日本一エコなきのこを栽培する人―前橋市・自然耕房(株)

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生育中のまいたけくん。まだちょっとちっちゃいですね。アフロヘアみたいです。
まいたけの栽培室はアフロの小人がたくさんしゃがんでるみたいで、とってもかわいいのです。


きのこの生態をご存じですか。

知れば知るほど変わった生きものだなと思ってしまうわたくし。
だからきのこ屋さんの見学とか大好き。きのこ屋さんの話を聞くのも好き。

そんなわたくしが初めてきのこ栽培を見たのが、群馬県にある自然耕房さんでした。

知らない人がほとんどだと思うのですが、実はきのこ栽培には、
大量の電力を必要とします。

きのこ栽培というのは人工的な培地にそれぞれのきのこの菌を植え付け、
それぞれのきのこに適正な環境を作ってやり、発生させ生育させるもの。
自然環境の中では年に一度発生するきのこの環境を、
常時準備してやる必要があるのです。で、その環境は電気で作ります。

つまり、きのこは電気でできているのです。
そんなきのこづくりに、疑問を持った人がいました。

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栽培に使う電力を少しでも減らそうと、屋根には太陽光発電パネルが並びます。
白い王蟲の目みたいなのは、アクリル製の採光窓。ここから入る光で照明を使わずに済むのです。
どちらも電気料金では回収できないほどの経費がかかっています。

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採光窓を栽培室から見たところ。けっこうな光が入ってきていて、ほとんど照明は必要ありません。
きのこ栽培では厳禁と言われている床に水をまいて温度調整をしたり、薬品での消毒をしなかったり。
電力同様、佐藤さんのきのこ栽培も、きのこ屋さんの常識から大きく外れたものでした。


「きのこ栽培に電力をそれほど使わない方法があるんじゃないか」

自然耕房の社長・佐藤英久さんは、きのこ栽培に取り組む前、
空調設備の会社で働いていました。きのこ屋さんの空調なども長年見ていて、
「こうやったらどうだろう。あれはどうだろう」といろいろと気づいたことがあったそうです。

人生も半ば過ぎ、自分のためというよりも地域のため、環境のため、
循環型のきのこ栽培をやってみようと思い、自然耕房を立ち上げました。

その循環は徹底しています。

まずきのこの栽培に使う菌床を、地元でできるだけ手配する。
栽培後の菌床をリサイクルする。さらにその廃菌床を堆肥化する。
菌床を包む容器を燃料にし、その熱できのこを栽培する。

これが栽培・環境においての循環。

そしてもうひとつ。地域活性という循環もあります。

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近隣の原木栽培のホダ木を回収して、まいたけの培地に加えています。
通常は、きのこ培地は輸入のコーンコブ(とうもろこしの軸をチップにしたもの・もちろんGM作物)。
広葉樹の粉を使うのは、経費もかかるしまいたけの生育期間も長くなり、効率が悪いので、
早く生育し入手しやすく安価なコーンコブが一般的に利用されています。

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で、これがまいたけの培地。キューブ型のポリ袋にオガコを入れてあります。
ここへ植菌すると、トップの画像のようにまいたけが出てくるのですよ~。不思議ですね~。



まず余剰分のきのこを販売するための施設「直売所」を作り、
きのこの売り先と地元住民の雇用を発生させました。

直売所ですから「売り場」には地域の農産物を置きます。
これでJAに出せない小規模農家の売り先を生み出しました。

きのこ工場できのこの栽培に携わるスタッフは、
一般的には雇用が難しい障害者と高齢者を主に採用しています。
このことにより、地元でお金が回る経済の循環も生まれたのでした。
現在では、自然耕房というきのこ会社を軸に、いろいろなものが循環しています。

「最初はお金のことには気づいてなかったんですよ」佐藤さんは言います。

「障害者や高齢者、そして地域のおばちゃんたちが働ける場を作りたい。
純粋に雇用を発生させたいという思いだけでした。

でも、お金が循環するってことに、後で気づいたんです。

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直売所では自然耕房のきのこが割安で売られています。白まいたけ、人気です。
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地産地消・身土不二。自然耕房の理念のひとつ。それを実現したのが直売所です。
近隣のじいちゃん、ばあちゃんの農産物が格安で販売されています。



月に5万の収入で、何か経済の役に立つのかと最初は思ってた。
でもそうじゃないんです。5万でも3万でもいいんです。
毎月固定した収入があることで、人はそれを使う気になる。

農家ってのは、お金を貯めたらなかなか使わないですよ。
儲かる時もあればそうじゃない時もある。農業は収入が不安定なんですから。

しかし、現金収入が月々5万あると、それはあてにできるお金になります。
毎月収入があるという安心感が、お金を使うことにつながるんです」

効率優先で考えれば、高齢者や障害者を雇わない方がいい。
電力は使いたい放題に使い、資材は一回で廃棄してしまえばいい。
実際にその方が利益が上がると佐藤さんは言います。でも絶対にやらないのです。

その理由は、非常にシンプルなのでした。

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まいたけを収穫後の培地を再利用して、うすひらたけを栽培します。
このきのこ、煮込みうどんや芋煮にするといい出汁が出るおいしいきのこ。
まいたけと少し性質が違うため、まいたけの培地を再利用できるのでした。

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うすひらたけを収穫後は、培地は堆肥化。培地が入っていたポリ袋は、
こんな風にまとめられ、別の種類のきのこを栽培するためのボイラーの燃料になります。
きのこ栽培の上流から下流まで無駄を極力排して、循環の仕組みを作っています。



「私は実は反原発なんですよ(笑)。でもきのこ屋がそんなこと言ってどうする、
きのこは電気で作るものなんだから。じゃあ、できるだけ電力を使わないしくみを作って、
ちゃんときのこが栽培できるというモデルを作ろうと。

私が成功したら、真似するところが出てくるでしょう。
成功すれば人は真似するものなんです。そうでないと説得力がない。
反対するだけでは。

残念ながらまだ成功には遠いのですが。いつかは実現したいと思っているんです」

屋根には太陽光発電パネルが、そして採光のため天井に窓が設置されています。
太陽光パネルには、今後何十年も電気料金では回収できない経費がかかっています。
また、天井の採光窓は、当時研究段階だったものを商品化してもらったそう。
そうまでして、循環型のまいたけ栽培を実現しようとした佐藤さん。

その理念の徹底・貫徹力には一言。「すごい」としか言えません。

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何年も前から存じ上げていたのですが、今回初めて「反原発」であることをお聞きしました。
できるだけ電力を使わずにきのこを栽培できるモデルを作りたい。その夢を私も応援したいです。
最近通勤に自転車を使って17kmの道のりを通っているという佐藤英久さんです。



もっとその取り組みを知ってもらえることが、売り上げが上がることが、
佐藤さんの理念を実現することに近づくのに。そう思うのですが、

「宣伝しない、ウソつかない、セコイことしない。うらやまない、真似しない。
そんな風に思って今までやってきました。まだまだなんですよ。

これからは廃菌床の堆肥を使って野菜を作りたいんです。
きのこの循環は、その野菜を作ることで完結する。でもまだ忙しくてできない。
どんな成分を入れてどのような作り方をすればいい野菜ができるのか。
いろいろとやってみたいですねえ」

日本中探しても、こんなきのこ屋さんはいないに違いありません。

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まいたけ、うすひらたけの他に菌床と原木栽培のしいたけも作っています。
しいたけの培地って、菌が回る間にほとんど木のようになってしまうらしいです。
直売所に行くと、いろんなきのこが置いてありますよ。ぜひ行ってみてくださいね!



脱原発、リサイクル、地域活性、循環…地道に粛々と群馬の片田舎で
これからの日本を支えるであろうモデルを作ろうとしている佐藤さんの自然耕房。

もし自然耕房のまいたけを見つけたら、購入して応援してください。
群馬に行くことがあったら、直売所に行ってみてください。

私は今、日本中に自然耕房のようなきのこ屋さんができる日を夢見ています。

自然耕房の直売所→
風の駅 やげんじ
風の広場 おおまえだ


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格好いい生き方

こんばんは。
佐藤さんの様な方、尊敬します。
常識にとらわれず行動し、自分の信念を貫く。
軸がぶれない生き方って言うのでしょうか。
佐藤さんのような生き方を目指したいですね。

お金が地域を循環する話は、昔読んだ「エンデの遺言」を思い出しました。地域みんなが幸せになる方法ですよね。

群馬に行く機会があれば、立ち寄りたいと思います。

Re: 格好いい生き方

スナフキンさん

こんにちは。

> 常識にとらわれず行動し、自分の信念を貫く。

常識にとらわれないというのがスゴイですよね。

きのこ栽培の常道から外れた殺菌方法や、まずビジョンありきの工場の作り方など、
本当に感心させられることばかりです。

相当考えて起業されたのだと思います。

きのこの栽培室も、温度管理を空調のみに頼るのではなく、
暑い時にはミストを噴射して温度を下げるなんてことをされてます。

今サービスエリアや百貨店などでミストで2度から3度下げるエリアがあり、
ちょっとした流行のようですが、佐藤さんは何年も前からそのことを知っていて、
すでに自分の工場に取り入れていたのでした。

ものすごく勉強されているのだと思います。

> 地域みんなが幸せになる方法ですよね。

歯車がピタッと合うと、色々なものがくるくる回り出すのだなあと思いました。
その歯車になりたいもんですよね~。
>
> 群馬に行く機会があれば、立ち寄りたいと思います。

ぜひぜひ! 行ってみてください!

No title

ほんたべさんこんにちは。

はぁ、こういう方がいらっしゃるんですね、脱帽です。
電気のことといい、栽培における循環、地域雇用における循環、ですか。

最初から徹底的に考えてから起業なさったのでしょうね。
すばらしい。
なんか、いち栽培家というよりも、社会思想家といったほうがぴったりくるような・・・。

ぜひこのモデルが成功して、きのこもたくさん売れて(笑)、
地域社会が大いに潤ってくれればいいなと思います。

もしかしたら佐藤さん、バイオマス自家発電くらいまで視野に入れてないですかね、
このご時勢ですので。

ではでは

Re: No title

Fuさん

こんばんは。

> なんか、いち栽培家というよりも、社会思想家といったほうがぴったりくるような・・・。

あっ、そうそう、そんな感じです。
理念はあっても実現できないことだってあるから、実現できてることがスゴイと思います。
>
> ぜひこのモデルが成功して、きのこもたくさん売れて(笑)、
> 地域社会が大いに潤ってくれればいいなと思います。
>

ほんとですよね~。
直売所で働いてるおばちゃんたち、ほんとに楽しそうでした。

佐藤さんはおっしゃいませんでしたが、自分が誰かの役に立ってるって思うのは
とっても幸せなことだと思うのです。

雇用の機会を提供するのは、人の役に立てる機会を与えるのと同じですよね。
そういう意味でも、地域で雇用を発生させるってことはスゴイと思います。

なんつーか、どこかの国の首相に爪の垢を煎じて飲ませたい気が…。
あっ、しまった。言いすぎ言いすぎ。

No title

佐藤社長さん、大好きな方です!
いつお会いしてもにこやかで、癒されます。
さくっとすごいことを言ったりやったりされて、それがまたぜんぜん嫌味でなくて、心からそう思っていらっしゃる、というのが肌で伝わってきます。
何処の会社も彼のような経営者になってくれれば、住みやすい世界になると思います!\(^o^)/
これからも買い続けます!
頑張って欲しいです!
自然耕房の事を書いてくださってありがとう!

Re: No title

てんさん

コメントありがとうございます。

> さくっとすごいことを言ったりやったりされて、

そうなんですよね。
すごいと思います。

あまりにもすごいので、畏れ多いほどです。

> 自然耕房の事を書いてくださってありがとう!

いえいえ~。

一度はご紹介しなければと思いつつ、ブログ立ち上げから一年経ってしまいました。
今後も応援していきたいと思います。


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プロフィール

ほんたべ

Author:ほんたべ
手島奈緒
おいしい食べものをつくる人を紹介したり応援したりしております。ブログをまとめた著書『いでんしくみかえさくもつのないせいかつ』(雷鳥社)『まだまだあった! 知らずに食べてる体を壊す食品』(アスコム)『儲かる「西出式」農法』(さくら舎)など。現在ハンター修行中。

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