オーガニックはなぜマイノリティなのか

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環境保全型農業と言われて久しい有機農業ですが、全農産物の割合としては0.19%。
有機JAS認証を取得していない有機農業の畑が、全国にどれほどあるかは不明です。しかし、
圧倒的少数派と言って差支えないでしょう。注目の割に数字に表れてこないのが不思議です。



某D社に勤務してた頃の話。

同僚が最寄駅からタクシーに乗り「某D社まで」と言ったところ、
「なんか最近神様ができたって言うじゃない? この辺にさあ」とタクシーの運転手。
「へ~、どんな宗教団体なの? やだね~、気味が悪い」などと話してたところ、
「ほら! ここ、ここ!」と言って指差されたところが某D社だった…

まるでマンガのようなオチでございますが、ほんとの話です。
(ま、そういう誤解を与える会社名であることは否めません)

そう言えばわたくしも、学生時代の友人に「有機農業の話」をまじめにしてたら
「ほんたべちゃん、宗教に入っちゃった」と後日言われたことがありました。

一昔前まで、有機農業に関わってるとなんとなくこういった評価をされてましたよ。
でも、最近はちょっと違いますね。

オーガニックという名前できれいにお化粧して、おしゃれなレストランができて、
若い女性たちにけっこう人気だったりします。
2010年、農産物全体の有機農産物の割合は0.19%のはずなんだけど、
どのお店でも「有機野菜」が使われてたりします。

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レストランで有機農産物を使う際のデメリットは、出荷が安定しないこと。
発注通りに野菜が届かないことはざら。使う側の意識が高くないと有機農産物は使えません。
写真はレストランTHE WAKOのサラダ。このシェフは届いた野菜でメニューを考えていました。



ひょっとしたら有機JAS認証を取得してる野菜じゃなくて、
有機農業の野菜なのかもしれません。でもま、どうでもいいです。
優良誤認で捕まらなければ。そして、人気があって評判になれば。

しかし、なんだかその割に、オーガニックは市場としてはまだまだまだニッチ。
おかしいな。東京では、あちこちでオーガニックレストランやらケーキやら
話題になってる店が多いのに。あんまり広がりが見えないのはなぜなんだろう。

とことんオーガニックシンポジウムのパネルディスカッションを聞きながら、
つらつらと、そんなことを考えてしまいました。

パネルディスカッションの第一部では「オーガニックの新しい風
これから農業、普通にやればオーガニック」というテーマで、
30代の若いパネラーがそれぞれの取り組みを語っていらっしゃいましたです。

その発言や取り組みを聞いていてデジャヴを感じてしまったわたくし。

有機農業に関わっている団体(大地を守る会・らでぃっしゅぼーや)が
15年~20年ほど前、だいたい年一度のペースで企画していたイベントや
シンポジウムで、さんざん語られてきたことだったのでした。

壇上の人々がイケメンで清潔になり、左翼思想的な部分が無くなり、
取り組みの軸が「楽しさ」に置かれているというところが変わっただけ。
昔も今も、やるべき取り組みはそれほど変わってはいないのでした。

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産地に行ってその現場を見て作り手の話を聞く。これが顔の見える関係。
「あの人の作ったものだ」と思うと、大切にしたくなるしおいしくも感じますよね。
作り手と食べ手がつながり理解を深める…昔から培われてきた有機農業の基本です。



しかし。そうか、この違い。「楽しさ」が「新しさ」なのかもしれません。
「有機農業=思想・宗教」から、「オーガニック=おいしくて楽しい」に変わったのかも。

であれば、もう少しなんというか、マスになってもいいんじゃない?
でもなれないのよね。なぜだろう?

マスになれない理由…考えてみると、わりと簡単なのでした。
単に、ふだん食べてるものがどんなものか、知らない人が多すぎるだけ。
つまり比較ができない=オーガニックの優位性がわからないのが問題なのでは。

自分の食べてるものがどのように作られているのか、どういうものか、
知らなければ問題意識も生まれないし、改善しようとも思わないものです。
「おいしさ」を軸にする場合でも同じ。「いつも食べてるもの=おいしい」だもの。

何かしら食べものの不安な事件があると、無農薬や国産などをキイワードに
「安心な食べもの」に世論が大きく振れます。
しかしこれは、あくまで一過性のもの。常に継続性はありません。

有機農産物の普及啓発を行う以前に
「今食べてるものがどんなものか」を見えるようにすること。
まずそこからなんじゃないのかなあ。

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例えばこの雲地ファミリー農園のレタスは、無農薬で栽培されてます。
冬のレタスは無農薬で作りやすいもの。で、7月出荷の長野産のレタスの農薬成分数はというと…
殺菌剤9、殺虫剤9、除草剤1成分。合計19成分(長野県ホームページより)でした。



でもマスメディアではそういったことは扱いませんですね。
有機農業の優位性は、慣行栽培の欠点にもなるからです。

そういった情報を扱えるのは、クローズドな会員組織の広報誌など。
その情報を知ってしまった消費者は、食べものの安全性やおいしさに敏感になり、
近所の人に勧めてうさんくさがられ、宗教に入ったとか言われちゃう。

あれ? 前と変わらないじゃん。あれれれれ?
そうではなく、最近は楽しさを軸にしなければならないのです。

では、楽しさの演出とは? 某D社のイベントに参加する。
畑に行く、農家に会う、そこでおいしいものを食べる。
これはさんざん言われている「顔の見える関係」ってやつですね。

作る人と食べる人がつながり、それぞれが個人的な関係を構築します。

これを突き詰めていくと「この人の野菜」が食べたい!ということになります。
有機農業=オーガニックは、属人性が高いのですね。

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おなじみの本庄市の瀬山明さん。できるなら毎日瀬山さんの野菜が食べたいわたくし。
どんな風に作ってらっしゃるか知ってるし、何よりもおいしいから。
誰がどんな風に作ったかわかんないものは、知れば知るほど食べたくなくなるですよ。
顔の見える関係とかいうよりも、知識偏重? もしかしてちょっと偏ってる?



有機農業の特徴でもある「顔の見える関係」は、大きなメリットではありますが、
不特定多数の人にアピールできないがゆえに、デメリットでもあるのでした。

でももうひとつ。決定的に市場が広がらない理由がありました。
それはまた、次の機会に。



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No title

人気ランキングでもでどれだけオーガニックがマイナーか分かります。有機・オーガニックのカテゴリーは1位のほんたべさんは300ポイント。他のカテゴリーで1位は1000ポイント以上ありますもの。それに有機・オーガニックと言っても皆さんが興味があるのはオーガニックコスメだけ。一番大事なのは食事なのに。。。本質の理解事態しないのか、できないのか、興味がないのか。。。市場に広がらならない理由早く知りたいわ~。

Re: No title

Mioさん

こんばんは。

> 人気ランキングでもでどれだけオーガニックがマイナーか分かります。

そもそも登録人数も少ないですしねえ。
FC2では1016人(グルメは2万人)。ブログ村は229人でした。
アクセスランキングに登録しているFC2のブログは420人。グルメは33648人。
マイナーですね…。

>皆さんが興味があるのはオーガニックコスメだけ。

オーガニックコスメって人気あるんですか!
とことんオーガニックシンポジウムでも、リレートークで話題になってました。
わたしはあんまりコスメって興味ないのでよくわかんないんですけど。

>一番大事なのは食事なのに。。。

そうですよねえ。
オーガニックコスメ使っててマクドナルド食べてちゃなあ…って感じです。
体の内部を整えてこその素肌美だと思うんですけど。

>市場に広がらならない理由早く知りたいわ~。

次回をお楽しみに!

No title

こんにちは。
以前勤めていた某生協で、有機農業をしているのにJAS認証を取得しない農家さんが、取得しない理由を言ってました。
取得することで自分の野菜の価値が変わるわけではない
認証を取得する手間の費用がどれだけ農家の負担になるか
自分の代で終わるかもしれないのに必要を感じない
でした。
聞いてて少し悲しかった覚えがあります。

作り手と食べる人が顔の見える関係であれば、
有機JASマークにそれほど大きな意味はない。
あの人が作ったものだから、美味しくて安心
あの人が食べるものだから、美味しくて安全な物を作る
そこには、効率やお金優先の関係はないですよね。

今、自分が農業を始めて、あの時の農家さんの気持ちが少しわかった気がします。多分そういった事を言いたかったのだと。
その中には自分が楽しくやるという意味も含まれるんですね。

No title

ほんたべさん、こんばんわー。「有機野菜」と漢字で書くよりも、「オーガニック」と横文字のほうが、かっこいい気がする・・・マイナーと感じていたのは、伝える難しさなのかなぁと、ほんたべさんの記事を読んで思いました。
個人的には、「有機野菜食べてる。」と言われると、辞書をバリバリと齧っているような。そんなニュアンスです。

>「顔の見える関係」
当たり前だとおもっていたのですが、まだまだ消費者と生産者との距離は遠いのかもしれませんねぇ・・・

No title

僕は、癌治療のための「食事療法」で
普通の人の10倍近い大量の野菜を消費するため
農薬も10倍摂取してしまう…という危険性から
「無農薬・有機」の野菜を使っていますが

玄米を食べ、野菜と魚をメインとした食事と言うだけで
何か変な目で見られる、偏見に満ちた日本の社会…

流行を作る側(広告屋)の僕でさえそうですから
一般的にはもっとひどい「偏見」に晒されているのでしょうね。

でも、僕が始めた事、やってることは
そのときは「変な事」でも
何年かしたら、「新しい流行」になり、
そのうち「当たり前」の事になる。

40年前、大鍋に塩をいっぱい入れてパスタを茹で
ニンニクとタカのツメだけのパスタを作る僕を
みんなは「変な目」で見ていましたし
20年前、豚の焼肉をサンチェで包んで食べる…などと言ったら
「変人」扱いでしたが
今では「ぺペロンチーノ」も「サムギョプサル」も
メジャーな食べものになりましたよね。

だから、僕が始めた事は、そのうち必ずメジャーになりますから
有機野菜も、それを信じてくださいね。

物凄い自分勝手な意見でごめんなさい(笑)

Re: No title

風の谷のスナフキンさん

こんばんは。

> 取得することで自分の野菜の価値が変わるわけではない

某D社の生産者も、同じことをおっしゃる方が何人もいらっしゃいます。
国のお墨付きがなんなんだ、自分たちはもっと前から有機(無農薬栽培)に取り組んでる、
それをわかってくれる消費者に買ってもらえればそれでいいんだ、と。

反面、自分の野菜の価値というより、意地で有機JASを取得したり、
消費者にとってわかりやすいものが有機JASなら、取って当然という人がいたり。
皆さんさまざま。

それぞれの考え方があっていいなあと思いました。

結局人のつながりなんだなあと思ったり。
顔が見えてれば、国のお墨付きなんて関係ないんですもんね。


>
> 作り手と食べる人が顔の見える関係であれば、
> 有機JASマークにそれほど大きな意味はない。
> あの人が作ったものだから、美味しくて安心
> あの人が食べるものだから、美味しくて安全な物を作る
> そこには、効率やお金優先の関係はないですよね。
>
> 今、自分が農業を始めて、あの時の農家さんの気持ちが少しわかった気がします。多分そういった事を言いたかったのだと。
> その中には自分が楽しくやるという意味も含まれるんですね。

Re: No title

駆動さん

> 個人的には、「有機野菜食べてる。」と言われると、
辞書をバリバリと齧っているような。そんなニュアンスです。


わはははは。いいこと言いますね~。
確かにそんな風に思う人が多いのかも。

いいですねえ、いつか使わせてください(笑)

> まだまだ消費者と生産者との距離は遠いのかもしれませんねぇ・・・

そうです。
たぶんものすごく遠いと思います…。

例えば某D社のものは安心だから、その先にいる生産者のことを、
無条件で信頼する…っていう消費者もたくさんいます。

その人たちはきっと、すごく生産者を近く感じてるはず。
こういう関係を流通が作れているのはスゴイけど、それがメジャーになれないんですよね~。

Re: No title

癌ダムさん

> 玄米を食べ、野菜と魚をメインとした食事と言うだけで
> 何か変な目で見られる、偏見に満ちた日本の社会…

少し前まで玄米食べてるというとけっこう「あれれ~」的な目で見られました、そう言えば。
最近はそういった関係者としか話をしていないので、とりあえず当たり前。
でもまだ一般では「ヘン」なのでしょうか。

マクロビオティックも、一昔前は変人でしたが、マドンナのシェフがマクロだという話で、
一気に市民権を得ましたですよね。

一昔前の呼び名は「マクロ」、今「マクロビ」。
マクロビオティックをどう呼ぶかで、いつこの思想を知ったのかがわかります(笑)


> だから、僕が始めた事は、そのうち必ずメジャーになりますから
> 有機野菜も、それを信じてくださいね。

はい! 信じます!(笑)

No title

ほんたべさんこんばんは。

確かに、突然「○○農法」とかって話されると、短絡的に「どんな宗教?」ってなっちゃうのは、歴史的にいっていたし方ないものありますね。
本来は純粋に技術的な問題であるはずなのに、どうしても自給自足的コミュニティ運動みたいにとらえられちゃう。確かにそういう経緯がいろいろとありましたから、しょうがないんでしょうが。
「オーガニック」と横文字で言われると、なぜか安心できちゃう。

普段自分はそんなに食べ物にこだわるほうではないんですが、こんなふうにぼんやりスーパーで食材を買ってぼんやり食べてる人に、「実はあなたの食べてるものはこういう作られ方をしてるんですよ」って気付かせてくれたほうが、有機野菜うんぬんの優位性を説かれるよりも説得力あるかもですね。実はみんな啓蒙されたがってるんじゃないでしょうか。

あとやっぱり安全性やおいしさと見た目が比例しないってことも大きいのかなあ。

それにしても写真のサラダ、うまそうすぎる(あ、へんな日本語)。

ではでは

Re: No title

Fuさん

こんにちは。

> 確かに、突然「○○農法」とかって話されると、短絡的に「どんな宗教?」ってなっちゃうのは

ひ~! ほんとですか!

まあオカルトっぽいのもありますが、わたくし的には割と受け入れてるんですけど…。
「波動」とか「転写」とか言われるとそう言えば宗教っぽいかもなあ…。


> どうしても自給自足的コミュニティ運動みたいにとらえられちゃう。

そうですね。コミューンとか…今でもあるんじゃないでしょうか。
ちょっと引いてしまうかもしれませんねえ…(遠い目)。

わたくしも某D社入社時、女性社員が誰ひとりお化粧していないのを見て、
ちょっとビビった記憶がありますもん。
「運動」とかも初体験の言葉だったし。今は平気だけど。
すでに染まりまくりってことですね。

> 「オーガニック」と横文字で言われると、なぜか安心できちゃう。

そそそ、そうだったのか!
これからはオーガニックを連発しよう。

> 有機野菜うんぬんの優位性を説かれるよりも説得力あるかもですね。

優位性を言われ過ぎると反発しちゃうってのもあるかもですね。
「北風と太陽」ですね…(違うか)。
今度からそういう感じで書いてみようかな。

ところで、わたくしも遅ればせながら「緑のカーテン」に再チャレンジしますですよ!
Fuさんのところのはお元気ですか?

宗教的?

横から失礼します。

実際、農法や食にこだわった団体で宗教的なの多いですよね。
的というか現実に宗教にしてしまった方もいますし。
逆に宗教的・思想的な観点から、農法や食にこだわった団体もありますし。

これらはやはり、客観的真実たる科学的分析が
農業の分野においてはまだ甘いからのように思いますね。
かつては特に。
あと、主宰者が、意識的か無意識かを問わず、
権威的な印象につながるような名称をつけたがために、
宗教的なイメージをもたれるに至る、ということもありそうですね。
○○農法とか、○○会、とか、名称としてはよろしくない。
○○栽培なら大丈夫そうですけど。

個人的には宗教は嫌いなので(仏教ですらイヤ)、
農業にもっと科学的な分析が行き渡るといいなと思ってます。

Re: 宗教的?

H2さん

> 逆に宗教的・思想的な観点から、農法や食にこだわった団体もありますし。

そうですね。いろいろありますよ。
とくに「有機」という分野では、ほんとにいろいろありますよ。
食べものと健康と農業は、思想でつながっているのです。

> これらはやはり、客観的真実たる科学的分析が
> 農業の分野においてはまだ甘いからのように思いますね。

慣行栽培でも、再現性のある技術が確立されてるかというとそんなことはないんです。
農薬と化学肥料を言われた通りに入れておけば、ある程度のものができる、
そんな技術。天候に思い切り左右される技術です。

> あと、主宰者が、意識的か無意識かを問わず、

いや~、やっぱり最初の提唱者は「先生」になるもんなんですよ!
先生の周りに集まってくる人たちの中には、権威付けしたい人もいたり、
金儲けしたい人もいたり、いろいろなんですよ!

そのあたりは、農業に限ったことじゃなくって、人間が何人か集まると
そういうことが起きると思ってます。

> 農業にもっと科学的な分析が行き渡るといいなと思ってます。

土壌分析すらしない人が多いですから。
有機農業のカリスマと言われる人でも、一度も分析したことないって人もいます。

道のりは遠いな~って感じです。
プロフィール

ほんたべ

Author:ほんたべ
手島奈緒
おいしい食べものをつくる人を紹介したり応援したりしております。ブログをまとめた著書『いでんしくみかえさくもつのないせいかつ』(雷鳥社)『まだまだあった! 知らずに食べてる体を壊す食品』(アスコム)『儲かる「西出式」農法』(さくら舎)など。現在ハンター修行中。

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