかも。

しかしですね。
菜っ葉を畑から採ってきてフツーに台所に置いとくと、あっと言う間に見事にしなびます。
「葉もの農家ってどうやってんだろう…?」とつくづく思うのでした。

これほどさように、野菜の鮮度管理とは難しいものなのです。

農家に「鮮度!予冷!!コールドチェーン!!!」とガミガミ言ってた過去の自分を思い出し、
「無知って、知らないって、ほんとにほんとに素晴らしい!」と思ったりするのでした。


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スイカ大好き

いろいろ勉強になります。
自家製に勝る鮮度なし、ってとこですかね。

しかし絹莢えんどう、誰がやっても手間は同じなのに、
相場はどうやって決まってるんですかね。
インゲンとかも同じことが言えるでしょうけど、
平莢のモロッコインゲンだけは今のところややマシですか。
空豆は食べられない外皮の重量が大半なのにしっかりした値段ついてますよね。

二十日大根なんかも手間が割に合わないと聞きます。

今日、実家から米とともに野菜もいくつか届いたんですが、
絹莢、昨年のGWの帰省時の方が美味かったですね。
今年はGWにはまだ成ってなかったので、食べられなかったのでした。

スイカ、6月下旬くらいからお盆前まで、
近くのスーパーの日曜朝市で丸ごと買ってます。隔週くらいで。
徒歩8分、ちょっと大変ですが。
一応見極めて買うんですが、多少当たり外れがありますねぇ。
実家ではここ数年2-3品種ずつ実生で試してますけど、
ピロマスタという品種が美味かったですね。
今はピロマスタ2に切り替わって、これだけは毎年つくり続けてますが、
出来の変動もあって今のところピロマスタに追いつかない印象です。

ソラマメ

ほんたべさんこんばんは。

なるほど、人は言葉に踊らされますね。
「朝採り」とあるのとないのとじゃ、やっぱり前者を選ぶかな、
値段にもよりけりですが。
今までまったく疑問にも思いませんでした。

冒頭の写真見て、思わず仕事帰りに空豆買っちゃいました。
さやごと焼いてほくほく食べましたです。
withビヤ、ということで。満足。

でも採りたてでそのまま茹でるっていうの、やってみたいですねー

ではでは

Re: スイカ大好き

H2さん

> 自家製に勝る鮮度なし、ってとこですかね。

そうなんですよね。そうなんです。
自家製が一番なんですよ~。

> しかし絹莢えんどう、誰がやっても手間は同じなのに、
> 相場はどうやって決まってるんですかね。

市況がダダ下がりしない品目ですよねえ。
けっこういい値段を提示しても、誰も作りたがらないという品目でした。
いんげんも同じです。

摘み取りの手間賃を乗せると、割に合わないらしいです。
でも、家に年寄りがいると作ってくれます。
ゴマや豆は年寄りの仕事なのですね、きっと農家では。

> 平莢のモロッコインゲンだけは今のところややマシですか。

モロッコは多収なので、作る人多いですよね。
とりわけ作りやすいんじゃないのかなあ。

> 一応見極めて買うんですが、多少当たり外れがありますねぇ。

すいかは、黒と緑のシマシマですが、その縞にそってデコボコがあるのを御存じですか?
黒い部分が引っ込んでて、緑の部分が盛り上がってる…だったと思います。

それがくっきりしていて、ちゃんとわかるものがおいしいんですって。
触ると確かにデコボコしてますよ。
すいか作って何十年の千葉の農家が言ってました。

「音で測るのは難しいなあ」って話でした。

おいしい品種も聞いたのですが、失念してしまいました。
基本的に、昔の品種がおいしいです。
あと、皮が真っ黒なヤツは珍しいけどおいしくないと評判です。

Re: ソラマメ

Fuさん

> 「朝採り」とあるのとないのとじゃ、やっぱり前者を選ぶかな、

鮮度について、あんまり知らされてないっていうか、
知らないことが多いですよねえ。
見た目がきれいだと、鮮度もいいと思っちゃいますもんね。

> でも採りたてでそのまま茹でるっていうの、やってみたいですねー

そら豆、いまだに上手に作れないのですが、
おいしかったです(2009年の記憶)。

枝豆、そら豆、キヌサヤ、とうもろこしは自分で作ると幸せですよ。
味の違いにほんと、びっくしします。
ビールもうまいというもんです(笑)

らっきょとエシャレット

こんばんは~
またまた興味深い話をありがとうございます。
野菜の鮮度って奥が深いですね。
昔食べたもぎたてのトマトが美味しかったのを覚えていて、最近のトマトは味が悪いとズーッと思っておりましたが、ようやく理解できました。
我が家の広島みかんも甘熟ではなく完熟なので、見た目は悪いが味は最高です(^^)v
*ほったらかし栽培で正月まで収穫できないという事情によります。

話し変わって昨日、岡山の親戚(農家)から無農薬のエシャロットとらっきょが送られてきました。
無農薬なのでダンボールケースの中にコバエのような虫がたくさんいて、家の中を徘徊しております。
→あとから分かったのですが、約2年前に頂いた小豆に虫が湧いたみたいです。
妻は虫嫌いなので悪戦苦闘。
私は静観をキメこんでいます(^^)
らっきょとエシャレットってソックリで外観では区別できないですネ~

Re: らっきょとエシャレット

ポポカさん

> 我が家の広島みかんも甘熟ではなく完熟なので、見た目は悪いが味は最高です(^^)v

おっ、いいですね。

みかんってもぎたてのものと売ってるものと、味が違いますよね。
貯蔵できるせいもあると思うんですが、もぎたての味が私は好きです。
(酸が抜けきってないからおいしくないって言う人もいるけど)

基本酸っぱいものが苦手なお子ちゃまなのですが、みかんは好きです。
西日本出身だからかな。

> →あとから分かったのですが、約2年前に頂いた小豆に虫が湧いたみたいです。

羽がまるい黒っぽい虫でくるくる回りながら飛ぶヤツですか?
わいた小豆はさっさと捨てた方がいいですよ~。

くるくる飛ぶヤツならいいのですが、穀物にわく蛾(コクガ)だったら要注意です。
一度発生すると何にでも卵をうみつけるので、根絶やしにするのに時間がかかります。
米どころか、豆、海苔、おやつ、何にでも。

見つけたら叩き潰すしかないので、がんばってください!

> らっきょとエシャレットってソックリで外観では区別できないですネ~

厳密に言うと違うんですけど、
若いらっきょうをエシャレットと言ったりもしてるらしいですよ。

味噌付けて食べるとおいしいですよね~。
あの味、あのニオイ、体の毒が出て行きそうです。

スイカの選び方

スイカの選び方は以前に調べまして、
ほんたべさんがおっしゃるものの他に、
つる首部分の円が大きいやつ、肩が盛り上がってるやつ、がいいとありました。
でも複数同時に買って比較できないので、なんともです。

ピロマスタは黒皮で縞がないんですけど、
シャリシャリして個人的にはよかったですよ。
畑で成っているのが見えにくいのもいい点です。

味が今ひとつだなと思ったのは、果肉がオレンジのやつです。1品種だけですが。
果肉が黄色いのもあっさりしている気がします。
たぶん色素の元になる物質自体が違っているので、
味も大きく違ってくるのかなと想像していますけども。

エシャロットとエシャレット

横から失礼します。
エシャロットとエシャレットって本来は違いますよ。

学名Allium oschaniniiがエシャロットですが、
エシャロットが日本でほとんど知られていない頃に、
筑地の大手青果卸、東京中央青果常務の川井彦二さんが昭和30年に、
Allium bakeriつまりラッキョウを生食用に軟白栽培して早獲りしたものに
「エシャレット」という商品名をつけて売り出したらしいです。
そのせいで今では混同されて、
日本でエシャロットとして売られているものの多くが種としてはラッキョウだとか。

この前マルシェでエシャロットを買ったんですが、
果たして本物のエシャロットだったのかあるいはラッキョウだったのか。
区別する術を知らないのでなんとも。

Re: スイカの選び方

H2さん

いろいろと勉強になります。
ありがとうございます。

> 味が今ひとつだなと思ったのは、果肉がオレンジのやつです。

これ、三浦の農家が作ってました。
色がきれいですよね~。
珍しくてうれしかったけど、そう言えばいまいちだったかも。

> 果肉が黄色いのもあっさりしている気がします。

やっぱ赤いのがいいですよね!
赤い大玉のすいか! これに限ります。

Re: エシャロットとエシャレット

H2さん

名前も違うんですね~。
知りませんでした。

なんか細かく違うと言われたことだけ覚えていましたです。

いろいろ勉強されてますね!
ありがとうございました。
プロフィール

ほんたべ

Author:ほんたべ
手島奈緒
おいしい食べものをつくる人を紹介したり応援したりしております。ブログをまとめた著書『いでんしくみかえさくもつのないせいかつ』(雷鳥社)『まだまだあった! 知らずに食べてる体を壊す食品』(アスコム)『儲かる「西出式」農法』(さくら舎)など。現在ハンター修行中。

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