水より安い日本の牛乳の真実としあわせな牛の話

048_20171013103850b04.jpg
一般的な酪農では子牛が生まれたら数日後には引き離して
その後子牛には人工ミルク。母牛の牛乳は人間のものになるわけですが、
なかほら牧場では2ヶ月ほど母牛のおっぱいを飲んでるそうです。
母牛に寄り添ってる子牛もとてもしあわせそう。

046_20171013103724e9a.jpg
フツーに生きてたら乳牛の寿命は20歳ほど。一般的には5~6歳で更新され、
国産牛になって売られます。この牛は18歳のばあちゃん牛。もう乳は出ず、
エサを食べるだけのタダ飯ぐらいだけど元気に草を食ってました。



岩手県岩泉町で「山地酪農(やまちらくのう)」を営む
「なかほら牧場」に行って来た。なかほら牧場↓
https://nakahora-bokujou.jp/

山地酪農とは、植物学者・猶原恭爾さんが提唱した酪農のスタイルで
簡単に言うと、牛を山に放牧し自生している野シバや野草・木の葉を食べさせ、
ヒトにとって未利用の資源を牛乳に換える循環型の酪農方法のことである。

牛の糞尿は放牧地に還元されそこに育つ植物に利用される。
子牛は人工授精ではなく放牧中に自然交配し自然分娩で生まれる。
牛は常時山を上ったり降りたりして健康でストレスなく暮らし
そのおいしい牛乳を人間がいただくというステキなしくみである。

牛はそもそも草を食べる動物で、内臓もそのようにつくられている。
胃は4つあり、なかには微生物が大量に住みついていて
牧草などの粗飼料から栄養素を吸収しやすいかたちに変えている。
さらに反すうによって増殖した微生物もタンパク源として食べてしまう。

牛の飼料が牧草などの粗飼料中心から穀物飼料の多給に変わったのは戦後のことだ。
畜産業全体がそうだが、酪農はとくに搾乳や殺菌方法などの効率化がはかられた。

機械等のハード面のみならず、品種改良された牛はより多くの乳を出すようになり
放牧ではなく牛舎で飼われるようになり、穀物飼料を日がな一日食べては
毎日数30kg以上もの牛乳を搾り取られる機械のような存在になった。

輸入穀物は大量の牛糞となる。これがすべて堆肥になればまだいいが、
野積みされている現実も多くある。大いなるムダ、とも言える。

以前は安価だった穀物飼料が昨今は時折高騰するから酪農家は大変だ。
乳価はたいして上がらないため、さらなる効率化・機械化で経費削減をはかる。
補助金をもらって大規模&設備投資をすると借金はどんどん増える。

そのような苦労をして酪農家がつくる牛乳は、
海外のミネラルウオーターとさほど変わらない価格で販売されている。

子牛の飲みもの、命の源が水と同じっておかしいでしょう!
なんてことを思う人はいないのだろうか。
牛乳価格はここ数十年ほとんど変わっていないように思える。
卵と同様、牛乳も価格の優等生と言われ続けている。

ということで、なかほら牧場の牛乳である。

014_20171013103726763.jpg
乳牛には乳首が4つありますが、状態がいいときと良くないときがあって、
良くないときはその乳首から乳をしぼりません。ってことでこの牛は
2つ良くないのでしょう。搾る前にも味見したりしてるそうですが、
フツーはどうなのかなー。自動搾乳機だとおかまいなしで全部搾りそう。

035_201710131038494cb.jpg
おなかがパンパンに張ってるのでみんな妊娠してるのかと思ったら、
草しか食ってないから第一胃のルーメンがものすごく発達して
おなかが横に張り出してるんだって。あらー。そうなのか。
当然のことだけど、食べものでからだが変わるのねと納得。


この牛乳は価格の優等生ではない。
720ミリリットル1,188円というビックリするような価格だ。
「スーパーで売ってる牛乳は1リットル180円くらいなのに
なんで牛乳がこんな値段?」と考えるきっかけを与えてくれる価格である。

100ミリリットルあたり165円と18円の差が、
放牧されて好きなところでのんびり草だけ食べている牛の牛乳と
牛舎につながれて安価な輸入穀物を食べている牛の牛乳の違いである。

この差はなんだろう? どこにあるのだろう?
ずっと気になっていたそのヒミツは想像以上にステキなことでありました。

さて、まずは山地酪農である。

わたくしが山地酪農のことを知ったのは2006年頃のことだ。
乳牛の牛舎における悲しい生活のことは薄々知っていたため、
山に放牧されて草を食めるなんてステキな酪農方法だと思った。

海外から輸入されるトウモロコシほかの飼料はほぼ遺伝子組み換え作物であり、
乳牛の場合、牧草などの粗飼料と穀物飼料の割合は5:5くらいだ。
(ちなみに肉牛は2:8で圧倒的に穀物飼料の割合が多い。あわわわわ)

草が主食の牛に高カロリーの穀物を食わせれば牛が出す乳量は増える。
穀物飼料主体の乳牛の平均乳量は1年間で10000リットルくらいで、
365日で割るとなんと27リットル!!! ひー。まさに牛乳製造機である。

放牧で草を食べてるホルスタインは年間4~5000リットルくらいだが
中洞牧場はジャージー牛なのでホルスタインよりも少なくて、
一日平均で8リットル程度。ってことは3000リットルくらいかな。

つまり、自然な状態の牛という草食動物から人間がもらえる牛乳の量は
一日10リットル未満と考えてもいい。そもそも27リットルがおかしいのだ。

以前北海道の副知事だったナントカさん(名前失念)と
「今の乳牛の乳量が多すぎるんですよ。だから牛乳が安くなる。
あんなに出そうとしなくてもいいんだよね、ちょびっとで」
みたいな話をしたことがあるが、たしかにそうかもしれない。

002_20171013103728005.jpg
朝と夕方、搾乳に集まってくる牛たち。帰ってこないやつは迎えに行きます。
ものすごい傾斜地でもへーきです。ときどきよそから牛を引き取ることがあるけど、
牛舎で飼われていた牛だと、足腰が弱っててこの傾斜が上がれないとか、
穀物ばっか食ってたから草を食べないとかいう牛もいるそうです。ううう。

042_20171013111122ad8.jpg
牛に角があるのにお気づきでしょうか。なかほら牧場では除角はしません。
牛の角は鹿と違って神経も血も通ってるので切り取られると痛いのです。
角のある乳牛は初めて見たので「ないはずのものがある」ことに驚きました。
ってことで除角は一般的に行われています。危険だからしょうがないのです。
よそから来た牛は除角されてるので、角のあるのとないのが混じってます。



わたくしは一度北海道の大規模酪農を見学したことがあるが、
悪臭に満ちた牛舎のなか、牛は糞尿で汚れた床に寝そべってもぐもぐと反すうしていた。

持ち主は牛がウンコまみれなことは全く気にしていないようで、
牛糞の堆肥舎が自慢だったのだが、牛舎を見せて「しまった!」とか
思わないのかなーと思ったが、とくにそういうこともなく牛舎も自慢していた。
このような牛を見た一般人がどう思うかとか考えていないようだった。

TPP反対の番組に出演していた北海道の大規模酪農家の搾乳風景では、
汚れた牛の乳首を搾乳機が自動でジャーっと洗っており
その施設を建てるのに数億円かかって補助金だからTPPがどうたら、と言っていた。

どう見てもウンコまみれな牛と乳首についての言及はなかった。
「しまった!」とか思わないのかなと思ったが、やはり自慢げだった。

その乳首から出てくるのはどんな牛乳だろう。
おそらく生菌数が多いはずだ。それはどこかに集められ、
生菌数の少ない牛乳と混ぜられるから全体的に菌の数は薄まり、
120度で2秒殺菌されてお風呂上がりにがぶがぶ飲める180円の牛乳になる。

清潔な牛舎で飼われている牛もいるし、清潔な牛舎でつながれている牛もいる。
いいとか悪いとかではなく、わたしたちはそのような牛の牛乳を飲んでいる
ことを知っておいたほうがいいだろう。

どんな牛が牛乳を出しているのか、施設は、餌は、どう飼われているのか。
経済動物だからしょうがないじゃん、だって安い牛乳が好きだもん、
と言われればそれまでだ。それはそれでいいのである。

でも、とわたくしは思う。 

では理想的な酪農とはどんなもんですか? と聞かれたら。
答えは岩手の山のなか、なかほら牧場にあるのだった。

ってことで長くなったので続きは次回ってことですんません。


にほんブログ村 環境ブログ 有機・オーガニックへ
にほんブログ村

自然栽培についての偏見をクリアしました宣言

025_201710101209144ca.jpg
無施肥無農薬栽培のお米はわりと作りやすくて、
師匠・西出隆一さんは天然供給量のみで5俵は取れるといいます。
また、除草さえちゃんとできれば6俵はとれるよとも聞きます。
ここんちは8俵くらい行きそうってことでした、おお、すごいな。



今はなき大地を守る会では「人の悪口を言わない」というルールがあった。

農家の中には「悪口じゃないけど毒は吐く」人がたくさんいたが、
「悪口を言わない」というルールは一応みなが守っていた。

毒はけっこうきついが基本的には笑えることが多い。
そのような農家とつきあっているうちにわたくしも毒を吐く女になった。
吐きすぎて上司に嫌がられたし、今も吐きすぎているなと思うが、
それはまあどうでもいい。

ともかくそういう土壌に根を張って育ったわたくしは、
悪口を言う人はあまり好きになれない。というかキライだ。

さて、そんな大地を守る会で情報誌の編集長をしていたころ、
とある自然栽培の流通が「自然栽培は有機栽培より安全」と言い出した。
わたくしは次の2点について大変とても驚いた。

まず「安全」という「危険な言葉」を安易に使っていること。
次に「自然栽培」がどんなものかはっきり提示されていないのに
法律で基準が定められている「有機栽培」と比較して優位性を語っていること。

このような危険なことを言ってしまって大丈夫なのか! とまず心配し
マイノリティである有機農業のなかでなぜこのような区分けをし
自分たちがより優れていると言いたいのかと困惑した。

わたくしは大地を守る会で長いこと編集を担当し
危険とか安全とかの言葉を安易に使ってはいけないことを学習した。

大地を守る会は大きな組織のため注目度が非常に高く、
うっかりしたことを書くとすぐに攻撃され新聞沙汰になる。
安全とか危険とかのツッコミどころ満載の言葉を使って
スキを見せてはいけないのだ。

これらはチョーNGワードとして脳に叩き込まれており、
今でもうっかり使う人のことを心配するほどである。

また、大地を守る会では大地を守る会基準という基準を明文化しており、
どのような商品であるかは明確に誰でも理解できるしくみになっている。
つまりどこから突っ込まれてもちゃんとお返事できるということである。

それまで上記のような前提でしか物事を考えてこなかったため、
自然栽培というなにかわからないあいまいなものが
法律である有機JASより安全と言い切れる根拠はなんなんだ、と考えた。

んで調べてみたが、とくに科学的根拠は提示されておらず、
なんとなくふんわかした思想とイメージのようだった。

さらに西出さんを師匠と仰ぐわたくし的には
自然栽培=無肥料無農薬栽培と言われると、農薬はわかりやすいが
無肥料ってどこまでが無肥料なわけ? という疑問がわく。

当時木村秋則さんのりんご栽培が話題になっていたが、
葉面散布剤は肥料にならないのかとか、窒素固定の大豆はどうなのかとか、
そもそも果樹の場合は剪定は肥料と同じという考え方もあるし、
無肥料ってどういうことなの? とナゾは深まるばかりであった。

102_2017101012091249a.jpg
山梨県に全く何もしないですももをつくってる農家がいて、わたくしは
彼のことをほんとうに尊敬しているのですが、このみかんを栽培している人が
ほぼおなじことをされておりまして、自然栽培についての偏見色眼鏡が
ボトッと落ちたのでありました。池田さん、ありがとうございました。



さらに、出荷してる人の栽培状況とか全部調べてるわけ? とも思った。
大地を守る会では全農家の栽培履歴を全て追っており、
そのために「アホですか?」ってほどの人件費をかけていたが、
他にこのようなことができる流通はないとわたくしは知っていた。

栽培履歴を追いかけていないのに無肥料と言える根拠はなんなんだ。
なにがなんだかよくわからないが有機よりも安全というその理由はなんだ。
もしかしてほとんど自然栽培? そういうのアリ? よくわかんなーい。

ってことで、わたくしは「自然栽培」に大きな疑問を感じ、それ以来
「自然栽培」について頭ごなしのマイナスイメージを持つことになった。
今まで誰にも言ってなかったが、自然栽培=よくわかんないけどたぶんウソ
(これは悪口です、すんません)などと思っていた(のですすんません)。

しかし最近自然栽培の農家の方に会う機会があり、冷静に考えてみたら
「自然栽培は有機より安全」は流通が勝手に言っていることであり
やってる人にはそういうのはどうでもよくて実は関係ないことにも気がついた。

現在の日本に「無施肥」とか「無農薬」という農業におけるカテゴリーがなく、
有機農業の一部だけど肥料やってないとか、農薬まいてないもんね的な
優位性をアピールするため「自然栽培」と言うしかない人もいる。

また農家はそれぞれの思想で栽培していらっしゃり、
個人を見ていけば「自然栽培」の根拠もなるほどと思える。

つまり「自然栽培」とひとくくりにしてはいけなかったのだった。

わたくしは「坊主憎けりゃ袈裟まで憎い」状態で10年ほど過ごし
最近ようやく坊主と袈裟は別だと気づいたのだった。ううううう。
人のせいにするわけではないが、あの流通の影響であろう。
というか完全に人のせいにしているわたくし。

ともあれ、今後は素直な幼子のような心で先入観なしに自然栽培を見る、
ことができるかどうかは別だが、とりあえず「偏見」はなくなりました。

今まで出会った自然栽培の方々、すんませんでした。

そうは言っても「有機栽培より安全」はそのうちメディアに刺されると思うので
そういうのよしといた方がいいとも思うわたくしだが、
っつかもう言ってないのかな? ま、いいか。



にほんブログ村 環境ブログ 有機・オーガニックへ
にほんブログ村

さよなら、大地を守る会

RIMG0062.jpg
農家のおじさまたちと過ごした時間は宝石のようにキラキラしていました。
産地担当になれてほんとうによかったです。
農家の方々みんなにありがとうございましたと言いたいです。



9月30日、わたくしが18年間勤務していた大地を守る会がなくなり
10月1日からオイシックスドット大地になった。

大地宅配というブランドは残るため「消滅」ではないが
そのうちどんどん変わるだろう。でもまあそれでいいのだ。
結果として取り扱う野菜の量が増えて有機の畑が増えればいいのだ。

わたくしは、大地を守る会で、PCの操作、デザイン、文章力、編集、
交渉力、マネジメントなどに加え、イベント運営やその手法など
さまざまなスキル及び知識を身につけることができた。

これらはすべて今の仕事のベースになっており、
まさに「大地を守る会あってのわたくし」である。
藤田さん、入社させてくださってほんとうにありがとうございました。

さて、わたくしの入社は1992年6月である。

ちょうど「食の安全」に興味を持つ人がどんどん増えてきたところで、
手狭な調布から市川塩浜に事務所を移したところだった。

それまでは人・金・時間など余裕がなくて思うとおりにできなかった運動を、
これからやっていきましょう! とかで、原発反対、牛乳パック・低温殺菌牛乳、
学校給食、米、ごみ問題などのさまざまな活動を始めたところでもあった。

わたくしが配属された広報室には「運動局」という部署ができ
市民運動方面で著名な方が専任で配属されたばかりでもあった。

そしてさまざまな「体育」ではない「運動」が目の前で繰り広げられ
運動なんてヤダヤダヤダヤダヤダと思いつつ、広報という仕事柄関わりが深く
いつの間にか体の芯までしみ込んでいたことに気づくのは退職後である。

1990年代は有機農業及び環境関係でさまざまなことが大きく変わった10年で、
入社して数年後には「なんちゃって有機農産物」排除のための
「有機農産物ガイドライン」が制定された。

もんじゅが稼働するとかでフランスから日本にプルトニウムが運ばれてきたり、
士幌農協で放射線照射ジャガイモがつくられはじめたり、
六ケ所村に放射性廃棄物処理施設ができたりと原発関係も賑やかであった。

そして1997年からは遺伝子組み換え作物反対運動が始まった。

gazou 044
大地を守る会の落葉果樹生産者は地域の名士、その作物の先生などと
言われる人がとても多くて、畑で話を聞いてるだけですげー勉強になりました。
その知識があるのとないのとでは聞ける話が違ってくるので、
今でもとても助かっています。



大地を守る会はこれらすべてに反対し、問題提起し、いろいろな形で関わり、
わたくしは広報(その後制作)として関わり経緯を見つめることになった。

2000年、反対運動も虚しく有機JAS法が施行され、
わたくしは制作から生産部門に異動し
産地担当として有機JASの取得を勧めることになった。

反対してたのになんで推奨するんだっけ? とちらりと思ったが、
反対の理由すらよくわかっていなかったので粛々と進めた。
今ではちゃんと説明できるので当時のわたくしに説明してやりたい。

わたくしは全国の落葉果樹産地を一括で担当し、
2002年の無登録農薬事件の際には思い切り振り回された。
この事件のあと、農業関係の法律がゴソッと変わり
手のひらを返すような農水省の対応に唖然とした。

まず農薬取締法が、その後食品衛生法の残留農薬基準値が変わり、
「すももとさくらんぼにまける農薬がなくなるじゃんか!!」とか
「暫定農薬の申請を県にしてください早くして早く早く!!」とか産地に要請し、
地元のJAとか全然対応してないよー(泣)と言われてチョー焦ったりした。

ポジティブリスト制でデフォルト数値が0.01 ppmになると聞いたときには、
そんな基準じゃ市販の野菜や果物は売るものが無くなるよねとか思ったが、
とくに問題ないようであった。おかしいなー、0.01ppm だぞ。

2001年にはBSE問題が起こり、他では全くそんな対応をしていないのに、
大地を守る会はバカ正直に牛の流通を止めてニュースに出たりした。
わたくしはそのとき初めて「大地ってエライなー」と誇らしく思った。

それ以前に大地を守る会のことを誇らしく思ったことがなかったのは
わたくしが「広報」という部署でふわふわと働いていたからだ。

広報の仕事は中空に浮いている概念や思念を画像や言葉にして人に伝える
というもので、見たままを自分の言葉で創作するけど「リアル」ではない。
ものを動かすことはできないし金銭も発生しないし交渉もしない。
ひたすら美しい物語は書けるが中身がないとも言える。

産地担当は農家のおじさま方とリアルで生臭い話をする。
彼らの家族の生活を成り立たせる「お金」の話をし、作物の価値について考え、
作物を通じて消費者の、また、農家の生活に対しても責任を持たなくてはならない。

宙に浮いていたわたくしは地面に降り立つ必要があった。というか、
おじさまたちと飲んだくれているうちに地面に足がついたって感じで
ある日気がついたらわたくしは自分の足でしっかり立っていた。

gazou 011
「女の産地担当なんか信用できない」とか「夜叉」とかあだ名されましたが、
あとでずいぶんかわいがってもらえたのは、わたくしがニブいからでありましょう。
鈍くてよかったなー



仕事には世のため人のため、地域のためにすべきこと「しごと」と
自分の日々の生活のためにお金を稼ぐ「稼ぎ」の2種類がある。
わたくしは今「自分のしごと」をしているのだと思った。

作物を仕入れてどんどん売ることで有機の畑が増えれば地域が変わる。
農薬の使用量は減り環境は破壊されず今よりも良い世界になるはずだ。
売って売って売りまくるのだ! 野菜を売って世界を変えるのだ!

2006年に産地担当から編集に、いやいや異動してすぐに、
大好きだったりんご農家がお亡くなりになった。

この農家は今の日本で栽培されている着色系のふじを最初に見つけた人であり、
りんご栽培に多大な貢献をした人でもあるがその実績をあまり知られていない。
わたくしはそのことを知っていたのにきちんと伝えられなかったことを悔やんだ。
そして情報発信部署に「部署長」として異動したのには意味があると考えた。

地に足の着いた情報を発信するのだ。リアルな情報、浮わついていない情報を。

わたくしのなかに「核」ができたのはこのときである。
それ以来ときどき揺らいではいるけれどあまり本質は変わらない。
足はまだ地面にべったりついている。

大地を守る会は無くなっても、わたくしの「核」はそのままで、
そこにはすでに失われた大地を守る会らしさが脈々と息づいている。

辞めた同僚のなかにもこれらはさまざまな形で残っているはずだ。
だからすこーしだけさみしい気がするけどとくに問題ない。
同じ時間を過ごした人たちとはまだつながっている。
目には見えないけどきっと何かが。

長い間ありがとう。そしてさよなら、大地を守る会。


★現在ブログランキング参加中です!
↓プキッとクリック、ご協力お願いいたします!



こちらもよろしくお願いいたします!
にほんブログ村 環境ブログ 有機・オーガニックへ
にほんブログ村

ミツカンミュージアムで知った驚く「酢」のさまざまこと

068_201709281153499d2.jpg
愛知県半田市にあります、ミツカンミュージアム。のすぐ前に
予約しないと入れないチョー有名な和食の料理屋さんがありました。
看板も出てなくてビビりますが、いつか行きたいと思いました。まる。

074_20170928115347660.jpg
こんな感じで昔の酢の作り方が実物大の模型で紹介されています。
興味深いです。

109_2017092811532999c.jpg
施設の前に水路があり、そのまま川を下れば太平洋に出られます。
江戸まで船を仕立てて行けるよねって感じでした。



酢、と言えばミツカン酢。すっぱい、と言えばミツカン酢。
会社名は「株式会社ミツカン酢」だと勝手に思い込んでいたが、
ほんとは「株式会社ミツカンホールディングス」で、
いろいろ手広く事業が行われているようである。
http://www.mizkan.co.jp/company/

小学校の調理実習で初めてつくったフレンチドレッシングに、
バレー部の合宿で食べたポテトサラダやきゅうりのすのものに
母がつくる冷やし中華のタレもむせる酢のものにもミツカン酢は入っていた。
わたくしが一人暮らしをして初めて買った酢もミツカン酢である。

「日本人にとって酢の味はミツカン酢がベースなんですよ」と、
先日取材した京都のお酢やさんが言っていたが、
それほどまでに日本人とミツカン酢のつながりは深い。
当然だが酢におけるシェアもミツカンがナンバーワンである。

ということで、愛知県半田市にあるミツカンミュージアムに行ってきた。

ミツカンの創業者はもともとは造り酒屋の養子であった。
分家した彼は、酒の副産物である酒粕を使って酢づくりを始めた。
当時江戸では今の握り寿司の原型である寿司が流行り始めたところで、
「酢」に大きな需要があった。が、当時の寿司屋は高い米酢を使っていた。

そこで彼は酒粕からつくる安価な酢を江戸に売り込むことを思いつく。
船を仕立てて粕酢を江戸に持ち込んで売り込み、一財産を築きましたとさ。
というのがミツカンの物語である。

半田市で水道事業とか銀行とかビール醸造とかさまざまな事業をやり、
ブランド戦略やロゴマークの先駆けとか地域活性にも役立ちましたとか
なにもかもが「すげーなー」と思うのだが、それはミツカンミュージアムが
ミツカンの広報施設だからだ。でも感動した。行くといいと思います。

わたくし的にビッと来たのは4代目がビールの醸造を始め、
5代目で失敗して撤退したという話である。

半田市のカブトビール醸造所跡地で当時のレシピそのままのビールが飲めるが、
2種類あるビールそれぞれけっこう残念な味で、素直に「他社に負けるよね」
と思えてしまうのがかなり悲しかった。リニューアルすればいいのになー。

ミツカンには穀物酢、リンゴ酢、米酢、黒酢などのいろいろな酢があるが、
基本的に「酒をつくりそのアルコールを酢酸発酵したものが酢」というのは変わらない。

酢酸菌は好気性菌なので、エアレーションで強制的に空気を送り込み
さっさと発酵させて大量生産することができる。これが大手メーカーの酢である。
地方の小さなお酢やさんでは酢酸菌を入れてそのまましずかーに置いておき
自然な対流で発酵していく「静置発酵」という方法が取られていることが多い。

静置発酵は酢になるまでに数か月かかるが、連続法だと数日でできる。
この後どちらも少しの間置いて(というか静置発酵は一年とか置くこともある)
熟成させるが、連続法でできた酢はあっさりさっぱり味で安価なのが特徴で、
静置発酵は味わい深いと言われている。

078_201709281153334a5.jpg
酒粕といってもすぐに使うのではなく、このようにしばらく置いて
色がかわったものを使います。だから赤酢と呼ばれるそうですが、
実際の赤酢はまっくろでバルサミコ酢みたいなニオイがします。

090_201709281153301dd.jpg
山吹の静置発酵中。酢酸菌が上部にびっしり膜を張っていました。
これじゃ大量生産はできないわねー。

100_20170928120129233.jpg
わかりやすい静置発酵のしくみ
上部からじょじょに酢になっていくことが図式化されています。
アニメーションなので見るとヒジョーにわかりやすくなっています。

099.jpg
わかりやすい連続法のしくみ
空気を強制的に入れることで発酵が早まります。
アニメーションなので(以下同文)



が、ミツカンミュージアムの人に質問したら「発酵法では味は変わりません。
酢の味を変えるのは原料です」ときっぱりおっしゃっていた。そうなのか。
「穀物はさっぱり、りんごは香りが」とかおっしゃっていたが、
原料をよく見るとそれぞれアルコールが入っているのだった。なぜ。

これは昨日知ったのだが、業務用に「高酸度ビネガー(ホワイトビネガー)」
というものがあるが市販はされていない。

一括表示に「アルコール」と書いてあるものにはこれが混入されているようだ。
混入の理由は種酢ととある論文に書いてあったが、
そのほか、より安価に製造するため、という説もあり不明だ。
しかしこれが入っているとひらべったい平坦な味がするようである。

さて、ミツカンには通常(連続法)の製法で作った米酢やリンゴ酢のほかに
原料と製法(静置発酵)にこだわりまくったプレミアムな酢がある。

昔ながらの「酒粕」を原料にした赤酢「山吹」。ラベルも高級感満載。
そのへんのスーパーには売ってないらしいが明治屋で見た気がするけどどうかな。

この酢は「昔ながら」が売りなので静置発酵でつくられており、
色はまっくろでまるでバルサミコ酢のようだ。熟成期間も長く、
旨みが強いので減塩になりますよ的な商品でもある。さらに。
山吹を3年置いた「千夜」という商品もあり、わたくしは一本買ってしまった。

一年に1000本限定とか言われると「せっかくだから」と買ってしまうのは
オバサン的ふるまいだったかしら。しかもいつものクセで
リスのように溜め込んでまた封も開けていない。早く食べろ、自分。

酒粕が原料なので香りが独特で好みがわかれそうだが、
フツーの酢のようにつかってはもったいないということのようだ。
料理によって酢も変えなくてはならないのだ。ううううめんどくさい。

わたくしは酸っぱいものが苦手なので、酢もおおむね苦手である。
が、ミツカンミュージアムでもらった「やさしいお酢の話」に
酢のすんばらしい機能性や使い方のコツがあれこれ書いてある。

健康が気になるお年頃(わたくし含めて)の方々に
「酢」は積極的に摂取しなくてはならないものなのではあるまいか。
とりあえずしまいこんでいる千夜のふたをあけてみよう。
赤酢を3年寝かした酢がどんな味か、楽しみであります。

ミツカンミュージアム 見学は予約制だけどいきなりでも入れるかも。
http://www.mizkan.co.jp/mim/


★現在ブログランキング参加中です!
↓プキッとクリック、ご協力お願いいたします!



こちらもよろしくお願いいたします!
にほんブログ村 環境ブログ 有機・オーガニックへ
にほんブログ村

牛乳の味、製造方法、その他わたくし的偏りについて整理してみた

048_20170920142152039.jpg
岩泉町のなかほら牧場に行ってきました。放牧の牛はとてもしあわせそうでした。
子牛もけっこう長いこと母牛のおっぱいを飲ませてもらっていて、
しあわせなんだろうなーと思いました。そして日本の酪農における
とても不幸そうな乳牛のことをしみじみと考えています。


わたくし牛乳がキライです。というか、キライでした。
キライになったきっかけは、保育園で飲んだ脱脂粉乳です。
子どもゴゴロに「絶対に飲まない」と非常に激しく拒否しまして、
たぶん保母さんを困らせたと思います。

わたくしは裸足で保育園を脱走して行方不明になったこともあり、
たぶん保母さんは困ったと思います。いやはや大変だったでしょう。
それはともかく、それ以来牛乳がキライというか苦手になり、
小学校と中学の給食の牛乳が苦痛でした。

牛乳がキライ、とわかるといじめっ子に弱みを握られますから、
絶対にそれは避けたいと考えたわたくしは、毎日「いただきまーす!」のあと
息を止めて牛乳を一気飲みしました。200ml一気飲み1分もかかりません。

さらに後味を楽しまなくていいようにすぐに他のものをガツガツ食べ
口の中の牛乳の気配を完璧に消しました。
この方法で9年間乗り切ったわたくしはよくやったと思います。

牛乳が嫌いな理由は舌にからみつくような粘り気とニオイです。
その原因は、大地を守る会で低温殺菌牛乳を生まれて初めて飲んで、
日本の一般的な殺菌法「超高温殺菌法」によるものだと知りました。

日本で行われている牛乳の殺菌方法は
全国乳業協同組合連合会のサイトによると、以下の通りです。

1.低温長時間殺菌法(LTLT製法)63℃で30分加熱処理
2.高温短時間殺菌法(HTST製法)72℃以上で15秒以上加熱処理
3.超高温殺菌法(UHT)  120~130℃で2~3秒加熱
4.超高温滅菌殺菌法(LL) 135℃~150℃で1~4秒滅菌処理
(LongLifeミルクは未開封であれば常温保存が可能で、90日保存できます)

低温殺菌牛乳と書いてない市販の牛乳は3の超高温殺菌法で殺菌されています。

046_20170920142156615.jpg
一般的な乳牛の寿命は子牛を生み始めてから3産から6産くらいまで。
つまり短いもので4歳から7歳とかまでで乳量が落ちてくると更新されます。
更新とは経産牛として肉になるのです。スーパーでは国産牛として売られます。
中洞さんのところには18歳のばあさん牛↑がいました。もう乳も出ないし
ただメシ食ってるだけだけど、とても元気そうでした。



牛乳を沸騰させるとタンパク質の膜ができて味が落ちます。
超高温殺菌法の牛乳は2秒とはいえ120度で加熱ですから、
かなり、味というか香りも何もかもが生乳と大きく変わります。
栄養価は変わりないかもしれませんが、なにしろおいしくありません。

わたくしが感じた粘り気やイヤなニオイはタンパク質の変質によるものでしょう。
沸騰して焦げた牛乳からもよく似たニオイがします。

低温殺菌牛乳を飲んで初めて、牛乳はほんのりとあまくて香りが良く
本来は滋味あふれるおいしい飲みものなのだと知りました。
わたくしはそれ以来、低温殺菌牛乳しか飲んでいません。

大手牛乳メーカーが効率化・大規模化で超高温殺菌法を選択して以降
日本では超高温殺菌が主流になってしまいましたが、それまでは
日本全国の小さなミルクプラントで低温殺菌牛乳がつくられていたそうです。

戦後しばらくの間、冷蔵技術&交通網が発達していなかったため、
搾乳後集荷するまでに冷やせない&ミルクプラントまで遠いなどなどで
低温殺菌法の牛乳はすぐ腐るなどのデメリットが大きかったのでしょう。

しかし物流・冷蔵状態が良くなった現在でもまだ超高温殺菌牛乳が主流とは。
なぜわざわざ超高温殺菌で殺菌し、牛乳をまずくするのか理解できません。
低温殺菌牛乳と超高温殺菌牛乳との価格の違いは高くても50円くらいです。
50円で滋味あふれるおいしい味が楽しめるのに。残念なことです。

さて、牛乳の味は、上記の殺菌温度のほかに、牛の飼料でも変わります。

おそらく人間もそうでしょうが、どんなものでも食べもので味は変わります。
たとえば配合飼料を食ってる採卵鶏の卵は配合飼料の味がします。
もしかしてコンビニ弁当を食ってる人間はコンビニ弁当の味がするかもしれません。
なんかよくわかんないけどおいしくなさそうです。

一般的な乳牛は穀物飼料を食べており、以前聞いたときの割合は
粗飼料6割に対して穀物飼料が4割だと言われていました。
穀物を食うと乳量が増えますから乳価の安い現在は穀物飼料は必須です。

052_20170920143302d03.jpg
牛乳のCMで上記のような牧場に放牧されてる牛の写真がよく使われますが、
基本的に乳牛は放牧されていませんから注意しましょう。
ほとんどの乳牛は牛舎で暮らしており、つながれっぱなしの牛もいます。
なかにはウンコまみれになってるかわいそうな牛もいます。
売られている牛乳はそういう牛の牛乳だと思ったほうがいいと思います。



一般的な穀物飼料は現在ほぼ遺伝子組み換え作物ですが、
非遺伝子組み換え作物を利用している酪農家もいます。
全体的に、穀物飼料を主に食べている牛の牛乳は濃い、というか
わたくしにとっては「ちょっとクドいかも」って味がします。

そんな主たる飼料は穀物、それが常識! という酪農業界において、
粗飼料が主体&放牧という酪農を行っているところがあります。

代表的なのは岩手県のなかほら牧場ですが、そのほか木次乳業の日登牧場とか
キープ協会とか、行ったことないけど高知と北海道にもいらっしゃいます。
牛はホルスタインだったりジャージーだったりブラウンスイスだったりするので
単純に比較はできませんが、牛乳はあっさりしていてあまくていいニオイがします。

超高温殺菌牛乳を飲みなれていると低温殺菌牛乳は「味が薄い」と感じます。
放牧の牛乳はさらに「薄い」と感じる人が多いかもしれません。
しかしそもそも超高温殺菌牛乳の味が苦手あるいはキライなものにとっては、
放牧の牛の低温殺菌牛乳が一番おいしい、というかこれしか飲めません。

牛乳は風呂上がりにぐびぐび飲むものではなく、なんかくたびれたときに
ちょびっと飲む、くらいでいいよねー、ってな感じなので、
1リットル180円とかでなくてもへーきです。
っつかそれ、安すぎるでしょ。と思わない人が不思議です。

つーことで、先日取材に行ったなかほら牧場のレポートを書く前に
わたくしがいかに偏った牛乳感を持っているか整理してみました。

ご興味のある方は、明治屋で木次乳業のブラウンスイスの牛乳とか、
成城石井でタカハシ乳業のジャージー牛乳とかがゲットしやすいので
飲んでみていただけるといいかしらと思います。

すごーくおいしい! と思っていただけましたら幸いです。


★現在ブログランキング参加中です!
↓プキッとクリック、ご協力お願いいたします!



こちらもよろしくお願いいたします!
にほんブログ村 環境ブログ 有機・オーガニックへ
にほんブログ村
プロフィール

ほんたべ

Author:ほんたべ
手島奈緒
おいしい食べものをつくる人を紹介したり応援したりしております。ブログをまとめた著書『いでんしくみかえさくもつのないせいかつ』(雷鳥社)『まだまだあった! 知らずに食べてる体を壊す食品』(アスコム)『儲かる「西出式」農法』(さくら舎)など。現在ハンター修行中。

最新記事
最新コメント
月別アーカイブ
カテゴリ
カレンダー
10 | 2017/11 | 12
- - - 1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 - -
リンク
検索フォーム
RSSリンクの表示
QRコード
QR